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【三猫物語】<その22> やばい!ついに病気か?

「そら」も「ナメコ」も子猫からうちにいて、とくに不調はなく、ワクチン接種以外のことで、病院に行くことはなかった。

「とら吉」は、保護したときに成猫だったから、年齢不詳。その時点で、少なくとも6歳以上と言われたので、まあ「そら」「ナメコ」よりも5~10歳は年長だろうと思われる。

ちなみに、「とら吉」だと言いにくいので、いつしか呼び名は「とら」になった。つまり、「ナミ」は「ナメコ」に、「とら吉」は「とら」になったのである。「そら」は「そら」だけれど。

しっぽ、気になるぅ!


「とら」の猫エイズ陽性については、とくべつそれによる症状が出ることはなく、とても元気にしていた。他猫といっしょの空間で暮らしても、それで感染するリスクはなさそうだった。最初に隔離しなければ・・と考えたのは、心配のしすぎだったと反省した。”りんご猫”でも、ぜんぜんふつうに暮らせることがわかった。

とはいえ、いちばん年長の「とら」が、最初に体調の異常を来したのは、むべなるかなであった。あるとき、尿に血が混じっているのを見つけたのだ。白い紙砂が、ピンク色に染まっていた。

あれ?っと思って、トイレに入ったとき観察していると、どうも排尿に難があるようだ。

落ち着かずにソワソワしているし、しゃがんで排尿しようとすると痛いのだろう、悲痛な声を出したりする。

「はあ、どうしたかね。」
「そうねえ、こりゃ、病院だねえ。」

・・・というわけで、さっそく「とら」は、佛川動物病院へゆくことに。

さいわい「とら」は、猫のくせに、キャリーケースに入れられるのを、さして嫌がらない。ワンコのように、お出かけとあらば、喜び勇んで自分から入るというわけでは、もちろんない。けれども、気配を感じて逃げ回るとか、ケースに入れられるのに抵抗するとかは、ほとんどない。閉じ込められると、しばらく、ニャゴニャゴと抗議の声は出している。とはいえ、ふだんの大声から比べると、ずいぶん遠慮がちな声だし、すぐに諦めて静かになる。

赤く染まった猫砂を容器に入れて、佛川動物病院へ到着。

「じゃあ、尿検査をしましょう」と先生。

猫の尿検査って、どうやるのか?と思っていると、先生が下腹部あたりを触って「尿がた溜まっていそうなので、大丈夫かな」と。

シャーレのようなものを取り出し、先生が下腹部をギュッと押すと、尿が出て来た。なんだかマジックを見せられたような感じ。さすがだなあ・・と感心する。

とら


検査の結果は、「石が出てますねえ」だった。
「はあ?石、ですか」
「ええ、ストルバイトですね。尿がアルカリになることで起こります」
「はあ。どうすれば・・・」
「尿のphを下げる食事療法ですね。療法食は、うちで扱ってますから・・」
「じゃあ、お願いします」

というわけで、ロイヤルカナンのユリナリーS/O (pHコントロール)・・・値段にビックリ!・・・と、消炎剤を渡されて、帰って来た。

なんでも、ごはんに含まれるマグネシウムの量を減らさないといけないらしい。「水を飲ませること!ヨーグルトや乳製品は良くないです!」先生には、そうも言われた。

最悪は、尿道が詰るかもしれない・・・そりゃたいへんだ・・・ということで、療法食は高いけれど仕方ない、値段の問題ではないと観念した。しかし、水を飲ませるというのは、どうしたものか?

「はい、水!」と、目の前に水皿を置けば飲んでくれる・・・というわけにはいかない。

「水、飲んだ方がいいよ!」と、説得したら飲んでもらえる・・・わけではない。

ときどき水を飲んでいるのを目撃はするけれど、家にいない時間も長いので、どのくらいの頻度で飲んでいるかは、なかなか把握できない。

そこで、食事のときには、必ずスープを飲ませる作戦にした。ウェット・フードだけでも、水分補給にはなるだろうが、あえて水またはぬるま湯を足して、スープ状にしたものを飲ませるのだ。
これだと、ちゃんと飲んでいることが確認できる。

しばらくして、排尿の痛みは消えたようで、血尿も目視では確認できなくなった。

治ったかどうかは、また尿検査をしなければならない。採取2時間以内の尿をもってきてもらえれば、本人は受診しなくてもいいということで、病院からは採尿のシリンダー(注射器)を渡されていた。

ただ、これが、そうカンタンにできるものではない。トイレには砂があるので、尿はすぐ吸収される。砂を減らせば・・・と先生は言ったけれど、どうもそれではうまくいかない。ネットなどでは、猫が排尿のポーズをとったら、すかざす容器を尻の下に差し入れて尿をキャッチするとか書いてある。そんなこと、じっさいに出来るものか?

もちろん、プロではないので、先生のように、手で膀胱を圧迫して排尿させるなんてことはできない。

けっきょく、自宅での採尿作戦は、功を奏せず。仕方がないので、また本人を連れて、佛川動物病院へ。前回同様、先生に採尿してもらった。石は確認できなかったので、まあ、事なきを得たわけだ。

その後も、食事療法は、けっこうちゃんと続けていた。けれども、療法食は、高額なくせに、たぶん美味しくないのだろう、あまり喜んで食べない。同じ症状が出ることはなかったし、だんだんと曖昧になってしまって、いまは普通のドライ・フードになった。

ウェット・スープは、喜んで食べるから継続している。三頭とも、スープは、食後のデザートとして習慣化してしまった。いまさら止めると・・・たぶん、暴動になるだろう。

食物というのは、なかなか不思議だ。化学的には栄養補給源なのだろうが、生命と食物の関係は、そんな単純なものではない。人間もそうだけれど、猫だって、身体にいいからという理由だけでは、継続はしないものだ。


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