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映画『エル プラネタ』コラム/荒谷翔大(yonawo)

現在公開中の『エル プラネタ』パンフレット掲載のコラムから一部先行掲載することが決定しました。本内容は、上映劇場にて販売の映画公式パンフレットにも収録されています。

今回は、新世代バンド yonawoのボーカルを務める荒谷翔大さんのコラムをご紹介します。

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アマリア・ウルマンという方をこの作品をきっかけに初めて知りました。彼女の経歴を調べていくとなんだかこの作品の主人公に少し重なる部分を感じました。しかも母親役に実の母親であるアレ・ウルマンを起用しているのもとても素敵だなと思い、この作品により興味を抱きました。

時折不意に流れてくる浮遊感のある音楽が作り出す白昼夢を見ているような感覚と共に終始淡々と物語は進んでいき、主人公の生活をこっそり隠しカメラで覗いているような気分で、いつの間にか彼女と一緒に一喜一憂していました。

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母娘の取り繕ったお洒落で贅沢な生活と、電気代も払えずにギリギリで暮らす破産寸前の生活との対比が現代のSNSと共に生きる人々のリアルと虚構をわかりやすく描いています。しかも2人は実の親子ということも踏まえて観ると、また違った魅力を感じました。

実の親子でしか出せない会話の間、仕草、空気感がこの作品が描く2人の生活をより本物として同時に全くの偽物として映し出しているよう。それに加えて鏡を使った表現がより2人の取り繕った生活を実態のない鏡に写った虚像として捉えることができます。

また物語終盤のパレードで民衆に手を振り優雅に暮らすレオノール王女と、駆け出しのスタイリストとしてあまり好ましくない待遇で働き、アパートの階段の灯りの下で本を読む主人公レオの名前が同じだということも偶然ではないように思います。

暗がりで本を読む主人公レオがワンユーロショップで出会った妻子を持つ男と恋して翌朝には失恋する一連のシーンがこの作品の中で特に好きでした。2人でディナーを楽しみ一夜を共にした朝に仲睦まじく体を寄せて、朝の街を歩いていると、立ち寄ったお店のショーウィンドウ越しに映し出される2人の別れからレオが海へと向かうシーンが特に心に残っています。

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彼女は服を脱ぎ、この作品の舞台であるスペインの田舎町ヒホンの汚臭のする海へと歩いて行きます。一人海に歩いて行く主人公レオ、服を脱ぎ何も取り繕わない姿は強く美しくもあり、どこか儚さも感じるとても好きな場面でした。

全編モノクロで映し出されるこの作品、個人的には普段あまりモノクロの映像は観ないのですが、何故だか様々な色が見えているような感覚になりました。視覚的に届く色は白と黒だけですが、物語がぼくの中に入った途端、ゆっくりじんわりと色付く感覚はとても心地よく、この作品と自分が共にあるような気分にさせてくれます。
監督、主演も務める多才な彼女はInstagramとFacebookでミレニアル世代のリアルと虚構を描いたパフォーマンス・アート Excellences & Perfectionsという作品も発表もしており、この作品を通して強くそれを感じました。

「みんな、飾って生きている」という映画のコピーでも語るように、大なり小なり人は見栄を張ったり着飾ったり演じたりしていると私自身も含めて、そう思います。しかしそれらの自分も、なんだかんだ私と呼んでいいような気がしています。何が本物で偽物か、何が本当の自分かなんて知り得ないような気がして、この作品とはあまり関係ないことかもしれませんが、そんなことを考えました。


飾って生きる私を、飾らないあなたを見つめるきっかけをくれる素敵な作品をありがとうございます。

荒谷翔大(yonawo)

今回『エル プラネタ』では、yonawo、インディーズ時代のデモ曲だった「ブラウニー」に合わせて、縦型に切り取られた本編映像を使用したスペシャルトレーラーにて楽曲コラボ中です。

映画『エル プラネタ』 × yonawo「ブラウニー」スペシャルトレーラー

音楽:yonawo「ブラウニー」
配信リンク:https://yonawo.lnk.to/browniedemo
yonawo Official HP : https://yonawo.com

yonawo
荒谷翔大(Vo)、田中慧(Ba)、斉藤雄哉(Gt)、野元喬文(Dr)による福岡で結成された新世代バンド。2018年に自主制作した2枚のEP「ijo」、「SHRIMP」はCDパッケージが入荷即完売。地元のカレッジチャートにもランクインし、早耳リスナーの間で謎の新アーティストとして話題に。2019年11月にAtlantic Japanよりメジャーデビュー。2020年4月に初の全国流通盤となる6曲入りのミニアルバム「LOBSTER」をリリース。
そして、11月には、Paraviオリジナルドラマ「love⇄distance」主題歌オープニング曲「トキメキ」や、史上初となる福岡FM3局で同時パワープレイを獲得した「天神」を収録した待望の1stフルアルバム「明日は当然来ないでしょ」をリリース、全国5都市で開催された初のワンマンツアーは全公演チケット即完売。2021年1月に配信シングル「ごきげんよう さようなら」、3月に配信シングル「浪漫」、5月に冨田恵一(冨田ラボ)プロデュースによる配信シングル「哀してる」を、7月に亀田誠治プロデュースによる「闇燦々」をリリース。そして、8月11日(水)には2ndフルアルバム「遙かいま」をリリースし、直後に「FUJI ROCK FESTIVAL ‘21」へ出演。また、メガネブランド「Zoff」の「Zoff CLASSIC Summer Collection」のモデルも務める。
Official HP : https://yonawo.com
Twitter : https://twitter.com/yonawo_jp
Instagram : https://www.instagram.com/yonawo.jp
Facebook : https://www.facebook.com/yonawo.official/
YouTube : https://www.youtube.com/c/yonawo

イラスト by WALNUT

WALNUT    illustrator・artist
東京都在住。ノルウェー・南アフリカ・スペインなど世界各国のミュージシャンのグッズデザインを担当するほかさまざまなファッションブランドのイベントにイラストが起用されるなどジャンルを問わず幅広く活動中。
世界中を旅しながら制作を続けている。



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