偽りの姿で地獄に住んでいて幸せ?
Clairo - Amoeba
楽曲の概要
2021年リリース、Clairoの2ndアルバム"Sling"収録のトラックです。自身の心の奥底に眠る哲学が自由に表現された内省的なナンバー。その詞は少々難解ですが、ジャジーでソフトなサウンドがすべてをまるく優しく包み込んでくれます。
Amoeba(アメーバ)は単細胞の原生生物で、その形が定まっていないことが大きな特徴です。一定の形を保つことができないアメーバを、どうしようもなく流動的な自身と重ね合わせ、自虐的に喩えているのだと私は解釈しています。
無目的のままに進む迷路のような人生や、自分の居場所を見つけられない不安と孤独を象徴したアメーバ。家族や友人と良好な関係を保つことの難しさについても婉曲的に語られており、彼女の内なる葛藤の数々が窺えます。
和訳
[Verse 1]
Between the gaps
裂け目の狭間を
I was swimming laps
何往復も泳いでいた
Got close to some epiphany
とある悟りに近づきながら
I'll convince a friend to join deep ends
深くへ行こうと友人を誘う
Have your toes touch the lack of cement
セメントのない場所を爪先で触れてみよう、と
[Pre-Chorus]
Gather to one corner of the woods
森の片隅に集まる
Echo chambers inside a neighborhood
近所のエコーチェンバー*
And centerfold, humility shown
センターフォールドに現れる謙虚さ
You're not as good as what your mama's sewn
君はママの編み物ほど良い出来じゃない
[Chorus]
Aren't you glad that you reside in a Hell and in disguise?
偽りの姿で地獄に住んでいて幸せ?
Nobody yet everything
何者でもないけれど 全てでもある
A pool to shed your memory
記憶を流すためのプール
Could you say you even tried?
本当にやってみたと言える?
You haven't called your family twice
家族に電話もしていないのに
I can hope tonight goes differently
今夜こそ上手くやれると思う
But I show up to the party just to leave
でもパーティーに顔を出して すぐに去るの
[Verse 2]
Between the gaps
裂け目の狭間を
Keep it under wraps
秘密にしておく
How I got to some epiphany
どうやって悟りに辿り着いたかを
I'll convince myself when it turns to twelve
12年経ったら 自分を納得させよう
The photos keep the sentiment
写真は感傷を捨てない
[Pre-Chorus]
Gather to one corner of the woods
森の片隅に集まる
Echo chambers inside a neighborhood
近所のエコーチェンバー*
And centerfold, humility shown
センターフォールドに現れる謙虚さ
You're not as good as what your mama's sewn
君はママの編み物ほど良い出来じゃない
[Chorus]
Aren't you glad that you reside in a Hell and in disguise?
偽りの姿で地獄に住んでいて幸せ?
Nobody yet everything
何者でもないけど 全てでもある
A pool to shed your memory
記憶を流すためのプール
Could you say you even tried?
本当にやってみたと言える?
You haven't called your family twice
家族に電話もしていないのに
I can hope tonight goes differently
今夜こそは上手くやれると思う
But I show up to the party just to leave
でもパーティーに顔を出して すぐに去るの
[Instrumental Break]
[Outro]
Pulling back, I tried to find
引き返しながら 探そうとした
The point of wasting precious time
時間を無駄にする意味を
I sip and toast to normalcy
正常性に乾杯し
A fool's way into jealousy
嫉妬へと愚かに進む
I mock and imitate goodbyes
サヨナラを揶揄って 真似してみるけれど
When I know that I can't deny
否定できない わかってる
That I'll be here forever while
ここにずっといるってことを
I show up to the party just to leave
パーティーに顔を出しては すぐに去る
そんなことをしている限りは
注釈
︎
*エコーチェンバー現象
常に同じ意見を見聞きしていることによって、それ以外の認識が間違っていると思えてくる現象のこと。特にSNS等でアルゴリズム的に似通った情報が回り続けることで、偏った思想を得る危険性があると問題視されています。
ここではもっとジェネラルな意味で使われていて。
「ずっと同じところにいてはダメだ」と"セメントのない場所"(=都会ではない何処か)へ赴き、価値観のアップデートと自己発見を求めている状況を示唆しているのだと思います。
最後に
「偽りの姿で地獄に住んでいて幸せ?」
そんなわけない
もちろんそんなわけない
しかし
ただ気づいていないだけかもしれない
今自分が身を置く世界が地獄だと、
認めることを拒んでいるだけかもしれない
まずは「偽りの姿で地獄に住んでいる自分」を
認識することが何よりも大切なのかも
自分の生き方に疑問を投げかけ、
「変わりたい」と一歩踏み出すことができれば
きっと周囲の物事はいい方向へと動き出すはずだから