眼をつむる砂海
白く更ける 指先の庭に
螺旋を描いて 吹き上がる無数の火の粉
なくてもいいものを 欲しがってみるのは
いつだって 何かを満たせないから
ふいに吹く風に ついて行きたくなる
理解に苦しむ ぼくの中の海
惜しみなく流れている 持て余した水分
湿った風が吹かないように
手なづけた波の揺らぎを解き放たないように
ありったけの良心で構える
現像させてはいけない
累積していく光の粒たち
「あ」と言えば 続けてこぼれてしまう言葉
鋭敏な背中に 折れたようにぶら下がる
丁寧になぞる その波のかたちは
濃密な水蒸気をつくって ぼくを煙に巻く
やっとの思いで 今日に閉じ込める
誘い水は それでも水面を揺らして
知られることなく 陸に海を描く
逆撫ですらせず ただ漂いながら
出逢わないようにと 気づかないようにと
ぼくはただ きつく眼を閉じた