一括償却資産と中小企業少額特例の違い
はじめに
こんにちは。SYNCA合同会計事務所 共同代表の吉井です。
皆さんは、決算前に利益が出そうであればどうしますか?
これを機に備品関係を見直したりするのではないでしょうか。
しかし、何も考えずに購入してしまうとその備品は決算前に買っても全額費用にならないかもしれません。
よく備品を購入する際には、10万円、20万円、30万円の壁があると言われています。これは、「一括償却資産」や「中小企業少額特例」を適用するときに判断する基準となる金額です。
今回はこの「一括償却資産」や「中小企業少額特例」の違いについてみていきたいと思います。
◆この記事を読んでほしい人
◆この記事を読んでわかること
10万円以上の資産は原則として全額経費にできない
会社で10万円以上の資産を購入するときは、全額を経費にすることはできず、資産の種類に応じて減価償却費として、その資産の耐用年数に渡り費用計上することとなります。
つまり、お金は出て行ってしまっているけど、資産計上した分の税金は生じてしまうこととなり、資金繰りを圧迫してしまいます。
一般的には、買った時に全額経費に落とした方が税額的に有利になるため、資産計上しないように10万円を意識することとなります。
一括償却資産とは
資産のうち、取得価額が10万円以上20万円未満のものは、一括償却資産として3年に渡り均等で償却することとなります。
”一括”償却資産と書くと、一括で費用計上できそうですが、実際は一括で費用計上は認められずに3年間で償却することとなります。
なんで一括償却資産と呼ぶかというと、資産を個別で管理する必要はなく、当期に購入した資産を一括で管理することができるからです。
例えば資産を廃棄したときは、固定資産の除却の処理をしないといけませんが、一括償却資産で計上した場合には除却の処理が不要となります。
(逆に除却をした場合の除却損を計上することはできずに、変わらず3年均等での費用計上となります)
このため、一括償却資産は償却資産税(固定資産税)の対象から除かれています。
ちなみに金額の判定は、税抜経理を採用している場合は税抜金額をもとに、税込経理を採用している場合には税込金額をもとに判断されるため、一般的に税抜経理の方が有利となります。これは次の中小企業少額特例の判定も同様となります。
中小企業少額特例とは
資産のうち、取得価額が10万円以上30万円未満のものは、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例として取得時(事業供用時)に全額費用計上することができます。
ただし、この特例は下記の要件を満たす必要があります。
資本金1億円以下の青色申告法人
常時使用する従業員数が500人以下
この規定を受ける少額減価償却資産の取得価額は年間300万円まで
別表16(7)を申告書に添付すること
節税をしようと30万円未満の資産を大量に購入しようとすると、
年間300万円を超える場合があり、その場合は節税の効果がなくなってしまうため注意が必要です。
一括償却資産と中小企業少額特例の違い
一括償却資産と中小企業少額特例の違いは次のようになります。
10万円~20万円未満の資産を購入する際には、一括償却資産と中小企業少額特例のいずれも選択する余地がありますが、
一括償却資産は、対象者や年間の取得価額に制限がなく、償却資産税の対象からも除かれているため使いやすい制度となります。
一方で少額特例の方は、30万円未満までの資産に適用することができ、全額を取得時(事業供用時)に費用計上することができるため、即効性のある節税を行うことができます。
注意点としては、少額特例は償却資産税の対象としなければならず、除却等の管理をしなければならないことです。
すでに廃棄してしまっているのに除却の処理を忘れてしまうと、償却資産税が永遠に掛かり続けてしまいます、、、!
最後に
いかがでしたでしょうか。
今回は一括償却資産と中小企業少額特例について解説しました。
よく聞かれることですが、どちらかが有利になるかどうかは会社の経営状況によります。
一度選択をしてしまうと修正することはできませんので、多額の資産を購入する際には顧問税理士に相談することをお勧めします。
SYNCA合同会計事務所では、上記のようなお悩みや税に関する相談、個人の確定申告などの支援も行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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