ある候補者
何年か前のこと。
地方議会の選挙戦の最中でした。
私の住む最寄り駅の駅ビル東口前で、ある女性候補が拡声器を使って演説をしていました。
彼女は駅前の東側に広がるロータリーを背に立ち、
駅ビルの方向、つまり西側を向いて演説をしていました。
彼女のほぼ正面に、駅ビルへの出入口があり、
そこに駅改札へ向かう階段、エレベーター、エスカレーターがあります。
誘導ブロックは、駅ビルに沿うように敷設されており、南北に延びています。
私は駅に向かうため、その誘導ブロックを白杖の先で辿りながら、北から南へ向かって歩いていました。
駅ビルの入口に近づくに連れ、演説の音量が大きくなっていきます。
私は思わず、顔を顰めました。
そして、入口までおおよそ10メートルというところまで来た時、
演説が急に止んだのです。一瞬どうしたのだろうと思いましたが、私はそのまま歩き、候補者を背に、駅ビルに入り、階段を上がりました。
その後、すぐに演説が再会されたのです。
もしかして、その候補者は、私が歩いて近づいてくるのを見て、
邪魔にならないように、演説を一時止めて、私が階段を登り切ったことを確認した後、演説を再会したのかもしれません。
もしかして、ではなく、きっとそうだったのだと思います。
私はその候補者に投票しました。
#視覚障害者が嬉しいと感じた配慮