ストック型ビジネスとは何?初心者向けに徹底解説!
「ストックビジネス」という言葉を聞いたことはありますか?
あまり聞きなじみのある言葉ではないかもしれません。ですが実は、アマゾン、Facebookなどの名だたる大企業はストックビジネスによって売上を安定させ現在の地位に君臨しています。
では、ストックビジネスとはどういうものなのでしょうか?
本記事では昨今話題となっているストックビジネスの仕組みや魅力、そのパターンを紹介していきます。
ストックビジネスとは
引用元:https://temona.co.jp/mission/
ストックビジネスとは一言でいうと
「顧客から売上が継続し積みあがっていくビジネスモデル」です。
ストックビジネスの例としてよく挙げられるのはサブスクリプション(定期課金)のビジネスモデルです。近年ではSaaS(Software as a Service)が有名かと思います。
顧客が契約更新ごとに課金していくモデルのため、解約しない限り企業は売上を積み上げることが可能です。
ストックビジネスの反対にフロービジネスというものがあります。これは「新規顧客からの一時的な売上を繰り返して収益を得るビジネスモデル」として説明されます。
この二つのビジネスを不動産で考えてみましょう。
フロービジネス:マンションの販売
・販売によって一時的に売上はのびるが、次の顧客をまた探さなければならないため売上は安定しづらい。
ストックビジネス:マンションの貸し出し
・初期は少ない売上にはなるが、契約が続くことで売上は安定しやすい。
よくあるストックビジネスの勘違い
ここまでの説明の中で、「ストックビジネス=サブスクリプション」と考えてはいませんか?
実はこれは間違いで、ストックビジネスを始めようとする人がよく躓くポイントです。
サブスクリプションを日本語にすると「定期課金」、つまり料金の支払い方法に過ぎません。
一方ストックビジネスとは先ほど紹介した通り、売り上げが継続して成長していくビジネスモデルであるため、必ずしも「定期課金」である必要はありません。したがって、売れないものをいくら定期課金したところでストックビジネスになることはありません。
逆に、後ほど紹介していきますが小売業や法定業などであっても消費者を独占できる仕組みが確立されているのであれば、十分にストックビジネスになりえます。
投資家はなぜストックビジネスに注目するのか?
投資の神様とも呼ばれるウォーレン・バフェット。
彼が巨額の富を築き上げた背景には、このストックビジネスが関連しています。
当時の多くの投資家とバフェットとが大きく異なっていたのは「長期的な視点」です。具体的に言うと、短期的な株価の浮き沈みにとらわれず、企業のビジネスモデルを分析し長期的な投資価値を見極める視点がバフェットにはありました。
その結果、バフェットは最高級の銘柄群を大幅に割安な価格で購入することができたのですが、この長期的な投資価値を見極める視点はまさにストックビジネスかどうかを見極める視点でもありました。
なぜなら、長期的な視点とは「売上の継続性」を重要視していたからです。某期に驚異的な売り上げを誇る企業があったとしても、それだけの理由でバフェットはその企業へ投資することはありませんでした。短期的な変化にとらわれている状態では、株式投資は博打でしかないことに気づいていたのです。
バフェットの投資術は今では多くの投資家に知られ投資を判断する基準となっています。したがって、「売上の継続性」を特徴とするストックビジネスは現在の投資家たちに注目されているのです。
ストックビジネスの魅力①安定した売上が見込める
ストックビジネスは顧客が存在する限り継続した売上が見込めます。
この点に関しては、先ほどのフロービジネスと対比させるとわかりやすいかと思います。
フロービジネスでは顧客は基本的に新規の方々です。したがって、営業の良しあしで売上は大きく変動してしまいます。
対して、ストックビジネスは新規顧客と既存顧客を合わせたビジネスモデルであるので売上は徐々に上がる傾向にあります。仮に新規顧客を獲得できなかったとしても既存顧客を手放すことがなければ大幅な赤字になることは考えづらいです。
ストックビジネスの魅力②外的要因に左右されにくい
ストックビジネスは外的要因に左右されにくいです。例えばリーマンショックの際に多くの企業が倒産や経営難に陥る中、ストックビジネスを行っていた企業は多少の影響はありつつも着実に売上を伸ばしていました。
これは既存顧客をつかんで離さない仕組みが整えられていたことがポイントとなっています。
また、「究極的なストックビジネスはインフラである」と紹介されることもありますが、例えば水道、電気など私たちの生活に大きく影響するインフラを不景気だからといって解約しようと思うでしょうか?不景気であろうが契約を継続せざるをえないと思います。
それと同じでストックビジネスは人々に密接に結びついているために、外的要因に左右されづらく売上の減少は起きにくいのです。
ストックビジネスの欠点①初期費用が大きい
ストックビジネスは初期費用が大きくなりがちです。
というのも、フロービジネスと違いリピート購入または契約継続を狙っているとすると顧客満足度がビジネスにおいて重要な指標となってきます。
そのため、顧客が購入・契約してからが正念場であり使い続けていただくために入念な準備をする必要があります。
また、再びインフラの話を取り上げると理解しやすいかと思います。水道や電気を利用できる環境を全国中に整備するのは非常にコストがかかると容易に想像できるのではないでしょうか。
ストックビジネスの欠点②収益化まで時間がかかる
この欠点は初期費用が大きいという点に通じるのですが、ストックビジネスは初期費用がかかるので損益分岐点に到達するのはかなり時間がかかります。
また、SaaSの例がわかりやすいかと思いますが、
10万円のソフトウェアを一度に買うのと、1年につき2万円のSaaS契約であればどちらが早くより多くのお金を手に入れられるかといえば、前者の売り切り型のソフトウェアかと思います。
このようにストックビジネスは収益化には時間がかかるのですが、コツコツと売上を積み上げていくといずれはフロービジネスを追い越すことができるという特徴があります。
ストックビジネスパターン一覧
ここまではストックビジネスの内容、魅力、欠点を順にまとめてきました。「ストックビジネス」と一言でいってもその売上の積み上げ方によって種類は多岐にわたります。
以下ではその仕組みを分析し、実際に企業がストックビジネスをどんなモデルで行っているのかをパターン別に分けて紹介していきます。
ストックビジネスのパターンⅠ:リアル販売型
ⅰ)メーカー
個人や企業がその商品を継続購入し、その業者が製造せざるをえない独自の技術を持っているモデルです。
継続的需要があり、かつプロダクトにオリジナリティがあり代替品がない環境かどうかがストックビジネスに大きくかかわってきます。
例)コカ・コーラ、ヤクルト、アデランス、キャノンなど
ⅱ)リテイル
個人や企業がその商品を継続購入し、その業者が販売せざるをえない独自の技術を持っているモデルです。
上記のメーカーと比較するとリテイル(=小売り)は「場のオリジナリティ」がストックビジネスたるポイントとなってきます。ある地域性にのみに集中して出店することで絶大なシェアを獲得することもあれば、物流コストを抑える仕組みを築くサービスもあります。
例)セイコーマート、アマゾン、アスクルなど
ⅲ)SPA(=メーカー+リテイル)
個人や企業がその商品を継続購入し、その業者が製造・販売せざるをえない独自の技術を持っているモデルです。
このビジネスモデルの強みは消費者のニーズが直接メーカーに伝えられるため、そのニーズに敏感に対応できるということです。そして独自の良い商品が開発されれば購入したいと思う人が当然生まれますが、その商品を売っているのはその企業だけです。したがって、消費者を独占しやすいビジネスモデルということができます。
例)ニトリ、ユニクロ、スターバックス、ファンケルなど
ストックビジネスのパターンⅡ:賃貸型
ⅰ)リアル
不動産や施設、設備など実体のある有形資産を賃貸するモデルです。
土地やインフラはもちろんですが最近は会議室やオフィス、コワーキングスペースなど様々な有形資産が賃貸の対象となってきています。
例)パーク24、WeWork、ティーケーピーなど
ⅱ)バーチャル
SaaS、業務システムなどのITや独自のノウハウといった無形資産を貸し出すモデルです。
主にtoB向けのストックビジネス企業が多く見受けられるのが特徴です。
例)SmartHR、サイボウズ、Sansanなど
ストックビジネスのパターンⅢ:代行型
独自の技術やツール、知的財産をもとに顧客企業の経営や業務の一部を代行するモデルです。
例)IBM、イオンディライト、ベネフィットワンなど
ストックビジネスのパターンⅣ:メディア型
様々な媒体を用いて情報を拡散するモデルです。
例えば、電波放送(テレビ)は法律の規制があるために自由にテレビ局をつくることはできません。したがって、競合が生まれる心配はなく必然的に消費者独占性が生まれます。
例)テレビ局、新聞社、週刊誌各社など
ストックビジネスのパターンⅤ:コミュニティ型
多くの人が利用する場(=コミュニティ)には価値が生まれますが、それをうまく利用したモデルです。
利用者人数が大きくなればなるほどそのコミュニティにオリジナリティが生まれ、そのコミュニティ内部の人に対してリーチしたいと考える企業も増えていきます。
例)Facebook、Amazon primeなど
ストックビジネスのパターンⅥ:リスクヘッジ型
安全、安心のために専門的な技術や設備、人材を提供するモデルです。
このモデルはインフラと同様にニーズが常に顕在しています。セキュリティ問題で不祥事を起こせば企業価値は一気に下落してしまうこともありますので、特に大企業はリスクヘッジには惜しみなく資金を投下します。
例)セコム、トレンドマイクロ、イーギャランティなど
ストックビジネスのパターンⅦ:法定業務型
法律によって業務を行える人が限られているビジネスを行うモデルです。
その資格試験が難関であればあるほどその業務には消費者独占性が生まれます。
例)弁護士、司法書士、行政書士など
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ストックビジネスの全体像がぼんやりでも見えてきたのであれば幸いです。
今後、SYGではストックビジネスの個別の企業分析を進めていきます。
財務諸表などから分析し、どうしてストックビジネスになっているのかその根拠を紹介していきたいと考えています。またそれ以外でも決算分析や企業分析などストック型ではない企業の分析記事も作成していきます。
投資をしている方、興味のある方、企業分析に興味のある方、ぜひ一度読んでみてください。
株式会社SYGでは、ストック型上場企業を中心に決算書や経営状況、今後の成長性などの解説・分析などを記事にして発信しています。