秘湯 !千人風呂に日帰りで
敬愛するサザヱさんのこの文を読んで、俄然行きたくなった酸ヶ湯温泉。
でも泊まりはなあ…と思っていたが、青森駅からは、日帰りでかなり簡単に行けるということが判明。
駅前のバスターミナルから、JRバスの「みずうみ号」というバスが出ている。どちらかというと十和田湖に行くハイカー向けのバスのようだが、酸ヶ湯温泉にも停まる。
このバスは一日二往復だけだが、ちゃんと計画を立てれば簡単で、朝のバスに乗れば、3時間ほど酸ヶ湯温泉に滞在できるようだ。
日帰り温泉に3時間もいるのか〜、と思う人もいようが、ここは特別な場所らしい。ならば、行くべし!
青森駅前より、朝のバスに乗る。やはり乗客のほとんどは山歩きっぽい服装の人が多く、日帰り温泉に行くだけ、というもの好きはいないようだ(ガイジンなのでお許しを)。
しばらくすると、バスは青森市街を抜け、八甲田山に向けて登り始め、ぐねぐねとした道になる。
八甲田山といえば、死の彷徨ですわな。ここをさまよったのか〜、と新田次郎の本を読んだ自分としては感慨深い。
気温もだんだん下がって来て、雲も山の中腹まで覆ってきた。まあ10月だから彷徨する羽目にはならないけど…。
一時間ちょいで、バスは酸ヶ湯温泉に着く。周りは、このホテル(湯治場)しかない!
山に囲まれた、温泉。空気も青森市街と比べてかなり下がっている。まだ紅葉には少し早いが、山も少し色づいていた。
すぐ風呂に入るのもつまらないので、近くにあるという、地獄沼という場所に行く。歩いて10分ほどなので大した距離ではないが、たまたま周りに誰もいなかったので、秘境をさまよってるかのよう。
地獄なんて大げさな…とタカをくくっていたが、こりゃすごい。
なかなか荒れ果てた風景で、周りに誰もいなかったので、うん、地の果てっぽい。
で、湖面からは煙がたなびいているんですよ、アナタ。
つまり、これも温泉なのだ。もちろん外気が寒いので、水の温度は生ぬるい、という程度だが、なるほど〜。
だんだん身体が冷えて来たので、温泉タイム!と宿に戻る。
古色蒼然とした受付けで千円ナリの入湯料を払う(タオル付き)。この時点で、ザ・昭和の湯治宿!という雰囲気がむんむん。
さて、話題の、ヒバ千人風呂へと、引き戸を開けると…。
おお〜、とにかく、湯殿が素晴らしい。天井、壁、床とほぼ全てが木造。こんなに広い湯殿なのに総木造りというのはかなりユニークなのでは。
湯船も木造で、床の木の触感もでこぼこしていて味がある。
ここに、これまで何千何万人のオシリが落ち着いていたんだなあ…と下らんことを考えた。
そしてかんじんのお湯だが、うん独特!イオウの香りがかなりして、青白い色。酸が強いそうなので、少しピリッとする。
(ちなみに、温泉で使ったタオルは何回か洗った後も少しイオウの匂いが残っている)
湯気がもうもうと立ち込め、そこに入浴者がぼうっと浮かび上がる。裸体の入浴者は、仏像のようにも見える。
明かり取りの窓から陽が差すと、湯気に光が斜めに差し、更にお湯に当たり、幽玄としか言えない。
そしてこの湯殿、混浴なのだ。昔ながらの伝統を守っている、ということなのかな?でも女性の方も心配(ほぼ)無用。衝立で男女が区分されているので、混浴と言ってもほぼ分けられている。
湯殿はぬる目の熱の湯、熱めの四分六分の湯と、打たせ湯の三種類で、それらを順繰りに入っていると、すぐに時間が経つ。
ついでに別の場所にある、玉の湯にも入る。ここは男女別で、身体も洗える。
さんざん温泉を堪能して、ラウンジでくつろぐ。ここも品のあるロッキングチェアがあったりして、ゆったりとできる。
別に食堂や売店もあるので、お土産を買うこともできる。
帰りのバスにも無事乗れた。バスは帰りに三内丸山古墳にも寄るので、折角だからとここで降りたが、縄文時代の文化について学ぶことができ、とても興味深かった。なんとなく、縄文文化は耕作しなかったから弥生文化に比べると劣ってる、という先入観があったけど、実際は縄文人はかなり満ち足りた生活をしていたので、敢えて耕作をしなくても良かっただけの話では?と思った。
ここからは、路線バスに乗って無事に青森駅に戻った。外は一日中肌寒かったが、身体は暖かい一日だった。