文系予備知識ゼロの私が理解したビジネスマンが今知っておくべき「ウイルス」の生命科学的構造
5/30Peatix/日経COMEMOのイベントで、分子生物学者で起業家の高橋祥子さんと生命科学と人類史的な観点で新型コロナの構造と文脈について対談を行いました。
ここでは、その時使用したスライドを用いてより詳細に解説します。
まとめるにあたっては、
先の高橋祥子さんや、臨床免疫学の帝京大学の萩野昇先生
に様々な素朴な質問をするなど、監修の協力を得ました。(部分について)
また、一部スライドの分類の図に間違いがあり、訂正しました。さらに本文の内容において、その分類の詳細が主題ではないので、シンプルに生物と無生物の分類と生物の3ドメインに修正しました。訂正しお詫びします。
1.ウイルスはアルゴリズム
まずは、新型コロナウイルス(COVID-19)の様な「ウイルス」について。
今回、我々は(少なくとも私は)、自分がいかに一個の「か弱い生命体」であるかを強烈に意識させられた。治療薬がなく、ワクチンの開発にまだまだ時間がかかるたった一つの感染症に怯え、生活スタイルを変えざるを得ない自分を発見した。その原因「ウイルス」とは何者か?
ウイルスが死滅とか暴れるとか表現される。
また、宿主を殺すと自分も死ぬのに何故強毒化するのかとか、今回のウイルスは無症状で若者等が出歩き感染が広がることで自らを増殖させられる、そういう意味では「賢い」ウイルスだ、等、
生物の様に表現される。
ただ、ウイルスとは細胞を持たない無生物であり、遺伝子(主にRNA)=アルゴリズムのみような存在。ここで私が静的なデータではなく、動的なアルゴリズムと表現しているのは、寄主に様々な変化を起こすという事と、自らもどんどん変化していく存在だからである。
その存在は、寄主が存在して始めて自らを増殖させ拡散することが可能となる。
ウイルス自身に全く意思はない。何も考えてない。生物に感染し増殖する。その際に寄主の様々な生物としての機能/遺伝のスイッチをランダムに押しまくり、寄主の体内で反応が起こさせる。
短期間で感染爆発するとウイルスが強毒化するといわれるのは、短期間の感染拡大においては、先のスイッチが多数押され、様々な患者症状が現れる。短期間で様々な遺伝スイッチが押された体内反応の中で、強く認識される現象が器官が機能不全を起こして死に至るということなのだと推測している。
遡ってそもそも生命とは、「遺伝子によって自己複製を行い、自らエネルギー得る仕組み(細胞)を持つ」存在。
徐々に自続的に進化する能力を持つ化学システムとも定義されている(NASA採用)
そういう意味で細胞を持たないウイルスは無生物である。但し、寄主に感染すると増殖を行うなど生物的な動きをするようにみえるため、生物と無生物の間の存在と一部の研究者が主張する所以だ。
ウイルスは意思を持たないアルゴリズム。それはCPUや、コンピュータソフトウェアの様にただ存在し演算し機能する。人間に不都合な攻撃を起こすソフトウェアを期せずしてウイルスと呼ぶが、(マルウェア開発者はさておき)コンピュータウイルスそのものには攻撃の意思も悪意もないのと同じだ。
2.生命の進化に大きな役割を果たしてきた可能性
そういう純粋にアルゴリズムだけの存在だからこそ、生命にとって感染暴露といったマイナスにだけでもなく、プラスに働くこともある。
以前から私はダーウィンの進化論の適者生存は理解できるが、突然変異の理論だけは腹落ちしなかった。長い適者生存活動の結果、選択の淘汰圧を生き延び最適化したはずの個体に何故突然変異が起きるのか、生物にとっての動機づけが良くみえなかったのだ。
それがウイルスの水平伝播(生物間感染)を前提にすると理解できる。
我々が生きている世界は、生命科学的にはアフター/ウイズコロナ(After/ With Corona)を超えたウィズウイルス(Always With Virus)の状態であったし、今後もあり続ける。
まずは、一つの生命としての自分を自覚し、ウイルスと、そして全ての生物と共生し、共に進化していく。
その貴重な機会が今、与えられているのだと思う。
---------
ウイルスの水平伝播(生物間感染)を前提として進化について、それら過去のウイルスが、病原体として以外に果たした役割、ウイルスや病原菌の数などなど、より詳細について後半有償エリアで追加スライドで説明してますので、これからの「ウィズコロナ」「ウィズウイルス」の時代についてビジネスマンとして基本的なことを理解したい方は知りたい方は参考まで。
(これとセットでビジネスマンの知っておくべき感染症の歴史と人類普遍のSDGsの課題を後日掲載予定)
参考図書:
「ウイルスと地球生命」山内一也
「ウイルスは生きている」中屋敷均
ここから先は
¥ 390
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?