61歳の食卓(4)こども食堂のために考えるレシピ♪百合根と海老のかき揚げ♪
こども食堂のお手伝いに参加するようになってから、築地で見慣れた食材が、輝いて見え始めたから不思議だ。
季節に合わせてレシピを考える。考えながら市場を歩くと、食材の方から「わたしはいかが?」とメッセージを投げかけてくれる。海老屋さんの前を通ったときもそうだった。そうだ、1月は海老を使ってお正月を祝う主菜にしよう…。むきえびは生の状態では灰色だが、加熱すると鮮やかな紅白の模様が浮き出る。まず、紅い食材が決まった。
この紅色に、真っ白な百合根を合えたら、ハレの日らしい一品になるに違いない。百合根は日常食には登場しない。私も築地の八百屋さんで初めて手にとった時、どんな料理を作ったら良いのか、思いもつかなかった。まるで球根。というより球根そのもので、「植えたら芽が出て、きれいなユリの花が咲くわよ」と、女将さんに言われ、冗談かと思ったら「本当よ」と咲いた写真を見せてくれた。この真白な球根から、どうしてオレンジ色の大ぶりの百合の花が咲くのだろう。植物である野菜の不思議である。
当初は百合根を摺りつぶして団子状に丸め、海老を載せて蒸すなど、凝った調理法も考えたが、こども食堂では手間がかかりすぎるので、かき揚げにすることに。衣にくぐらせて、ばらけないように苦労しながら揚げた。これが、思う以上にボリュームたっぷりで、華やいだ仕上がりになった。こどもたちは、プリッとした海老とホクホクとした百合根の食感のコントラストを楽しんだようだ。またひとつ、お正月の定番メニューが出来上がった。
子どもたちは、コロナ禍のさなか2年の時を過ごし、黙食にすっかり馴染んでいる。落とした箸などを台所に持ってくる場合などは、瞬時にマスクを装着する。それが正しいか否かで行動するのではなく、体が覚えて即座に反応するのだ。
自分がその年頃だったころ、1960〜70年代だが、食卓は常にワアワアと騒ぐ場所だったし、子供たちは床に落ちた箸をそのまま拾って使っていたなと、環境の激変に改めて驚かされている。