蛇神ノ慟哭
第一章:古い村の薄闇
短歌1
灰色の 鳥の声のみ こだまする 山裾へ逃げた 蛇の影見る
短歌2
目隠しを されて踊るか 黒い縄 神社の床に 残る爪痕
短歌3
小川越え 茅葺(かやぶ)き屋根を 振り返る 振袖(ふりそで)引きずる 笑わぬ娘
第二章:最初の殺人
短歌4
夜の霧 灯籠の奥に 紅く咲く 長老の孫を 蛇が抱きしむ
短歌5
五芒星 散りばむ泥に 指が刻む 扉の隙間 閉じ込めた声
短歌6
夜巡(よまわ)りの かがり火頼り 足を止む 探る瞳に 雨粒が落ち
第三章:不穏な噂と再びの犠牲
短歌7
土壁(つちかべ)に 描(えが)かれし蛇の 鱗(うろこ)模様 祭りの古図を 燃やす者あり
短歌8
沼の底 誰の呼吸が 聞こえます 枝のような刃 唇に刺さる
短歌9
遠くから 村を出でしと 囁けば 躍る女ら 蛇神を呼ぶ
第四章:古い祠と第三の殺人
短歌10
村外れ 老いし駐在 笛を吹く 隠せぬ血臭(ちしゅう)を 犬が嗅ぎ当て
短歌11
祠裏で 瞼を閉じた 大工の指 朽ちた碑文に 蛇の子宿る
短歌12
誰が見た 夜毎に囁く 神の声 棄てた者らを 再び喰らう
第五章:火祭りの影と黒幕の気配
短歌13
回収(かいしゅう)の 竹筒(たけづつ)抱え 走る若衆 社(やしろ)の奥で 赤い紙垂(しで)揺る
短歌14
燃え残る 木偶(でく)の面を 踏み越えて 死を招く札 墨で塗りつぶす
短歌15
蛇の鱗 光る夜道の 目撃談 神罰(しんばつ)謳えば 口を閉ざされ
第六章:暴かれる祭りの真実
短歌16
燈火(ともしび)が 消えては浮かぶ 藁人形 選ばれし血を 裂くがため舞う
短歌17
雨上がり 羽ばたく鴉(からす)が 黒幕(くろまく)を呼ぶ 無明(むみょう)の炎 逃げ損ねた声
短歌18
焔揺れ 朱塗りの社 すすまみれ 黒幕(くろまく)の口 開く前に散る
終章:終わらぬ因習
短歌19
灰の中 足あと二つ 村を出て 滲む雲には まだ蛇が舞う
短歌20
木霊する 声なき声へ 首を振る 誰も知らずに 次の祭りへ