“香り”の記憶
ボクは、いくつかの感覚とともに、急に鮮明に記憶が呼び起こされる瞬間がたくさんある。そのときの感情や心の温度も、考えたことまでも思い起こされることさえある。
特に、嗅覚と聴覚は、ボクにこれまでたくさんの記憶を思い出させてきた。
例えば、梅雨の時期の雨の香りは、小学校の下駄箱から湿気で濡れてツルツル滑る薄暗い廊下のシーンを思い出すし、教会の平和の賛歌は兄と過ごしたかけがえのない時間をハッキリと思い出させてくれる。
さて、
今日は仕事の後、特に予定もなかったので久々に近くの川沿いをランニングすることにしたわけで。
何となく温い空気ではあったけど、走り出したらかなりコンディションもよく、おそらく数ヶ月前に比べて前へ進む推進力が向上してる気もして気分が良く、風が気持ちよかった。
川沿いはかなりきれいに整備されていて、きれいな芝生が広がっている。走り出してすぐに川沿いに座り込む3人の青年たちの姿が見えた。
たぶん仕事を終えてのんびりしているのだろう。東南アジア系の人たちかな。話してる内容は聞こえなかったけど、仲良さそうにタバコをくわえながら川を眺めていた。
彼らのタバコの香り。
足元に広がる芝生の緑の香り。
突然ボクに何かの記憶を思い起こさせたんだ。
それは、小学生の頃、あちこちで試合をしたときの香り。当時は何の香りかわからなかったし、特に気にもしてないというか、試合に行くと当たり前の香りだったから、そんなもんだと思っていたのだと思う。
あー…芝生とタバコの香りが混じり合ったときの香りだったんだ。
試合会場の風景、雰囲気…パーッと記憶の扉が開いて。懐かしい。これは…マリノスカップかな…?
それとも…?
懐かしいなぁという思いと同時に、今のボクはタバコはよくないよなぁとか思ってしまったり。
ボクはタバコの煙が苦手で、咳が止まらなくなっちゃうから、自分も吸わないんだけど、わりと周りの指導者は吸ってる人多いよなぁ。
そんなことより、
また1つボクの記憶が呼び起こされた。
この感覚はけっこう好き。
大切にしたいボクの中に眠る記憶。
今度は“音”の記憶が呼び起こされたら、ここに記録として残しておこうかな。