秋まき野菜、ほぼ全滅。畑一年目。
9月のはじめ頃。わたしは浮足立っていた。
畑をはじめてから、はじめて本格的に種まきの時期を迎えたからだ。
小松菜、小かぶ、ほうれん草、大根、春菊、細ねぎ、にんじん、京水菜。
にんじんとほうれん草は発芽が揃いにくいので、冷蔵庫で5日ほど芽出しをしてから撒いた。
畑の現在
晴れた日が続いたので、水やりは日に2回。
小松菜や小かぶ、水菜、にんじんが発芽し、小躍りをした。
現在。
他にも、小かぶの葉もやられてしまった。
やられ方からすると、ヨトウムシもしくはアブラムシらしい。
ウリハムシという赤い虫も見た。あいつも葉っぱ食べる系やったんか…
農家の方たちは、夜8時になると家族総出で懐中電灯を持って虫退治に出るらしい。頭が上がらない。
わたしは夜7時半に寝てしまうので、それができない。
他に、ネギもいつの間にか消えていたし、ほうれん草と春菊は芽が出てこなかった。
暑すぎたのだろうか。
当初発芽を心配していたにんじんだけが、元気に育ってくれている。
やっていた対策
わたしは農業のド素人だが、何も考えずになんとなく種まき、水やりだけをしていたわけではない。
それぞれの野菜の好光性と嫌光性
発芽まで水を切らしてはいけない子たち
混植するといい野菜の組み合わせ
播種時期
緑肥(麦とレンゲとヘアリーベッチ)
ほんの少しの植物性有機肥料(まだ土地がやせているので)
虫と鳥対策の不織布べたがけ
など、わたしなりにできる準備はやっていた。
ちなみに播いたタネはすべて固定種。ほうれん草以外は全部野口のタネさんで、緑肥とほうれん草は信州山峡採種場さんで購入させていただいた。
それでも虫に食べられちゃった理由
いろいろ考えてはいたものの、虫に食べられてしまった。
その理由を考察する。
被覆植物が十分でない
今回、緑肥(被覆植物)を播いた時期が種まきのほんの少し前だったので、まだ十分に育っていなかった。
結果として畑に裸の部分が多くなり、野菜が食われた。気がする。
捕食者がいない
虫たちは、食う食われるの関係や、共生関係がものすごく複雑に構成されている。
小さな虫たちは、ハチや鳥、カエル、クモなどが捕食する。
我が家には最近やたらとクモが出るが、カエルはいない。
アブラムシはアリと共生関係にあるので、どちらかが増えるともう一方も増える。(たしかに我が家にはアリがやたら多い)
たぶん、生態系のバランスが取れていないのだろう。
だからといって虫だけを完全に駆除しても、余計にバランスが崩れるだけだというのはわかる。
理屈ではわかるが、どうしようもない。
土壌微生物がいない
我が家の畑はまだ新しい。
土も外から持ってきたものだし、植物もまだあまり育った経験がない。
だから、土壌微生物がおそらくまだあまりいないのだと思う。
土壌微生物がいないと、野菜たちは虫を退散させる「ファイトケミカル」をうまく出せない。
また、わたしたちが腸内微生物と暮らしているように、植物たちはエンドファイトという微生物と共生している。
このエンドファイトには、カビタイプと細菌タイプがあるが、このうちカビタイプは病害虫から植物を守ってくれる。
暑すぎる
今年も、もっとも暑い夏だった。
9月の3週目になっても、ほんまに暑かった。
この記事を書いている9/27現在、まだ半袖。さすがにクーラーはいらんけど。
地温が高すぎると、野菜は発芽率が極端に下がる。
芽が出なかった子たちは、暑すぎてバテたのかもしれん。
まだ産まれる前やったのに、かわいそうすぎる。
それに、中途半端に秋が暑いと虫が活発になってしまうという説もある。
農薬を使う人の気持ち
わたしは、野菜が全滅しても別に飢えることはない。
家庭菜園は趣味でしかないし(やや本気の)、八百屋さんに行けば野菜が並んでいる。
でも、もし自分が農家だったらどうだろう。
野菜ができないと、食っていけない。(収入保険の安心も限度がある)
食べる人に安心な食べものを、という理念を持っていたとしても、目の前の虫をどうにかできるなら、わたしなら使ってしまうかもしれない。
それに、農薬はいちおう国が安全だと認めているものしか使わないのだ。
最近は化学農薬ではなく、生物農薬という生きものの力を借りるタイプの農薬もある。
農薬を使うことのなにがそんなにいけないのか。
消費者はわがままで、虫食い野菜や、虫のついた野菜にいちいちクレームをつけてくるのだから。
でも、農薬や化学肥料は、野菜に残るものだけではなく、農業水路を通って水を汚染する。やっぱり問題はあるのだ。
農家の人たちは、どんな気持ちで農薬を使っているのだろう。
農薬は虫を減らすのか
話をべつのところに移すことにしよう。
そもそも、農薬は虫を減らすのだろうか?
その答えはどちらかというとNOのようだ。
この衝撃的な事実は『土と脂』に詳しく書いてある。
化学肥料に頼るようになると、野菜は本来の力を出せなくなり、虫に弱くなる。
だから農薬にも頼らざるを得なくなるわけだが、化学肥料✕農薬の畑と、有機農法を使った畑を比較すると、どちらも虫の数は変わらない、あるいは後者のほうが害虫被害が少ないという事例がたくさんある。
もし、肥料と農薬を使わずに、美味しくて安全で、より栄養価の高い野菜を作れたらどうだろう?
肥料と農薬には相当の経費がかかるが、それを節約できる。
しかも、収量を落とさずに、耕起の手間も省ける。
農薬会社と肥料会社には耳の痛い話だろう。
不耕起、被覆植物(ヘアリーベッチなどの緑肥)、輪作。
この3つは、その夢のような話を叶えてくれる方法であるようなのだ。
自然農法や有機農法にはさまざまなやり方があり、単純に慣行農法と比較することはできない。
けれど、今のやり方では、農業は続かない。らしい。
特に大切なのは、耕起のしすぎによって何度も土壌生物圏を撹乱することを避けることだ。
そもそも耕起はいつから始まったのだろう?
江戸時代に書かれた『農業全書』を読むと、耕起は一般的な方法として書いてある。おそらく、もっと前からされていたはずだ。
なんのために耕すのか? 土に空気を入れたり、肥料を混ぜたり、雑草を取り除くためだ。不耕起栽培は、その仕事を植物や微生物たちに任せている。
だから、不耕起(あるいは低耕起)栽培は原点回帰というわけではなく、どちらかというと異端なのだろう。
そうは言っても…なかなか本に書いてあるとおりにはいかない。
F1種(交配種)と化学肥料と農薬のほうがシンプルだし、失敗も少なそうだ。
でもやっぱり、それは不自然なのだ。
低肥料、無農薬、不耕起などの自然な栽培方法は、ひとつでもピースが欠けるとうまくいかない。
我が家の畑でも、まだまだ試行錯誤が続きそうです。
さあ、播き直し。