小さな贅沢:Little National Hotel Canberra
オーストラリアの首都、キャンベラは人工都市だ。
丘の上に建てられた国会議事堂のまわりには官庁の建物が集まっているが、高層ビルはほとんどない。
その一角に、黒いモノリスのような異様な建物がある。まわりが空地になっているのでその建物はさらに目立つ。
これが、Little National Hotel Canberra だ。建物の下部は駐車場になっていて、客室は上部の2フロアだけ。
写真の左側に国会議事堂の上にそびえ立つ国旗掲揚塔が見える。
回転扉を押して中に入ると、シンプルなフロントデスクがある。といっても簡素なテーブルで、ゲストとスタッフを隔てる壁のような機能は皆無だ。
小さくても機能的な客室
Little National の特徴を一言でいうと、A Little Luxury 。ちょっとした贅沢。小さな部屋だけど、機能的で洗練されたデザインで、快適なステイを提供している。
部屋タイプも、バリアフリーの部屋とスタンダードの2種類だけ。なんと子供用のエキストラベッドやベビーコットも提供していないのには驚いた。言ってみれば、「アダルト・オンリー」のホテルなのだ。
部屋はシンプルな長方形。17平方メートルのコンパクトな「根城」だ。ベッドが部屋の突き当りにあるせいで、この手のホテルでよくある部屋の狭さをほとんど感じさせない。
突き当りには部屋の幅いっぱいにベッドがある。スーパーキングサイズベッドで、2メートル四方。どんなに寝相の悪い人でも問題のないサイズだ。
洗面所もシンプルなデザインで、シャワールーム、洗面台、トイレが並んでいる。レインフォレストシャワーもあるので爽快に水浴びができた。
バスルームアメニティは、オーストラリアのAppelles というブランドで、ボタニカル系の香りが気持ちを落ち着かせる。ローカルブランドを使用しているのもプラスだ。
別の部屋では、シャンプーなどのボトルが詰め替えができるスタイルになっていた。昨今はプラスチックごみが問題になっているので、このようなやり方はゲストの共感を得られるだろう。
ベッドはやや柔らかめの身体を包み込むような感触で、ぐっすり眠ることができた。朝起きて電動ブラインドを上げると、キャンベラの風景を横になったまま楽しめる。窓は床から天井まで広がっているので、高所恐怖症の人はあまりベッドの端に寄らないほうがいいかも…。
そうそう、こんな大きな窓がベッドのすぐ横にあるので、遮光は大事。ブロックアウトブラインドを下ろせば外光はほとんど入ってこないので、朝遅くまで寝たい人も大丈夫。
ラウンジ・ライブラリー
このホテル、テナントのカフェが建物に入っているものの、ホテル自体にはレストラン・バー・会議室といった施設はない。
その代わり、こんなタイプのホテルには珍しく、充実したサイズのラウンジとライブラリーが併設されていて、ホテルゲストは24時間利用できる。
大きな窓を背に、ソファやカウチが並んでいる。
Covidのせいかバーは自己申告制になっていたが、ここでワインやビール、スナックなどを楽しめる。
暖炉もあったので寒い時期はいいだろうな。
らせん階段を降りると、仕事をしたい人向けのライブラリー。言ってみればビジネスラウンジだ。
同僚と一緒に仕事ができそうな長いデスクも、一人で集中して仕事ができるようなブースもあるのでそこはご自由に。こちらのフロアにはコーヒーマシーンが設置されていた。
その他雑感…
やや困るのは、このホテルのあるエリアは官庁街なので、ひっそりと静かなのはいいのだが、やや閑散とした印象もある。ローカルの人が行くような商業施設や飲食店がないのがちょっと不便で、週末はさらにゴーストタウンのようになる。キャンベラの目玉である美術館や博物館も、健脚な人なら別だが微妙に徒歩圏内ではない。まあ、キャンベラ自体がそういった町なので仕方がないのかな…オーストラリアの首都なんだけどね。
Little Nationalは、このようにとてもシンプルなコンセプトなホテルだ。余計なものをなるべく排除するが、気持ちよく滞在することができる部屋や施設を提供している。
客室はソロトラベラーやカップルなら全く問題ない広さだし、ビジネストラベラーはライブラリーで仕事をすればよい。
個性的かつスタイリッシュなステイができるので、味気のない低価格帯のチェーンホテルに泊まるよりは絶対オススメだ。
最後に白状すると、今回このホテルがシドニーにもオープンするのだが、私はそのオープニングスタッフです。シドニーのホテルでゲストとしてお迎えできれば幸いです!