オーストラリアで兵糧攻めよ
「ちょっとちょっと!大変なことがあった!」
もとさんからの電話。
こっちに来てから大変なことがごろごろあって、またか!と思いつつ、今度はどんな大変なことなんだろうとドキドキして尋ねると
「ねずみ、がでた!」
「えっ?えーーーーーーーー!」
「どれくらいの大きさ?」
「何色?」
「どんなん?」
たぶん、小さくて、茶色?灰色?、1色じゃなかったと思うけど、ようわからん、もう・・・(息も絶え絶え)
ねずみなんて見たこともないもとさん。ショックが大きすぎて固まってしまい、何が何だかよくわからなくなったらしい。
それでも順を追って聞いていくと、どうやら大きな隙間があるキッチンの下の収納スペースから飛び出してきたようで、冷蔵庫の下に走り込み、あろう事か、そのまま行方不明とのこと。
もとさんはとりあえず捕獲するための網ならぬ小箱を探し、ネットで探したねずみが嫌がるとされる周波数を流して、私が帰るまで万が一のためにスタンバッていたらしい。
うーん、これは困った・・・
ちょうどバイトから家に戻ってきたとき、大家さんのパブロ(私たちは陰でパブちゃんと呼んでいる)がいた。
話は少しそれるが、私たちはグラニーフラットという、パブちゃんの敷地内にある離れのようなところに住んでいる。名前はいい感じだが、私は小屋、と呼んでいるのだが、ベッドが1つ、簡単なキッチンとシャワー&トイレがついている。屋根がトタンなので少しの雨でも警報出てるよね?っていう大雨に聞こえるし(夜中だと目が覚める)、猫がとことこ屋根を歩く音や鳥がたったったっと軽快にこばしる音も聞こえて愉快な小屋なのである。
そのパブちゃんに早速、ねずみが出たことを訴える。
「ラットが出たみたい!!!」
パブちゃんは「?」
私「ラットよ、ラット!」→手で耳を作ってみせる。
「おー、マウス!」
そうだった、マウスが断然わかりやすいやん。なぜにマウスより先にラットが出たか私にも不明。よく自分にも不明なことが起こるのでいつもの事だが。
とりあえずパブちゃんに、どうしたらいい?と相談すると
「ここには2種類のマウスがいて、ひとつは普通のマウス、でもう1つは小さなカンガルーみたいにぴょんぴょん飛び跳ねるオーストラリア固有のマウスなんだわ。オーストラリアのマウスは国がプロテクトしてるから、見つけたらどこかに逃してあげないといけないんだわ。どっちかわかる?」
もとさんに聞くと、飛び跳ねてなかった気がするけど、とにかくわからん!とのことだったため、パブちゃんと3人で相談してとりあえず様子を見ることになった。
「とりあえず、彼が飢えたら出ていくと思うから、シリアルとかも容器に入れて餌になるものを断とう!」というパブちゃん大将の兵糧攻め作戦を採ることとなった。
シリアルどころか一切合切を冷蔵庫に詰め込む。パブちゃんが冷蔵庫を買い替えたタイミングでお下がりをもらっていたため、この小屋に不釣り合いなくらい大きい冷蔵庫があってほんとによかった。
「今、この小屋には私たち2人とどちら様かが1匹・・・」
飛び跳ねるかわいいマウスなら正直見てみたい。一緒に暮らしてもいい気もする。だけど普通のマウスだったら・・・もとさんと2人で固まりそう。どうかこの際、元気に飛び跳ねてはくれまいか。
いずれにしてもマウス君たち、夜行性らしいので今から寝るの、ちょっと緊張。兵糧攻め作戦、早々に功を奏すことを切に祈りつつ、おやすみなさい。