耳の穴について。

ピアスを開けるとなんだか心が強くなった気がした。何かに耐えられている気がした。
私には狂ったようにピアスを開けていた時期がある。たしか総数は20個ほど。
血だらけになって開けたこともある。灰色だった日々を彩るように鮮血で上書きするように。

でも結局のところ現実は甘美な痛みに相反するように厳しかった。どうにもならなかった。どうにもできなかった。強くなった気でいてしまった。全てをかなぐり捨ててしまった。当時組んでいたバンドも、あの子への思いも、エフェクターも、学歴も、日常も。
文章を書くたびに思い出す。嫌いだと言われたこと、クラスメイトの視線、首に巻きつけたシールドの感触、初めてピアスを開けた時のあの気持ちの悪さ。
瞼を落とすと自分が、もう引き返せないね。なんて言ってくる。どうしたらよかった?私は一体どこで間違えたんだろう。考えていたら1日、また1日と時間が溶けていく。


最近、バンドのダイバーを支えていたらピアスが弾け飛んだ。支えをなくしたピアスホールは案外すぐに塞がって、私の心はそれよりも早く塞がっていた。割とそういう物なんだろう。ピアスなんてそんなものだ。なくてもなんとかなる。お守りみたいなものなんだと気づいたよ。私はもうピアスがなくても大丈夫なくらい周りの人に助けられて、周りの人に優しくしてもらって、傷つけられた分その傷を癒されて、だから私もあなた達に精一杯の優しさを使おうと思えるよ。ありがとう。

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