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広島旅行記
行きの夜行バスでこれを書いていますが、出発から30分、車内は既に地獄の様相を呈しています。
先刻八重洲の駐車場を出発したバスは乗務員の眠気を誘うアナウンスを挟みつつ滞りなく海老名SAに到着し、程なく消灯を迎えようとしていました。しかし、旅にトラブルはつきものです。そう簡単に寝かせてはもらえません。
隣に座っている乗客が突然カバンからPCを取り出し、鬼の形相で相席食堂を視聴する一部始終を私がどんな気持ちで眺めていたのか、皆さんには想像もつかないと思います。
いいえ、ここまでなら私も覚悟していました。今回が人生初の夜行バス利用となる私ですが、光害に関しては想定内ですし、何より私自身もこうしてスマホを使ってこの記事を書いています。この程度で気が滅入ったりはしません。
しかし、想定外の出来事が大きく分けて2つ、発生したとなれば話は別です。
想定外のひとつは、先に触れた隣の乗客が靴を脱いだこと。
そしてもうひとつは、
その足が人間離れした異臭を放っていること。
私が思うに、これは由々しき事態です。ドライバー決死の安全運転も虚しく、その悪臭で乗客が死に至ることも覚悟しなければなりません。
或いは、人間離れした悪臭を放つ隣の乗客は、本当に人間ではなく、例えばクマである可能性があります。その場合私が真っ先に襲われるのはもちろん、乗客乗務員全員が無事に生きては帰れないでしょう。
いずれにせよ、これはもはや公害です。四足歩行をして、肺呼吸なども行う公害。いや、臭いのは隣の彼ではなく、彼の足なのかもしれません。しかしそんな事は今関係ありません。
大学で交渉学の講義を受講している私は、毅然とした態度で対話による解決を試み、
ることはせず
負けじと靴を脱ぎ、さらにYシャツを、ズボンを、果てには下着まで身に着けるものすべてを脱ぎ捨て圧巻のスピードで全裸を完成させました。
ここで問題です。
裸の男と、裸足の男は、どちらがより牢屋に近いでしょうか。
この問いについて、私と皆さんの意見はおおよそ一致しているものと思われます。つまりこのままでは、私は広島の土を踏むことなく豚箱へ送り込まれるでしょう。
今からでも入れる保険をご存知の方はご一報いただたけますと幸いです。