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【「子どものはたらく」はどうつくる?】ガチの研究だったことにようやく気づいた最終報告書。

皆様、最終報告書作成お疲れ様でした!✨

いやぁ、研究を続けて数ヶ月。そして最終報告書の形にしようとしてびっくり。恐ろしく長い。定義から何から、本当に自分のやりたいことは「研究」だったんだなと改めて思いました。

2021年11月30日23:59までに投稿はできたものの、研究報告を皆さんに「伝える」という形のためのものに仕上げきれなかったことに悔いが残ります。

今回、この瞬間を迎えて気づいたこと。それは、この研究はきっと今後の人生で僕がずっと考え続けていく内容になるんだろうなということ。そして、こうした研究をしていくのなら、その研究の時間を生活の中で常に一定時間割かなければ形にはできないということです。

目の前の妻、子ども、関わりのある子ども達や若者、仕事、遊び、「今目の前でやらなきゃ逃してしまう。」そういうことは常に流れ続けています。僕は、そういうものを大事にする人生を送りたい。そうして、研究は少しずつ後回しになり、完結に至りませんでした。

けれど、「まさに今」という緊急度が高くなくとも、僕にとってこの研究はとても大切なものです。研究について調べ、実践し、発信し、まとめる。この時間をどう毎日の中に組み込んで、流れて後回しにしないように続けるか。それを今後考えていこうと思います。

以下、現時点での最終報告です。

【⑴実験の目的】


子ども(0〜18歳まで、特に15歳までの個人)に現在社会的に開かれていない「はたらく(労働)」機会を、どうしたら安全で学びにつながる形で開くことができるかを検証する。それによって、子どものライフデザインの選択肢を増やし、大人と子どもが関わり学びあう社会のきっかけをつくることを目的としています。

【⑵実験の背景】

「なんで子どもは働けないんだろう。子どもだから提供できる価値があるはずだし、子ども達自身にとっても多くを学べるはずなのに」

その疑問が実験の出発点です。


大学を卒業後、僕自身は様々なキャリアを経てきました。民間のホテル運営会社で5年、高校国語教師を4年、主夫を2年、Webライター・こどものキャリアコンサルタントとして2年。その中で常に模索し続けているのが、豊かな人生を織り上げるための『キャリアデザイン』の方法でした。

その中で出会った理論がサニー・ハンセンの統合的ライフプランニング理論です。人生を織り上げる4つの要素「労働」「家庭」「余暇」「学習」を挙げ、それを1つのものとしてつなげていくとても魅力的な理論です。僕自身、全年齢の日本人向けに「はたらく」「くらす」「あそぶ」「まなぶ」とその4つを置き換えて理論を活用しています。

高校教師として子ども達の進路に関わり、自身の子どもや小学生の子ども達の生活やキャリアについて考えるようになって、ふと冒頭の疑問が湧いてきました。人生の四大要素の一つであるはずなのに、なぜそれは年齢によって区切られるのか。

中学校卒業までは、わが国ではほぼはたらくことができないものと認識されている。四大要素の一つを欠いたまま十五年間を過ごす。そして、社会に出たら急に後から出てきた「はたらく」が主役のようになる。そこにバランスの悪さを感じました。

夢を持つこと、社会とつながりを持つことが大切だとわかっていながら、子ども達がじかにはたらいて社会と関わることをなぜ避けるのか。はたらくことで社会や対価について考え、活動を通して学びや喜び」を得て、自分が確かにこの社会に貢献していると思わせてくれるものでもあるのに。

「くらし(家庭)」「あそび(余暇)」の重要性は昨今大人も子どもも見直されつつある現代において、こどもの「はたらく(労働)」だけは見直されていない。でも、子どもに「はたらく」を開くことによって、子どもはもちろん、大人の側も学べるのではないかと仮説を立てるに至りました。

2020年に個人で実験したことで仮説は正しいと確信し、今回新しい働き方LABの研究員に応募することにしました。

【⑶子どもの「はたらく」の定義】

・はたらく
・Child lavor
・Child exploitation
・Child work
・Child creative work


【⑷実験で検証したいと思っていたこと】

子どもに「はたらく」の機会を提供するには、どういう条件下でなら可能かを探りたいと考えていました。

当初は、法律やルール面に関しての意識は高くはなく、コミュニティの方と協力して実際にプロジェクトを行いたいと考えていた。しかし、研究員への運営の方からの説明や、コミュニティ内のメンバーの方とお話しする中で、子どもを守る枠組づくりを徹底して行う必要があると感じました。

そこで考えた検証したい条件が以下の3点です。

①児童労働や労働搾取にならないために絶対に押さえておく条件
②ライフバランスを守った上で、教育効果をもたらすための条件
③関わる大人にも学びをもたらす条件


本来子どもの活動ですから①②のみで十分です。しかし、③を大事にしたいのは、関わる大人にとって学びの少ない活動ならば、持続可能なものとはなっていかないのではないかと考えたからです。
子どもと関わることは大人の学びになりうるし、社会をもっと豊かにするのではないかとも思っています。また、大人も得るものがあるということは、こどもが社会に対して参画し、影響を与えている、こども自身が社会を創造する側に回れているということなのではとも。

①②③を検証することで、こども達の生活の中に「はたらく」という素晴らしい機会が開かれた世界と、それを楽しむ大人がいっぱいいる社会につながっていく最初の一歩がつくれるのではないか。

【⑸研究活動の概要】


・研究当初のスケジュール
6月-8月
①これまでの活動のふりかえりを元にした仮説を立てる
②児童労働やこどもの仕事に関する先行研究、文献を読みまとめる
③児童労働とこどもの仕事(Child work)と大人とこどもの仕事(Child creative work)の仮定義、枠組みを作る
④実施パターンの作成
⑤個別レポートの作成
・報酬の形態
・依頼主は誰か
・関係する大人は誰か
・期間

----分析したいこと----
①手伝いではないか
②児童労働になっていないか(こどもの学びや暮らしを阻害していないか)
③Child workになっているか(こどもの学びにつながっているか)
④Child creative workになっているか(大人も関わって学びが生まれているか)

9月10月11月
⑥保護者や海外在住の方の経験談や情報・アイディア・各パターンでの実践協力者を募る。
 1.コーディネートするためのネットワークの構築(ローカル/オンライン双方)
 2.活動を希望する児童・保護者の募集(年長〜小・中学生をイメージ)
 3.実際のこどもの仕事を実施、サポート
自身とコミュニティの力を借りながら活動を実践する。
⑦個別レポートを作成する。
⑧報告データを元に、一つ一つのchildworkを検証する。
 1.child workを成立させる最低限必要なもの
 2.child creative workを成立させるのに最低限必要なものを分析する。
⑨結論をまとめるまた、child creative workにどのような形態が創りうるか今後の可能性も指し示す。

・実施した内容
6月・7月・8月
①これまでの活動を元にした仮説を立てる
②他の研究員の方と意見交換をする
③児童労働や手伝いに関する先行研究、子どもの権利条約、労働基準法を読み、まとめる
④「こどものはたらくマトリクス」を作成-児童労働・搾取・Childwork・Child creativework
 それぞれの基準を作成する
⑤こどもの権利条約と労働基準法を元に、Childworkのルール・枠組を作成
⑥こどもの権利条約を元に、おとなの仕事とChildwork、お手伝いの違いをまとめ、「Child work」のとはどのようなものか、関わり方や目指すもの、考え方をまとめた
⑦実施パターンを作成したものの、今回の実験では自分の家庭より広げることはリスクが高いと判断。「家庭教育」としての「こどものはたらく」のみに絞ることとした。
⑧個別レポートを作成した。

9月・10月・11月
⑨対象を広げず、自分の子どもだけにとどめ、作成した基準の中で週1回程度子どもの主体的意志で活動を進めた。実施プロジェクトの回数は計8回
⑩個別レポートを元に検証を行った。
⑪Twitterやnoteで発信を行い、研究報告書も公開しコミュニティ内で再度意見交換会を行った。
⑫実際に自らの家庭で3ヶ月実施することで気づいたことをまとめた。

【⑹結論・根拠・気づき】

・結論
Child creative workは、
①「子どものはたらく」という安全な枠組の中でのみ生まれる。
②大人の「子どもの権利と発達に合わせた関わり」の中でのみ生まれる。
③そのなかで、こどもが主体的に活動をすることで生まれる。

・根拠
①について
この枠組の中で行わなければ、それは国際条約・法律により禁止されている児童労働、搾取に転じる恐れがあり、子どもをリスクから守れていない状態になる。児童労働をさせている、搾取をしている多くは親であるという事実がある。それだけ客観的になれないもの。「このぐらいなら大丈夫」ではなく、しっかりと安全を確保できるルールの中行う必要がある。この点を強調せずに、効果ばかりを謳えば各地で児童労働を助長してしまう可能性もあり大変危険である。この枠組の外で実験を行うことは許されないと考えたので、実験はしていない。

②について
基準の中で行えばChild workとして子どもにとって学びを得られる活動にはなる。しかし、依頼した大人が結果のみを想定して、過程で関わらなければ、大人の中での学びは生まれない。また、「子どもの権利と発達に合わせた」という点を欠くと、まだ発達的に準備のできていない子どもに無理な活動を強いることになり、かえってマイナスの効果になってしまう可能性があるため。暴言や子どもの意見表明を妨げて、児童労働に転じてしまう恐れがある。

③について
こどもが主体的に活動して、その子なりの考えで動かなければ、全ては大人の想定内になる。子どもの学びにはなるかもしれないが、大人も学んでいるという状態にはならない。また「しごとをつくる」という感覚を双方が得られず、「すでにあるしごとのやり方をまなぶ」という職業訓練的な内容になる。これを日常的に行うのは幼児・学童期には不適切であろうと思われる。

・気づき
「はたらく」という点においても重要なのが、「あそぶ」「まなぶ」と共通する「主体的・能動的な関わりであるかどうか」だったことに驚いた。しかし、世界で児童労働が禁止され、現在もなおこうした取り組みが少ないのもうなずけた。それだけ、なし得る条件が難しく、リスクがあるからだ。しかし、こうしたリスクを退ける観点をはっきりさせていくことは、児童労働を防ぎ、その上で子ども達の生活の中に新たなまなびを生み、大人とこどもが新しい社会を創っていくための種になると感じた。

【⑺研究に関する考察・これから】


・具体的な成果、働き方への影響
「こどものはたらく」の定義、基準を作成することができた。
「家庭教育」という枠組の中で、得られるメリットをみつけ、まとめることができた。
「職業」という捉え方で仕事を見ず「プロジェクト」「マイクロワーク」という観点で仕事を分解して見ることができるようになった(大人が)
報酬を要求することに対して引け目があったが、子どもとのやりとりを行うことで「権利」であるし、対話して決めていくべきものだと腑に落ちた(大人が)。

・考え方・価値観の変化
子ども自身の意見の表明、権利に対する考え方など、こどものみならず「その人」を大切にする考え方がわかってきた。
自身の研究が社会に与える影響、他の方から見るとどのような点に不安を感じるかをしることができた。


・今後どうしていきたいか
①今回は「森のようちえん」という主体的に考え、対話し、自分達の居場所をつくっていく教育を受けている自分の子どもと、フリーランスでクライアントワークに従事する親である自分によって行われた実験である。そのため、親和性が非常に高かったが、他の家庭で行えるようにしなくては、この仮説は実証されないし、研究の意義がない。

②この取り組みは非常に子どもと関わる時間が必要になる。経済的・時間的にそういった余裕がない家庭は多く、そういった家庭の子どもにこそ、この教育は必要かもしれない。地域教育、社会教育という枠組に広げて、持続可能なものにしていくにはどうしたらよいかを考えいきたい。

③今回作成した基準が本当に正しいか、より良いルールや枠組はないかも検証していく必要がある。

これら3つの点を押さえて、実験を続けていきたい。


【⑻全体振り返り】

・研究員として活動したことに関する振り返り

参加して良かった。研究を始めて直面したのは、この研究が子どもにもたらしかねない「リスク」であり、危険から子どもを守るためにつくられた「法律」「条約」であった。これは、一人家庭で行っているだけであれば、このことには思い至らなかった。他の研究員の方にシェアし、意見交換する場であったからこそ、超えなくてはいけない壁だった。

ルールや定義を明確にする作業は遅々として進まなかった。コロナ禍によって、得られるはずだった機会も失われた。しかし、これはこの活動を進めようとすれば、必ず直面する課題なのだと思う。つまり、保護者は多忙であり、「こどものはたらく」という所に時間をかけて進めることはなかなかできないという現実であり、コロナ禍の現在、直接会ってコミュニケーションをとることも行いづらいのだということ。多忙であっても、こども達や保護者にこの機会が得られるようにするには。また、直接会わなくても機会を確保するには。そうしたことを考えていかなければ、現実に社会をより良くしていくことに寄与する活動にはなりえないと思う。

自分自身の価値観とは違う方々と意見交換ができたのが、大きかった。独りよがりなものでなく、真に社会に、子ども達にとって良いこととは何なのか。どんなことに他の方は不安になるのか、子どもに求めているのか、触れることができた。本当は規模を大きく、他のお子さんを巻き込んで実験がしたかったが、安全な枠組が完成していない中ではそんなことはできるはずもない。もちろんわが子に対しても。「子どもが関わる以上、やってみるだけではすまない。まず安全を確保する枠組づくりをできる限り行うべきだ」ということが身に染みた。研究を地に足がついたものにできたのは、本当に研究員コミュニティとメンバーの皆さんのおかげ。ありがとう。


【おわりに】

いやぁ、終わらなかったです。「諦めずに完成させる!」と思ったのに、できなかった。最後の日でも、目の前の優先順位が高いものが僕の中で勝ってしまいました。

他の方の報告書を眺めて「凄いなぁ」と、今深く感じています。同じように目の前に沢山の優先順位の高いことがありながら、しっかり研究の時間を確保していた。その「つづける」という回路。他の研究員の方々が示してくださったことが、僕にとっての大きなヒントになりそうです。

研究員として一区切りついた、11月30日。そして迎えた12月1日。今日から僕は、研究を生活の中で「つづける」ことをどう作っていけるかな。そして、僕はどう研究員の皆さんに感謝や価値を返しているかな。

今日からまた頑張ります♪

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