”課題の先にあるものはなんだろう” (SXLP受講生第4期生インタビュー①)
Sports X Leaders Program(以下、SXLP)第4期がスタートしてはや1ヶ月。Phase2が終了となりました。ここまでの受講を終えた感想を、受講生である善福真凪(ぜんぷくまなぎ)さんにお聞きしました。(インタビューは11月10日実施)
ーー善福さんのこれまでのスポーツとの関わりを教えて下さい。
高校まではオリンピックを目指して競技中心の生活を送っていました。でも世界選手権国内選考会というチャンスを目前に大きな怪我をしてしまい、リハビリに時間を要しました。復帰したのち、また立て続けに大きな怪我をしてしまいました。その後、結果としてドクターストップで競技の道が絶たれ、突然、現役生活を終えるという日がやってきてしまいました。
その日から、今後のことを考えるのはとても難しい時間でした。スポーツのない人生をどうしていくか、約1ヶ月ずっと考えました。そこから考え方が変わっていきました。
その後、全くスポーツに関わらない時間を長く過ごしてきました。違う世界での経験を蓄積し、あらためてスポーツの良さを感じました。そして、「これからは若い世代に恩返しする」という気持ちとなり、競技は異なりますがスポーツ界に戻ってきました。
現役生活を振り返ると、体操は個人競技でしたし、家族やコーチ、学校の先生からも期待してもらっていたので、誰にも相談できない環境でした。競技を辞めて10年以上、自分にできること、やりたいことを悩み続けてきました。今思えば相談できる人や周りになにか違う環境があればもっと早く進めただんじゃないかと思ったんです。
そういった経験から、アスリートにとって気持ちの区切りがいいタイミングでなにか適切な助けができないかなと考えるようになりました。私の経験から誰かの役に立てればと思っています。
ーー最近の具体的な活動内容は。
今はJリーガーを中心に、スポーツ選手のキャリアのプロデュースをしています。選手それぞれの魅力、強み、やりたいことをつなげて、継続できるプロジェクトにする。そのために、現役中から「選手として、個人として、この先どんなふうに生きていきたいか」と考えてもらったり、そのために何ができるかを一緒に考えたりして、自分の時間を活かした活動のお手伝いをしています。
鈴木大輔選手のサポート事例
元Jリーガー杉山新さん×レアルマドリード企画のサポート事例
ーーSports X Leaders Programとの出会い
2021年上半期、スポーツビジネスのあるアカデミーに通っていました。そこで一緒に受講していた方がSXLPを3期生として受講していました。その方のSNSで「この1年での最高の学びがあった」と見かけました。私の中では、「あの方が言うなら」と興味が湧きました。
ウェブサイトを確認していると、その後4期の募集が開始されていました。募集要項も何回もチェックし、これはやってみたいと感じました。
申し込むにあたり、英語のレクチャーは正直なところ迷いがありました。苦手意識はありましたね。(苦笑)ただ性格的には、海外に飛び出すのは性に合っているかもとも思います。英語のハードルが大変ですが、スポーツの世界なのだからスポーツの業界の用語からマスターしていけば、なんとかいけるという気もしています。
また、先程申し上げた、きっかけとなった方から第3期のグループワークの活動として「スポーツ選手のキャリアについて聞かせてほしい」と依頼があり、私がインタビューを受けました。そんな機会もありSXLPに興味を持ちました。
ーーSports X Leaders Programのメンバーたちとのコミュニケーションは
9月に始まり、ここまで(11月時点)はオンラインのみです。もうそろそろリアルが始まると聞いています。
SXLPのアルムナイの先輩に関しては、みなさんいろんな期の人がまたがってサポートしていて、仲がいいという印象を感じています。スポーツ界に戻ってきつつも私はサッカー界に知り合いがいない状況で活動を始めていたので、こうしてスポーツ界という共通点で様々な活動をしている仲間たちと出会い、スポーツという切り口で新しいチームに入れたという楽しみを感じています。
同期は個性あふれ、みなさん熱心ですね。一つの話が始まるとずっといろんな視点で意見したりアドバイスが飛び交います。みんなでディスカッションしていると、いつも前向きな展開が生まれそうな雰囲気を感じています。
講師の皆さんはあの手この手でサポートしてくれます。早くリアルでお会いしたいですね。同期の皆さんとも早く会いたいです。
ーーSports X Leaders Programの内容はいかがですか
Phase1はとても面白かったです。自分の個性だと思うのですが、物事を俯瞰で多角的にみるというよりも細かいことに集中没頭しやすいんです。システムデザイン思考という切り口を知ったことで、いろんな視点で取り組もうと考えるようになりました。課題そのものだけに焦点を当てるのではなく、状況を拡げて観てみようという意識が芽生えてきた。まだ教えてもらったフレームワークやシステムデザイン思考そのものはが使いこなせてはいないかもしれません。それでも、今までの視点よりは広い目線や課題との向き合い方を意識しようとしています。
Phase2の英語は苦労しましたが、先生の講義や資料をスマホアプリで翻訳したり、単語を調べたりしながら、四苦八苦しています。興味のある分野だからこそ、意欲を持てば少しずつわかるようになってくるものだと感じています。
ーーシステムシンキングを活用できているエピソードはありますか
人から相談や悩みを受けるときに、話を聞きながら「課題の先にあるものはなんだろう」と、視野を広げながら聞くようになりました。求められたアドバイスをすぐに答えるのではなく、まずは課題をどう捉えたらいいかとか、そもそもその方は答えを求めているのかも含め、まずは即答しないで、状況の中でどんな対応をしたらいいかを考えるようになりました。「一拍置く」という感じですかね。
一つエピソードがあります。私は私立高校でスポーツ教育専攻という授業を持っており、週1日授業を担当しています。高校生に授業をすると、多くの子は真面目なのですが、中には伏せて寝る子がいます。それまでは「なんで寝ちゃうんだろう」「私の話がつまらないのかな」とただ反省の毎日でした。私の頭の中に「背筋伸ばしてちゃんと聞くというのが授業だ」と、生真面目で、押し付けがましいところもあったかもしれません。
そこで、Phase1を学んでから生徒にとって「この授業でなにをもたらすと一年間意味があるんだろうか」と考えるようになり、1年間全体のカリキュラムも意識するようになりました。例えば講義を全く行わないワークだけの授業とか、自分たちで資料をもとに課題から考えて解決策を導き出す授業とかもしてみました。そうすると不思議に、伏せて寝ていた子が一緒に参加するようになったんです。授業を持って2年目になりますが、ようやく1回の授業のことを「全体の中での一コマ」と捉え、アレンジできるようになってきたと思います。
これはシステムデザインを学んだからこそおきてきた変化の一例かもしれません。
ーー現役アスリートと接していて見えてくる課題
突き詰めると、選手個人の課題が生まれたのは環境や教育の影響は間違いなくあります。システム的に見れば、その選手が変わっても、システムとしての課題はずっと続きます。それらは個人の問題ではありません。同じ課題が続いていると見えてきた中で、社会全体の環境や教育のしくみまで自分が着手できるわけではないので、全体の中で、いま自分が着手できるところはここ、と感じられるようになってきています。先を見据えて課題を捉えていく必要性を感じながら取り組めています。
選手個人の課題を解決、改善していくために、環境や教育のしくみも含めた全体像をイメージしながら、個別対応をしていきたいです。
スポーツの特性もあります。例えば、サッカーの良さとして捉えていることが、一方で選手個々の人生においては、課題につながる側面がある点について考える必要もあります。視野を広げ、視座を高く、その上で、ミクロの視点でもイメージしていくことを念頭において、課題の向き合い方を考えています。いまは感覚的にですが、そういった意識が芽生えてきたかなと感じています。そういった意識を持ちながら活動を続けて、その延長上で環境が変わっていけばいいなと思っています。
ーーここからはPhase3に入っていきますね
いまちょうどグループ分けをしています。(編集注:取材日は11月中旬)
グループごとのテーマがなんとなく決まってきている状態です。自分はキャリアのチームでやろうと思っています。「アスリートのキャリアに課題があるよね」という共通意識はあります。
一旦課題意識を持ってやって、個々に持っている課題に落とし込んでいくか、アウトプットを誰かの課題に落とし込んでいくかを考えている途中です。
他のグループを聞いていて思ったのは、キャリアのグループは、きれいに行き過ぎているかもと感じました。皆さんが課題を解決していく中で、テクニックだったりを使いこなすのがキャリアチームには上手な人が多いです。フレームワークを使いこなすのが上手。それによってきれいに物事が進んでいる気もします。
もう一方のグループはモヤモヤに包まれていて、対照的です。
システムデザイン思考を捉えたときに、モヤモヤした方がいいと言われました。どの段階でモヤモヤにぶつかるのかなと、興味津々です。
ーーこの後の楽しみ
SXLPを受講するようになってから、見えないところをよりいっそう想像するようになりました。ひいては、感情的にならなくなりました。いい意味で焦らなくなったといいますか。
私自身の活動はニッチなんですけど、全体感を考えるようになりました。
最近、埼玉県スポーツ推進審議会の審議委員に就任し、活動が始まりました。行政がやることには時間がかかるという印象を持っています。県民の皆さんに平等に機会提供をし、環境を整えるのにはどうしても時間がかるだろうなと。ただ、見えない人たちの立場を想像し、尊重しながらシステムデザインを駆使し平和に課題を解決できるようにしていけたらいいなと思っています。
(取材・構成:SXLP1期/太田光俊)
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