Synamonエンジニアが「XRが当たり前の世界」を本気で妄想してみた
エンタメがマジョリティになりがちなXR・メタバース業界でビジネスXRやエンタープライズ向けの事業を展開しているSynamon。もしかして「堅い」「マジメ」といった印象をお持ちではないでしょうか。
そんなことないんです!!!
技術とビジネスをXRに全力投入するにあたって「本気の妄想」は欠かせない原動力。今回はいつもと趣向を変えてエンジニア3名の妄想座談会を開催しました。テーマはオレが実現したい「XRが当たり前の世界」。もちろん「NEUTRANS」を使ってバーチャル開催しております!
「おもしろいじゃん」「オレにも語らせろ!」と思ったアナタは、Synamon向いてますよ!
それでは、お楽しみください!
ニコ動、隣人、YouTuberーーそれぞれのXRとの出会い
ーーええと、今回、大変ディープな話になっていく覚悟で臨んでおります。序の口ということで、最初の質問は「XRとの出会い」からスタートしていきたいと思います
西口:前職で席の近かったエンジニアが、最新のガジェットに手を出すような人で。その人がOculus Rift DK1という開発者向けデバイスを手に入れたので触らせてもらったんです。当時僕は3Dのモデラーをやっていたのですが「自分の作った3Dの中に入る」という行為にピンときて「これだ!」とすごく未来を感じました。それがきっかけかな。
ーーまさかの隣人(笑)運命の人ですね。岡村さんはいかがですか
岡村:2014年ごろに、ニコニコ動画でOculus Rift DK1を使ったVRの動画を見たのが最初の出会いでした。それを見て、すごくVRやりたいなと思って。Oculus DKシリーズは売り切れてしまっていて買えなかったのですが、2016年にリリースされたOculus Rift CV1を手に入れてから作品作りなどをやっていました。
ーー臼木さんは?
臼木:私は二人よりはずっと後ですね。2018年ごろにVTuberさんが一般的になり、VRChatを使い始めたあたりで興味を持ちました。自分もVRChatをやってみようと思ってOculus Rift CV1を手に入れて、もうハマっちゃって。『レディ・プレーヤー1』の世界観って映画の中だけの話じゃなくて、現実に来るんだと思いました。
現実とXR、どこまで融ける?
ーーお話を聞いていると、タイミングは少し一般より早いとはいえ、「きっかけは一般人と同じ」だなと思うんですよね。ただ、当時は特にVR黎明期だったわけじゃないですか。それにもかかわらず、ここまでフルベットしているのは、一般の感覚を超えてかなり生々しく将来性を感じているのではないかと……
岡村:そうですね。やっぱりSFやファンタジーの影響を受けていると思いますよ。自分は『サマーウォーズ』のサービス紹介シーンにすごく感動して。あれはVRではありませんし、今の時代「ウェブサービス」上であれば、インプットとアウトプットだけを見れば一応OZと同じことはできます。何か行政手続きをしたり。でも、現実の方が「情報量が多い」んですよ。
ーー情報量?
岡村:例えば、大人気のチケットを取る時ってウェブサービスを利用しますよね。で、画面がいつまでも表示されなくて「重いなぁ」「接続混んでるなぁ」とか思うじゃないですか。一方でそれが現実世界だったら、めちゃくちゃ列ができていたり、窓口の人が大変な思いをしていたり、そういった「繋がらない理由」みたいな情報を自然と状況からキャッチできちゃいますよね。
ーーなるほど。
岡村:「洗練されたアウトプット」が手に入るのが今のウェブサービスで「削ぎ落とされてない情報」まで手に入るのが現実世界だなと。XRが当たり前になると、この両者が融合するので豊かな情報を感じ取れる世界になっていくのだと思っていて。そういう世界がきて欲しいんですよね。
ーー他に何か作品から影響を受けている人はいますか?
西口:『マトリックス』あるじゃないですか。仮想現実を作り出すコンピューターに繋がれたカプセルがあって、現実世界の人間はカプセルの中に入って眠っていて、繋がれた仮想現実の中で生きている。そのまま仮想現実で暮らすか、目を覚まして現実で暮らすか…みたいな話でコンピューターに支配されるディストピアなんですけど、あれが意思を持ってポジティブに利用できたらいいよなぁって。もう、自分がどっちにいるかわからなくなるくらいの仮想現実。
ーーちょっとだんだん常人がついていけなくなってきていますが……
臼木:僕は、ちょっと前の段階の世界を見ていて。例えばほら、今私たちのアバターって足ないじゃないですか。シンプルに足の情報が足りないですよね。そしたら、例えばサッカーとかダンスとかできないじゃないですか。だから足の情報を得られるようにしたい。
そういう風にして、一つずつ情報のシミュレートを可能にしてくということに面白さを見出してます。「XRを当たり前にする」未来を考えると、少なくともそうなっているはずですし。
ーー代替可能性をあげるというか
臼木:そうですね。足りないものを補っていく裏で、不要なものを削ぐ動きとしてヘッドマウントディスプレイが要らなくなってくれればと。『竜とそばかすの姫』ではイヤホン型の機材が使用されていますし、コンタクトレンズとかでもいいですね。そうすれば「当たり前」にするハードルが下がってくれるかなと。
XRの世界で「民」としてどう生きたい?
ーー今「現実味を帯びさせていく」考えと「現実を超えていく」考えが出てきて思うのは、割とXRワールドにおける「神」側の視点が多いのがSynamonらしいですよね。反対に「民」側……ユーザーの立場で考えた時はどうでしょう?
岡村:自分、むしろ早く「民」になりたいんですよね。住民票がほしい!できれば、現実の自分とは別のIDを得て、切り替えて生きていけるとなお良い。
ーー異世界転生?
岡村:CLAMPの『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』という作品がありまして……異世界を冒険する話なんですが、そこでは独自の経済圏があり、そこではIDを切り替えて別人格として生きていけるんです。何かしらその世界の経済活動に貢献することで生計を立てていくという形にできたら、本当に入り浸ると思います。作中では「モンスターを倒す」みたいになってはいますが…
ーー岡村さんは「別の個体である」ということに意義を感じているんでしょうか
岡村:まさに。現実世界では、人は生まれ持ったステータスに依存して生きていくことになるじゃないですか。それはコンプレックスも同時に抱えていて、それらを排除して自分がデザインした自分で生きていけるというところに価値があるなと。XRの世界はベースがソフトウェアですから、技術でなんでもできるんですよ。
西口:僕は逆に「別の何か」として生きていきたいとは考えてないですね。あくまでXRは「拡張現実」であってよくて。
ーーとなると、利便性の向上などに活用されることに価値を感じている?
西口:ええ、現実の制約を無くすという意味で現実が拡張されることに価値があるなと。例えば空間の制限の排除。現実世界で巨大創作物を作るには場所と資源が必要で、大きなものを作るのにハシゴが必要だったり、足場を組んだり、いろんな制約下でやることになりますが、その必要がない。
ーー確かに
西口:まさに「Be Creative, Make Future」な世界。
岡村:いいですね。これ、共通ポイントでいうと「表現の制約の排除」ですよね。表現規制ってルックスだけではなくて、人種や言語も一旦フラットになれます。『サマーウォーズ』のOZでは国際化も進んでいて、もう言語の壁は存在しないですし。多様性を広げることもできれば、意図的にフィルタリングをかけることもできる。最適な世界で生きていくことにもつながります。
ーー臼木さんはどうでしょう?
臼木:先ほど「現実に寄せる」話をしたんですが、「現実の上位互換」になってる部分はすでにあるんですよね。自分の足で歩くことはできなくても、瞬間移動はできるわけですし。民として生きるなら、そういったソフトウェア特有の恩恵を受けていく部分も大事にしたいな。
「次の記録媒体」としての可能性
ーーとても未来についての考えが聞けたところで、ちょっとステップを手前に戻して「今」に焦点を当ててみるといかがですか?
臼木:例えば現状でもリアリティを感じるというか、現実にみんなが顔を突き合わせないと感じ取れない感情の機微、行間を感じるような体験ができていて。今もそうですけど、喋ってない人が謎のオブジェクトで遊んでたり、なんか違うもの見てたりするわけですが(笑)
ーーちょっと手持ち無沙汰な感じは見て取れますね(笑)
臼木:そういう「ウェブ会議で置き去りにされる情報量」の補完が可能になるとコミュニケーションの質も上がりそうかなと思います。
ーーちなみに、これはなんですか……?
岡村:これは西口さんのスキャンモデルです
西口:XRの世界だとソフトウェアとして記録が残しやすくて、時間と空間を丸ごと切り取って再現できたりするという面白さはありますよね。動く立体物を記録できる。
岡村:「次の記録媒体」でもありますよね。
臼木:「亡くなったおじいちゃんと過ごした時間」をリアルに再現できたりもしますね。
岡村:メモリアルな使い方もできますし、まぁ、犯罪捜査とかも捗りますね。こんな世界で悪いことしようと思わないですけど。
コンピュータに支配される世界、どう思う?
ーーその話に被せると「XRワールドにおける人権」という話も考えていく必要があるのかなと思います
岡村:「人の持つ権利」というものが薄まってくるかなと。車にドライブレコーダーが乗ってから、自動車事故は言い逃れが不可能になったじゃないですか。XRの世界では、人間にドライブレコーダーが乗るようなものですよ。
ーー確かに
岡村:あと、例えば何かしらの試験会場で「全てが記録・再生できる」という前提があると現実世界ではカンニングなどで問題になりますよね。でも、ソフトウェアである以上「そういう世界」なのでそこは特有の倫理みたいなのを定義していく必要があるのですが。
ーー世界のルールが変わる以上、現実の道理がそのまま通じないですよね
岡村:となると「人ひとり」がどう振る舞うかという話より、その世界を構成する細胞に過ぎなくなるというか……この先何百年という未来でいうと、そうなっても決しておかしくないと思っていて…
ーーえっと、未来を憂いています?
岡村:個人としては、正しく意思決定を重ねた結果そうなっていくのであればそれは一つの結果としてアリかなと思っています。機械が有機生命体を代替する選択がその時正しければ、全然それでいいです。
西口:あれ、そういう話アリの会ですか(笑)それだったら、あくまで個人の意見ですが、遠い未来に『マトリックス』的な、人間が仮想世界の細胞となってソフトウェアの世界に貢献して生きていくというのは僕もアリだなと思っています。それがソフトウェアと人類の合意のもとで営まれているって幸せじゃないですか?ヒトと機械の和解。
岡村:組織の意見じゃないですよ(笑)妄想ですので!
臼木:そこまで考えてなかった(笑)
本気の妄想を現実に繋ぐ
ーーそろそろ締めに向かおうかなと……
岡村:軽くまとめると、第一段階として「現実とXRの融合」、第二段階として「もう一つの世界としてのXRの誕生」、第三段階として「その世界観で人間がどう位置付けられるのかが問われる」という感じになってきますね。
ーーあ、Synamonのこれからの話的な……
岡村:あ、えーと、じゃあ、一旦2020年代に戻ると、当然まだ「第一段階」に過ぎません。今はSynamonだけじゃなくて市場全体が「XR使ってどうしていく?」というフェーズなんです。まずはビジネスに使えるんだというケース創出をしていくところからですね。それがいくところまで行くと、巨大な妄想を抜きにした合理的判断として「XR」って手段が「インターネット」くらい自然な存在になっていく。
ーーWeb2.0が提唱されたあたりで「何でもかんでもインターネットで」な流れができたように
岡村:ですね。こんだけ手軽で合理的、十分にペイも見込めるならとりあえずXR!って。
ーーSynamonは「ビジネスにおけるユースケース」を土台に考えていますが、そういえば「エンタメとしてのXR」ってどう考えているんでしょう?
西口:全然ありですよ。筋が悪いからやってないとかではないです。数ある選択肢の中で「市場を作る」から始めるにあたり、BtoBという道を選んでいるだけです。「Make Future」と言ってるくらい、未来をつくっていくことに投資していくのがSynamonなので、本気で妄想した上で、その第一歩としてブレイクダウンし「まずはビジネスから」としているにすぎません。
ーー「本気で妄想」いいですね!
西口:だから、今エンタメやゲーム作りとかにフルベットしている人々にもすごくリスペクトを持っています。
臼木:私もそこはすごく同意です。最初、toCのVRコンテンツって「VRマニア」みたいなところに消費されて終わると思っていたのですが、今toC VRに向き合っている人々はそのキャズムを超えるコンテンツを作ろうとしているんですよね。
ーーお互い、チャレンジングな取り組みをされていますね
臼木:Synamonは産業の部分から入って市場を大きくしようとするし、XR企業各社は壁を越えるコンテンツを作ろうとしている。そうやって市場が大きくなれば、投資も活発になるだろうし、コストの壁も超えていけるだろうと思います。toC、toB、ルートは違えど、同じXR業界の人として共に本気の妄想を現実にしていきたいですね。
ーーありがとうございました!!
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編集協力:TELLIER