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シドニー郊外でクラフトビールざんまい

「お、久しぶりだね!」

シドニーのバスターミナルで待ち合わせた友達と挨拶を交わした。冬とはいえ、コートを脱いでもいいほどの暖かい日和である。

今日は、シドニー在住日本人の友達と、大人の社会科見学だ。わざわざ「オトナの」と銘打ったからには、行くのはもちろん18+の場所。

…なんて書くと、なにやら悪所にでも行きそうだけど、今日行くのはクラフトブリュワリーだ。健全なもんでしょ。

目的地は、シドニー市街から北に15キロほどの距離にある、ブルックベール(Brookvale)という場所だ。シティからは、黄色に塗られたダブルデッカーの、BeeLineという快速バスで行けるので、距離の割には簡単に行ける。

バスに乗り込み、もちろん2階に上がる。ターミナルを出るとすぐに、オペラハウスとその周りに広がるシドニー湾を見ながらハーバーブリッジを横断する。何度も通っている場所だが、何度見ても飽きない景色。やっぱりシドニーって素敵だな。

橋を渡り終えると、いくつかの住宅地を過ぎてゆき、30分程でワリンガ・モール(Warringah Mall)という大きなショッピングモールのあるバス停で降りる。ブリュワリーは、このバス停から徒歩10分ほどの場所に固まっている。

このエリアは、自動車修理工場のような小さな工場、そして倉庫が多い。他の国は知らないが、オーストラリアの場合、このようなシティからそれほど遠くない場所にある倉庫街にクラフトブリュワリーが多い。

昼下がりの工場街は、さして人通りもなくて、本当にこんな場所にブリュワリーがあるの?と不安になるくらいだ。僕は地元民だし、さんざんこういう場所に来ているので気にはならないけど、初めての人だったら、いくらビールが好きといえども少し気が引けるのではないだろうか。特に日が暮れてからは。

そもそも、歩いている暇そうな人は我々以外いない。シドニーのほとんどのブリュワリーはもう少し遅い時間、午後4時位からオープンするところが多い。

そんな静まった殺風景なエリアを歩いていくと、いくつかの工場が固まっているエリアの一角に、なにやら楽しそうな空間が見えてきた。

今日の一軒目は、4Pines Brewing Co. Truck Barである。
ここはクラフトブリュワリーとしては比較的大手で、シドニーのパブでも良くお目にかかるブランドだ。

足を踏み入れると、天井の高い工場のようなフロア、奥にはビールを作る大きなステンレスのタンクが並んでいる、本格的なブリュワリーバーだ。

その工場の中に沢山テーブルが並べられ、入口付近には半屋外のエリアもある。そして、バーカウンターの横にはクラシックな赤いトラックが鎮座していて存在感を出している。

ここの正式な名称が、"Truck Bar Brookvale" なので、もちろんトラックがあるというわけだ。

カウンターの上には大きなビールのメニュー。他のパブやボトルショップでもおなじみの種類と、ここでしか飲めないLimited Releaseのビールがある。

そりゃもちろん、ここ限定のビールだよな、と、タスマニア産の原料を使ったラガーを頼む。一杯目だから、すっきりとしたビールが飲みたかったし。
友達は、同じくここ限定の黒ビール、そしてアルコール入りのレモネード(ビール屋なのに!)を頼んだ。

出てきたビールをみて、わ!となった。このグラス、お洒落だなあ…。

後ろに写っているトラック、空と雲、マンリーフェリー…などがグラスに描かれていて、これは買って帰りたくなる(実際売ってます)。

僕のビールは、ラガーとあってスッキリとした非常に飲みやすい口当たり、黒ビールもそれほどヘヴィではなく飲みやすかった。レモネードは、要はスプライトのような風味だが、アルコールがしっかり入っているぶん(確か6%くらい)、後味が甘ったるくなくてスッキリとしていたので、たまに飲むぶんにはいいかも。

ちょうどお昼時だったので、皆でハンバーガーやスイートポテトフライなどをオーダーする。食べ物のメニューも充実していた。

このあたりで仕事をしていたら、ランチに通ってしまいそうだ…。一杯くらいならいいかな?なんて。
それは良くないけど、仕事が終わったら絶対に毎日行きそうだ。

幸か不幸か、この手のブリュワリーバーは、月ー水曜日は休みの所が多い。もともとそれほど至便な場所にあるわけではないので、納得できる理由だ。

ビールと食べ物を楽しみながら談笑し、それではお次のバーへ!

二軒目は、Freshwater Brewing Company 。実はこのバーは、朝の7時から開いている日もあるので、まさか、朝っぱらからビールは売ってないよな…とは思ったものの、4Pinesに行く前に寄って聞いてみた。

すると、午前中はカフェとして営業しているので、ビールを出せるのは午後2時からだそう。

「うーん、でもまあ、1時半でもいいよ!後で来てね!」

とバーのお兄さんに言われてたので、約束通り戻ってみたというわけだ。

ブリュワリーなのにカフェ?と思ったが、このエリアで働いている人はそれなりにいるし、オージーはコーヒーにうるさいから、ビジネスにはなるのだろう。

戻って来たよ〜、と先ほどのお兄さんに声をかけ、バーに入る。

それにしても、このバーはカフェもやっているせいもあるが内装がお洒落。

クラフトブリュワリーバーというのは、ビール=男性=マッチョ、というステレオタイプのせいか、男性的、オヤジ愛好的なテーマやデザインが多いけど、ここはすべてがパステル調で、おしゃれかつフェミニンである。こういうのも、全然いい!

さて何を飲むか。ここでは、皆それぞれのテイスティング・パドルを頼もう!ということにした。

これはお試しセットのようなもので、何種類かのビールが小さなグラスに入って出される。

パドルのデザインもおしゃれ

ここでは3種類、5種類のパドルを選べ、5種類いいなあ~、という誘惑もあったが、このあともう一軒は行きたいので、自重して3種類の方をオーダーした。

3種類だと、あれも飲みたいこれも試してみたいと選択に悩むが、とりあえず決めた。迷った時は、バースタッフにお任せしてもいいかもしれない。

このバーに入った時は、デザイン重視のブリュワリーで、もしかしたらビールの味は大したことないのかも?という不安が若干あったのだが、お、美味い!

ペールエールも、ラガーも、特徴をちゃんと出しつつ飲みやすい味で、変な先入観を持ってしまってスンマセン!となった。

友達が選んだビールも少し飲ませてもらったが、どれも高水準のビールだった。このブリュワリーのことは事前によく知らなかったので、うれしい発見だった。

さて、だんだんほろ酔い気分になってきたが、あと一軒くらいは行けるだろう、ということで、次の場所へ!

といっても、角を回ったところにすぐブリュワリーがあった。

このエリア、Google Mapを切り貼りしておくが、ブリュワリーが7軒ほど狭いエリアに固まっている。

こんな狭い場所なので、7軒回るのは物理的には全く支障がない。ビール好きにはたまらない場所である。

本日の三軒目は、Bucketty's Brewing Co. 

中に入ると、いい意味で雑然とした雰囲気で、なにげにリラックスした空間だ。バーの奥にはダーツボードなどもあって、誰かの家にお邪魔してるような気分になる。

さて、何を飲もうか。

ここでもパドルを頼もうかな、と思ってバースタッフに聞いてみたら、

「ウチではパドルはやってねーよ。でもま、飲みたいもんがありゃ試飲させてあげるわ。これなんかどう?これもおいしいよ?さ、どうだどうだ!」

みたいにすごい勢いで小さなグラスにどんどん違った種類のビールを注いでくれて、それだけで酔っ払いそうになってしまった。

勢いに押され、これが友達がオーダーしたここで一番人気のラガー。細長い取っ手付きのグラスがかっこいい。

僕は、そろそろ黒ビールが飲みたくなったので、このSmoked Swine Porterにした。

建物を抜けると気持ちの良い裏庭があって、子供が遊べる砂場まである。オーストラリアのパブやブリュワリーバーは基本子供連れもオーケー。この日も子供を遊ばせながらビールを楽しんでいるファミリーがいた。

この壁画のオジサンは、創業者のお父さんだそう。乾杯!

さすがにこの時点でほろ酔い気分になっていたので、写真もだんだんと適当になってきたが、この黒ビールは、名前の通り少しスモーキーが香りがあり、何かを思い出させるスモーキーさだなあ…と考えたらベーコンだった!つまみを頼まなくてもいいわ、これなら…なんて。

4時間ほどかけて3軒のクラフトブリュワリーをめぐったけど、いやほんと楽しい。

様々な種類のビールを飲めるし、その場所でしか出されていないご当地限定ビール(limited release)を飲めるのもブリュワリーに行く醍醐味だろう。そして、そこで働いているスタッフも総じてフレンドリーなことが多い。

もちろん、ここに来る人もビール、更にはクラフトビールが好きな人だろうから、普通のパブより和気あいあい、という空気が漂っているのがとてもいいんだよね。

美味しいビールを気のおけない友達をおしゃべりしながら楽しむ…最高だよなあ…。

そんなことを思いながら、シティに戻るバスに乗った。