都市木造は なぜ求められているのか、なぜ造れるようになったのか、社会活動はどう変わるのか
『都市木造の世界 ~ビルディングランドスケープのみる中大規模木造建築の最先端~』Vo.1
ビルディングランドスケープでは、自分たちで中大規模木造建築を設計する傍ら、様々な団体や法人から依頼を受け、中大規模木造建築についてのビデオを企画、撮影、編集してきました。
中大規模木造建築、その中でも多層の構造を持ち、都市部でも建築可能な防耐火性能をもった建築を「都市木造」と呼びます。
地球規模でも環境意識の高まりへの応答、そしてそれぞれの地域の環境や地場産業としての林業を持続していくためには、中大規模木造建築が大切だと言われます。
そのようなことは直観的には反論する人はいないかもしれませんが、なぜ求められているのか、なぜそれが可能になったのかを整理して語ることは意外に難しいのかもしれません。
これまで制作してきた中から、5つのビデオを選び、そのようなもっとも重要な基本について、ご紹介したいと思います。
中大規模木造建築のいま
日本には寺社建築にみられるような面積的にあるいは体積的に大規模な木造建築の歴史、五重塔のような高層木造建築の歴史、あるいは天守閣のような多層木造建築の歴史があります。
そのような意味で現代の中大規模木造建築の隆盛を歴史の上に位置付けることも可能ですが、現代的な耐震性能を備える建築であること、あるいは過去の木造建築にはなかった防耐火性能をもった木造建築が可能になったことを考えると、現代の中大規模木造建築はこれまでの歴史上の建築とは全く異なる次元の建築となっているといえます。
中大規模木造建築はなぜ造られなくなったのか、どのようにまた造られるようになってきたのか
第二次世界大戦前の資材不足の中で大きな空間を木造でつくろうという取り組み、そしてそれを可能にする西欧の技術が取り入れられました。
そして災害や戦災を経験して都市の不燃化が図られる中で「木造禁止」の時代を迎えます。
しかし、そのような中で、日本が経済的に再生しアメリカと伍するよう地位を確立する中で、外圧も含めて、日本でも木を使った建築をつくることが求められるようになります。
そして、それを後押しするような法改正が行われていきます。
中大規模木造建築を可能にした技術と基準の整備、そして担い手の広がり
1980年代には木造によるドームなどの大空間建設のブームが起こりました。
その後、法律の改正などもあり、木造は多層化の時代を迎えます。
そして地域における林業の進行や森林や河川をむすんだ流域の環境への意識の高まり、そして地球規模の環境意識の高まりによって、木造建築へ取り組む担い手が大きくひろがりました。
そのような中で、現在の中大規模木造建築の隆盛があります。
「SDGs」「ESG投資」「責任投資原則」「ウェルビーイング」 中大規模木造建築をめぐる、経済のさまざまなキーワード
中大規模木造建築が「環境に良い」ということは、建物を建てる施主にとって、そしてそれを提案する設計者や施工者にとって、できればその方が良い、というものから、そうしなければ建物を建てられない、という条件に変わりつつあります。
それは、そのような環境への配慮がされているかどうかが、経済を循環させるお金の流れの根本に組み込まれてきているからです。
「金融向け炭素会計パートナーシップ」「座礁資産」「グリーンビルディング」 どのような建築が求められるかが変わってきている
ビルを建設するとして、そこに入居する企業の企業活動自体に脱炭素などの環境配慮が求められ、報告を求められる現在、ビルの入居者にとって環境に配慮した建築であることは大きな基準となってきています。
その影響は海外などの先進的な投資家を相手とする大企業だけでなく、地方銀行の融資などを通じて中小の企業の行動をも変えつつあります。
現在は大丈夫であっても、将来「座礁資産」となる建築をいまさら作るのか。
大きな変化が求められています。
これまでビルディングランドスケープが制作してきた中大規模木造建築に関するビデオはYouTubeの再生リスト「都市木造の世界 ~ビルディングランドスケープのみる中大規模木造建築の最先端~」にまとめてあります。
ぜひご覧ください。