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TOMORROW NEVER WAITS


そのドーナツ盤レコードの
邦題名の下には英語表記で
Tomorrow never waitsとあった。
「急げ!若者」
 は英訳するとこうなるのかぁ!カッコいい!!
と単純にカンドウした
中学3年の夏。

フォーリーブスという60~70年代のアイドルグループが、その最盛期をちょっと過ぎたあたりに出したシングル盤と、そして同名の主演映画
「急げ!若者」。
私はこれを封切りの日(確か夏休みの初日)に、友達と渋谷の映画館に早朝から並んで入れ替え無しで3回見た。
(昔の映画館ではこういうことが出来たのだな…)

それ以来50年近く1度も見ることがなかったのに、今でもおぼろげにシーンが浮かんでくるのは、1回より連続3回の方がやっぱり単純に脳裏への焼き付き方が違ったよねぇ、と思う。その何年か後に見たイタリア映画「道」もそうだったように。

そして映画の中身といっしょに微かに覚えているのは、
3回目の上映のあと夕方6時頃にフォーリーブスの4人が舞台挨拶にやって来て、周りの黄色い歓声の坩堝に呑まれてぼーっとしていた私は、隣の席から舞台の推しへ向かって普通に叫ぶ友達のMさんに急に促されるまま、あまり黄色くもない自らの声を1度だけ上げてみるという、すごく貴重な体験をしたこと。
きゃぁ…(少しカスれた)

こんなことを最初に思い出したのは、90年代に男闘呼組の映画「ロックよ静かに流れよ」を見て筋書きが「急げ!若者」に似てるな、いいな〜テレビで見れるなんて、そういえばあの映画はもう見られないのかなあ…と思った頃で、
テレビでも1度も放映されず、ましてやDVDなど(VHSすら)夢のまた夢、J映画の中でもあれほど幻な映画はないんじゃないかとずっと諦めていた。
ていうか、まさかJ事務所いくらなんでも無かったことにしていませんよね…?東宝に残っていますよね。それとも大人の事情とかまだあるのですか…などと独り言ちてはいたが…。

その後2000年代になってフォーリーブスが30数年ぶりで再結成した時に何度か単館でリバイバル上映があったとか、そんなこと全然知らなかったので完全にもう乗り遅れていたと思ってた。
そんな折に、リクエストでポイントを上げ上位に入ったら上映候補に立ち上がれるというドリパスという最後の砦?

の400番代くらいに「急げ!若者」がしがみついているのを見つけた。
ここからのし上がればもしかしたら見られるかもしれない!という一縷の望みを託して毎日ポチポチ投票した(1人1日に4票いれられる)。

この作品への登録人数は少なかったけれど全国から殊勝なみなさんがマメに頑張ってランキングを推し上げ、1年余りで上映候補に入ったが、
しかしそこから上映が実現するまでに3年8ヶ月もかかった。
その間にジャニー氏もメリー氏もそして映画監督の小谷承靖氏までもが亡くなり、しかもコロナ禍という壁も立ちはだかり、私は半分諦めかけていた。もう一生「急げ!若者」は見られないのかもしれないと。
それが今年になってまさかの上映決定。ドリパスは忘れた頃にやって来る…。

思いつくまま長々と書いてきたけど、それでつまり何が言いたいのかというと、

明日は待ってはくれない。
「急げよ急げ、生きてるうちに…」
と(歌詞の通り)願い続けて半ば諦めかけていた夢が幻とならずに間に合ったわけです。自分の生きてるうちに。
ああ、長いスパンだったな。

映画冒頭から、おぼろげな記憶と繋がったシーンが動き出して50年分の時間が一気に縮まった。ああ、みんな若い。こんなゴミゴミしている東京、、この海はお台場あたり?ストーリーにはツッコミどころもままあるけど、、
こんな爽やかで濃い、王道の青春映画だったんだね。
もう若者なんて誰もいないよ観客席にも。スクリーンの中にしか。
でも、
映画って本当にいいものですね。
しみじみそう思いながら、もうこの世にもいない2人のメンバーと2人のジュニアと、俳優さん方と監督さんに向けてスクリーンに拍手を贈った。