調査を重ね、真っ黒で厄介なザ・廃棄物の〈チャー〉に可能性が見えてきた
突然ですがチャーって知ってますか? 知らないですよね。
もちろん、知らない方がほとんどのはずなのでご安心ください。
木質バイオマス発電
シン・エナジーは愛媛県や宮崎県、岐阜県などで地元の方々といっしょになって木質バイオマス発電所の運営に携わっています。
木質バイオマス発電とはなんぞや? という方、詳しくはこちらの過去記事をご覧ください↓
簡単に言うと、木や実などの木質バイオマスを燃やして発電する仕組みなんですが、大きく二つに分かれます。
木質バイオマスを直接燃焼し発生させた高温高圧の蒸気で蒸気タービンを回して発電する「蒸気タービン方式」
木質バイオマスを化学反応(熱分解や酸化還元)させて可燃性ガスを発生し、エンジンを回して発電する「ガス化エンジン方式」
シン・エナジーではこのうち後者の「ガス化エンジン方式」を採用しています。
この方式では、燃料の木質バイオマスは、200~600℃・無酸素状態において熱分解され、原料の82~88%がガス(CO、H2、CH4、CO2、H2O)およびタール等のガス状物質に、残りの10~15%が水分、2~3%がチャーと呼ばれる固定炭素に転換されます。
いよっ! 出ました、チャー!
ついに、チャー登場!
ガス化を図示するとこんな感じ。
実際は、このあとさらに高温化して複雑な反応を引き起こしていくのですが、お目当てのチャーが出てきたのでここではこれ以上深入りしません。
化学の教科書ではありませんので。
ちなみにシン・エナジーが採用していない方の「蒸気タービン方式」だと、完全燃焼させますので、残るのは灰のみで、チャーは出ません。
チャーってこんな感じです。
ゲッ! えも言われぬ真っ黒さ…
発電した後に残るものだけに「ザ・廃棄物」感が満載で、正直これどうしたらいいの? と関係者にとっての困りものになってきました。
実際、これまでは行き場なく産廃として処理するしかなく、保管場所にはチャーを詰めた袋が所狭しと積まれています。
それにこれ、発電しなければ生まれなかった副産物なので、現地の人たちにしてみれば余分なものが増えたという抵抗感もあったみたい。
ここまでの話だと「ガス化エンジン方式」より「蒸気タービン方式」の方がいいやん、てことになりますが、ちょっと待ってください!
真っ黒なチャーの明るい未来
このチャー、どうにかできないかと頭をひねり、各分野の専門家の協力も得て、使いみちを模索してみたところ、こんな可能性が見えてきました。
・製鉄所で使われるコークス代替(炭素源としての利用)
・練炭、豆炭原料(じっくりと燃える良質な炭)
そう、石炭や木炭の代替としての可能性です。
チャーは燃え尽きたあとの灰とは違うので、まだまだ燃えるパワーを持っているのです。
昨今何かと風当たりの強い石炭に代わるものとして活用できるなら、チャーはもはや困りものではありません。
それからこんな用途も。
・土壌改良剤
・飼料への利用
これ即ち、農業に応用できるってこと!
土壌の水はけをよくする、酸性土壌を中和する、などの効果が見込まれています。
そしてさらにカーボンマイナス。
カーボンニュートラルなら聞いたことあっても、マイナスってさすがに言い過ぎでは?
カーボンニュートラルとは、
燃焼するときにCO2を排出するが、植物の成長過程で光合成によりCO2を吸収しているので、実質的にはCO2の排出量はプラスマイナスゼロになる状態
はい、理解できます…
では改めてカーボンマイナスとは、上の言い方にならえば、
成長過程でCO2を吸収した植物を燃焼させてしまわず土に埋めるので、実質的にはCO2の排出量はマイナスになる状態
ということ。
わぁ、なんというミラクル! ブラボー!
ほら、燃やしきらない「ガスタービン方式」でよかったでしょ?
間伐材などの未利用材を使って発電する。
↓
出てきたチャーを畑に入れて野菜を育てる。
↓
チャーの炭素は地中に固定化され、売電収入や野菜の売上は地域に固定化される。
いやぁ、地域活性化の具体的な道筋が一つ、見えてきた気になるのは私だけ?
どんどん広がるチャーの世界!
The Char's story is… to be continued!