「封印された校舎 ―― 旧白銀学園の呪い」⑮最終話
最終話:「世界を繋ぐ絆」
眩しい陽光が機内に差し込み、琴音の瞼を照らした。目を開けると、隣には健太が静かに眠っている。窓の外には広大な青い空が広がっていた。
「もうすぐニューヨークです」客室乗務員の声に、琴音は我に返った。
琴音は健太を優しく起こした。「健太、着くわよ」
健太はゆっくりと目を開け、微笑んだ。「ああ、いよいよだね」
二人の世界を巡る旅は、ここニューヨークの国連本部から始まる。
到着後、二人は国連本部に向かった。巨大な建物の前で、二人は深呼吸をした。
「緊張する?」健太が尋ねた。
「うん、でも...」琴音は健太の手を握った。「一緒だから大丈夫」
会議室に入ると、世界中の代表者たちが彼らを迎えた。
「ようこそ、琴音さん、健太君」国連事務総長が握手を求めてきた。「君たちの経験と知恵を、世界中の若者たちと共有してほしい」
琴音と健太は真剣な表情で頷いた。
そして、彼らの世界を巡る旅が始まった。
最初の訪問地は、アフリカのケニア。そこでは、テレキネシスの能力を持つ少年が、干ばつに苦しむ村のために井戸を掘る手伝いをしていた。
「君の能力は、人々を助けるためにあるんだ」健太が少年に語りかけた。「でも、それと同時に、普通の生活を送ることも大切だよ」
次は南米のブラジル。そこでは、植物を操る能力を持つ少女が、アマゾンの森林再生に取り組んでいた。
「素晴らしい取り組みね」琴音が少女を励ました。「でも、無理はしないで。一人で背負い込まないことが大切よ」
ヨーロッパ、アジア、オセアニア...世界中を巡りながら、琴音と健太は多くの特殊能力者たちと出会い、語り合った。彼らの悩み、喜び、そして希望。全てを受け止めながら、二人も成長していった。
そして、旅の終わりが近づいてきた頃。
琴音と健太は、最後の訪問地であるカナダの小さな町にいた。そこで彼らは、能力を制御できずに悩む少年と出会った。
「僕は...みんなに迷惑をかけるだけなんだ」少年が泣きながら言った。「こんな力、なければよかったのに...」
琴音は優しく少年の肩に手を置いた。「私たちも、最初はそう思ったの」
健太も頷いた。「でも、この力は決して呪いじゃない。君を特別な存在にする大切な一部なんだ」
琴音が続けた。「大切なのは、その力を恐れずに受け入れること。そして、周りの人々との絆を大切にすること」
少年は驚いた表情で二人を見上げた。「本当に...僕にもできるの?」
「もちろん」健太が明るく答えた。「僕たちが証明してみせるよ」
その言葉と共に、琴音と健太は手を取り合った。すると、二人の周りに淡い光が宿り始めた。その光は少しずつ広がり、やがて町全体を包み込んだ。
町の人々は驚きの表情を浮かべながら、その光景を見つめていた。
光が消えると、町はより鮮やかに、生き生きとしているように見えた。枯れていた木々は新芽を吹き、干上がっていた小川には清らかな水が流れ始めていた。
「これが...僕たちの力?」健太が呟いた。
琴音は頷いた。「うん。みんなの心を一つにして、世界を少しずつ良くしていく力」
少年は目を輝かせて叫んだ。「すごい!僕も...僕もこんな風に人々を幸せにできるんだ!」
その言葉に、町の人々は温かい拍手を送った。
その夜、琴音と健太はホテルのバルコニーに立ち、星空を見上げていた。
「長い旅だったね」健太が言った。
「うん」琴音が頷いた。「でも、本当に来てよかった」
健太は琴音の手を握った。「琴音、ずっと言いたかったことがあるんだ」
琴音は健太を見つめた。「なに?」
「好きだ」健太の瞳が真剣だった。「一緒に歩んでいきたい。これからもずっと」
琴音の目に涙が浮かんだ。「私も...健太が好き。これからも一緒に」
二人は優しく抱き締め合った。星空の下、新たな誓いを立てた瞬間だった。
そして、半年後―
白銀学園の卒業式の日。琴音と健太は晴れやかな表情で卒業証書を受け取った。
式の後、二人は中庭に集まった後輩たちの前に立った。
「みんな、聞いて」琴音が声を上げた。「私たちは今日で卒業するけど、これは終わりじゃない」
健太が続けた。「むしろ、新しい始まりなんだ。僕たちは、世界中の特殊能力者たちをサポートする新しい組織を立ち上げる」
後輩たちからどよめきが起こった。
美咲が前に出てきた。「私も手伝うよ!みんなで力を合わせれば、きっと素晴らしいことができるはず!」
琴音は嬉しそうに頷いた。「ありがとう、美咲。みんなの力が必要なの」
そして、琴音と健太は全校生徒の前で宣言した。
「私たちは、この白銀学園を拠点に、世界中の特殊能力者たちをつなぐネットワークを作ります。そして、すべての人々が共生できる社会を目指します」
健太が付け加えた。「でも、それは特別なことじゃない。一人一人が自分の個性を活かし、互いを理解し合うこと。それが私たちの目指す未来なんだ」
大きな拍手が沸き起こった。
その日の夕方、琴音と健太は学園の屋上に立っていた。夕陽が白銀学園を優しく照らしている。
「新しい冒険の始まりだね」健太が言った。
「うん」琴音が頷いた。「でも、怖くない。だって...」
「一緒だから」二人は同時に言って、笑い合った。
彼らの前には、まだ見ぬ未来が広がっている。困難も、喜びも、全てが待っているはずだ。しかし、二人の強い絆と、仲間たちとの繋がりがある限り、どんな困難も乗り越えられるはずだ。
琴音と健太は手を取り合い、夕陽に向かって歩き出した。彼らの背後には、たくさんの仲間たちの姿があった。
これは終わりではない。新たな物語の始まりだ。
琴音と健太を中心とした若者たちの挑戦は、これからも続いていく。世界中の人々が互いを理解し、尊重し合える社会を目指して。
そして、彼らの物語は、多くの人々の心に希望の灯りを灯し続けるだろう。
(最終話 終)
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