2021.7-8月
【青色】
告白の返事を待っている。君のブルーハワイは溶けきっている
胸骨はクラゲのように動きます水中である夜空の中で
ブルーグレーの空かき抱き髪結ぶ鮮やかな青い爪をして
いる
【夏祭り】
後先を考えすぎて空返事カップから揚げのつまようじは一本
こぶしひとつよりも広めの抜き襟と赤いネイルにAirPods真白
行き場のない花火玉のこと重ねてる窓の外では真夜の雨ごうごう
【移動中にて】
結局は縮尺だろう。ビル街は小さくなって凝縮してる
関係性を希薄にしたいこともある。ダイソーとかに薄め液ある?
人のいた痕跡全て消えるのを見るのが好きだレストランの片付け
この雲は下からどんな風だとか想像してる。機内の蜘蛛も
橙の灯る手水舎境内にポツリ使用禁止の柄杓と共に
【お題詠各種】
「瞼」
首のしわひとつひとつを愛おしくただ撫でるならふるえる瞼
「百合の花」
包まれてゆるやかな死の香りするきみの毛布は百合の花束
「彗星」
彗星のようだ溶けては尾を引いて部屋中きみの匂いだらけだ
「鶯」
なんにでも正論ばかりねこの前も「あれはメジロ」と正してきたね
「アネモネ」
「アネモネの語源は風」と聞いたけどきみの香水だけが残った
「夏の終わり」
8月31日 イルカプールには歓声と蝉の最期の一鳴きがある
ボツボツと蝉が数匹死んでいて死を孕むのは晩夏のコンクリ