日本全都道府県に行ってきた(未知の町、日向市へ)
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11月26日
さて前日、晴れて日本最南端の駅および日本最南端の始発・終着駅に行くことができた。
これで鹿児島には用なしとなり(って言い方は良くないな、そりゃもっと芋焼酎呑んでたいけど)、今度は九州の東側、宮崎、大分県を北上する。
ということで翌朝、指宿駅から鹿児島中央まで「なのはな」という快速列車があったのでそれに乗る。
さすがに朝の通勤時間帯とあり、鹿児島中央駅に着く頃には立っている人もかなり多かった。
ここで特急「きりしま8号」に乗り換える。JR九州の在来線特急に乗るのはこれが初めて。
ほかのJR車両とは一味違う、なかなかエッジの効いたデザインだ(車両自体はやや古びていたけど)。
先日とはうって変わり雨がぱらつく中、別角度から桜島を見つつ列車は進む。
しばらくすると、線路は海から離れ、一転山の中を走る。そのうちに宮崎県に入ったようで、久々の都市、都城駅に着く。
宮崎駅でこの列車は終点だが、すぐに接続する「にちりん10号」に乗り換えて更に北上。
しばらくすると、奇妙な建造物が車窓から見えてきた。
JRの線路と並行して、延々と高架線のような建造物が続いているのだが、鉄道や車が走っているわけでもなく、しかもパネルのようなものが延々と続いている。
廃線?それにしては豪華な作りだな…と頭をひねっていたら、昔の記憶が蘇ってきた。
「ああ、このあたりでリニアモーターカーの実験をしていたんだっけ」
なんでも、1977年から1996年まで実験が行われていたそうだ。
ああ、そんなものもあったなあ…と思い起こし、それにしても、それが今ではソーラーパネルの設置場所にしかなっていないのか、と思うとちょっと残念な気が。
ところで、今日泊まる場所は、日向市である。
この日も、泊まる場所にとても困ったのである。宮崎県のどこか、いやいっそのこと別府か大分に2泊ほどしてもいいかな、と思っていたが、秋の行楽シーズン、旅行支援などのせいかホテルの値段が理不尽に高い。
それでなんとか予算内で出てきたのが、日向市のホテル。
で、日向市、って何があるの?
宮崎駅から1時間弱で日向市駅に降り立つ。
うむむ、駅前はなにやら閑散としている。これはまずい。
「オレは何故にここに泊まることにしたんだろう?やはり多少値段を張っても観光地に泊まるべきだったかな…」という後悔が頭をもたげてきたが、いやまだ分からん。こういう時は地元の人に聞くのに限ると、駅前にあった観光案内所に入り、
「あの~、今日これから観光するならどこに行けばいいですか?」
という、お前全然リサーチしてないじゃん!と言われても仕方ないような質問をした。僕はホテルのコンシェルジュが職業だけど、こういう漠然とした質問をされるとけっこうガクッと来ますから…。
すると案内所の人が親切に、自転車で日向岬まで行くことをすすめてくれた。
そっか、久々の自転車も悪くないな、とお隣にあった「まちの駅」でレンタサイクルの手続きをし、海に向かって走り出した。
午後の静まった町をしばらく走ると、細島という漁港に出た。そして、「海の駅ほそしま」という店舗の中に食堂があるのを発見。
駅前周辺にはこれといった食べ物屋が見当たらなかったので、これ幸いと入り、見たところ地元っぽい人で賑わっていて、これは美味しいお店のサインです。
かつおの刺身丼をオーダーしたが、これがもうとても新鮮で美味しかったんですわ。さすが漁港の食堂!
写真ではよく分からないが、この味噌汁には魚のアラがゴロンと入っていて、それもまたすごく脂がのっていて美味しかった。
あまりにも美味しかったので、お店のスタッフのおばちゃん方に、「いやあ~ほんと美味しいっすね!」と声をかけてしまった(こういうノリはオージー流)。
さて、美味しいものを食べて気が大きくなったところで、岬にチャレンジ。
岬は、海にポコンと突き出ていてかなり急傾斜。さすがに自転車、しかも電動アシストなしの自転車だったのできつかった。坂がきつい所では自転車を下りて押す破目になったが、それほど長距離ではなかったのが幸い。なんとかてっぺんの馬ヶ背という場所に着いた。
名前の通り切り立った崖が連なっている場所で、ここからは岬の先っちょをぐるりと周る遊歩道をしばらく歩くと海に出た。
海がキラキラと輝いていて、やはり九州の海は色が濃いなあ…モネの絵にこんな作品があったような。
そして断崖絶壁に海が細長く食い込んでいる場所もあり、打ち寄せる波を見ていると吸い込まれそう…。
この場所からまた自転車でひと坂越えたところにある、「願いが叶うクルスの海」という、まあなんともアレな命名の場所に行く。
ここは、海が岩に食い込んでいる箇所が交差していて、十字架のように見える、というわけです。ふむ、たしかに…。
願いが叶うかどうかは知らないけど、自然の絶妙な造形は素晴らしいな、と思った。
きれいな景色を見て、自転車こいで運動もしたので、気分はとても良くなり、日向市、いいとこじゃん!とまで思うようになった…現金だなあ。
ただ、夕食には少し困った。ホテルの周りは飲み屋街みたいになっているのだが、満員だったり入りにくい雰囲気を醸してたりと、どうも決められなかったので、結局ホテルに戻ってそこのダイニングにした。
ここが当りで、とくにこの地元の豚を使った豆乳鍋が五臓六腑に染み渡った。
というわけで、消去法的に訪れた日向市だったが、美しい景色も見られたし、美味しいものも食べられたので、当初の印象とは違ってとても楽しめた。これも行き当たりばったり旅の醍醐味、というか。
(つづく)