論文抄読会 2020年5月6日
無症候性下肢虚血および間欠性跛行の治療
尾原秀明
日本血管外科学会雑誌 2020; 29: 121–123
<これまでのガイドライン>
2000年 TASC
2007年 TASC-II
2015年 SVS診療ガイドライン
→JSVSが日本語訳(下肢アテローム硬化性閉塞性動脈疾患に対する診療ガイドライン)
<要点>
◯血行再建術の適応について
基本は有症状が対象。
※無症状:バイパスグラフトの有意狭窄・閉塞
※ADL歩行未満:機能回復の2年以上継続見通しが50%(これは曖昧)
◯無症候性PAD患者のあつかい
・Lengらの報告(1996年)では、
無症候性PAD患者 345名を5年間継続フォローしたところ
侵襲的治療は、0.9%(3名)のみで必要で、かつCLTI移行はなかった。
・するとして、禁煙指導、スタチン、抗血小板薬まで。
◯間欠性跛行患者(Intermittent Claudication:IC)患者のあつかい
・動脈硬化疾患のリスクファクターを減らす指導、治療が必須
運動、禁煙、スタチン、抗血小板薬に加えて
DM患者→糖尿病管理
禁忌なし→β遮断薬(※これは心臓的に賛否両論)
※シロスタゾールは禁忌(うっ血性心不全)なければ、1st line。
※運動療法はIC治療の基本
保険対象外だが、監視下運動プログラムというのがあって
30分以上、週3回、3ヶ月。
・血行再建術の選択
適切な保存治療によって、CLTI・肢切断は5年で5%未満であることを踏まえて
活動度高く、日常生活に支障をきたしているヒトが対象。
※生理学的検査や解剖学的所見に基づくべきではない。
つまり、「ABI値が低い」ことや「〇〇動脈が閉塞している」ことは、診断には役立つが治療適応判断とは原則関係ない。
→ABI値と予後は関係あるが、ABIが低いだけのヒトを治療して予後が改善するエビデンスは今のことろない。
・IC with AIODの第一選択は血管内治療
さらにIliac lesionであれば、primary stentingが推奨。
※Outflow規定因子のCFA lesionがあれば、TEAを追加。
・IC with SFA lesionの治療選択
Focal/short (< 25cm) lesion→EVT 1st
Diffuse/Long lesion→bypass 1st
※とくにEVTでは、治療操作で膝下病変悪化する可能性を必ず説明。
・IC with below knee lesionの治療方針。
むしろ有害なので適応なし。
◯フォローアップについて
血行再建行った場合(とくにバイパス)、再閉塞前に発見、治療することが大事。
→介入によって、1次開存率は下がるかもしれないが1次補助・2次開存が向上することが期待できる。
おもに
外来における脈確認とDUSによる血流評価を行う。