【3期レポート#2 Team Dream Job】「中央競技団体(NF)への提言」:NFが社会の変化に適応できる組織に変わるために
Sports X Leaders Program(以下、SXLP)5期の募集を6月27日(月)より開始しました。
★募集要項はこちら!
各々がどんな問いを立て、システム思考を用いて議論やワークをし、最終的なアウトプットをしたのか、ぜひご覧ください。※本原稿はSXLP3期終了直後に執筆した内容です。
2013年9月7日、国際オリンピック委員会(IOC)は2020年夏季五輪の開催地に東京を選んだ。東京での開催は1964年以来、56年ぶり2度目の開催になる。選手を派遣する各競技団体(以下NF)は自国開催での金メダル獲得を目指し、選手強化に力を注ぎ、国も2020 年東京大会の開催を契機に、自治体やNF等の各主体と連携したスポーツの成長産業化を推進するなどスポーツに大きな期待が向けられている。
一方、同2013年4月25日、日本体育協会(現日本スポーツ協会)、日本オリンピック委員会、日本障害者スポーツ協会、全国高等学校体育連盟および日本中学校体育連盟の5団体は、「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」を採択する。これは、前年2012年に起きたロンドン五輪の柔道日本女子代表ら15選手が指導陣による暴力やパワーハラスメントを告発した問題や大阪桜宮高校の体罰による生徒の自殺事件などを皮切りに、スポーツ界における「体罰」が社会的な問題となったことが契機にある。以後、スポーツ界では度々不祥事や不正に関する問題が取り沙汰され、2019年に策定されたスポーツガバナンスコードがこの問題に対する危機感を物語っている。
我々は今回、スポーツ界の光と影、その両面に深く関与しているNFという組織で起こっている現状や課題について分析することにした。
グループのメンバー構成は、以下3名である。
NF職員
元IF職員で現在はフリー
会社員
中央競技団体(NF)が根本的に解決するべき課題とは
一般的にNFに求められる役割は、「勝利」「普及」「資金」、この3つに分類される。この3つの役割を好循環させることがスポーツの発展には不可欠であるのだが、現状では、国際大会で勝たなければ普及も資金も生まれないという状態にあり、勝利至上主義の体質から中々抜け出せずにいることが課題としてある。
この課題に関して国も同様の考えを示しており、スポーツ庁は中央競技団体の求められる役割の変化として、
「これまでは競技力を強化し、国際大会で結果を出せば、スポーツをする・みる・ささえる人が増え、収益も安定すると考えられてきた。しかし、今後は競技成績に頼るだけではなく、戦略的な普及マーケティングにより得た収益を競技力強化やガバナンス強化に再投資することにより好循環をもたらすことが重要だ」
と示している。
この考え方に基づき、各競技団体もスポーツ庁の支援や事業を活用しながら取り組みを行っているが、実際には、短期的な取り組みで終了してしまっていたり、形だけのもので中身が機能していなかったりとあまりうまくいっていない現状があることがわかってきた。我々は、根本的に解決しないといけない別の課題があるのではないかと考えた。
我々はNFが好循環になれない要因を外部と内部の両側面にあると考えた。
まず外部要因として、結局のところ、金メダルが狙えるような競技力が高い種目になればお金が多くもらえるという仕組みが存在しているということだ。スポーツ庁は2019年3月27日に東京重点支援競技として、オリンピック競技ではSランク5競技、Aランク10競技を指定し、ランクに応じた金銭的、医科学的支援を行っている。
次に内部要因として、NF組織の成り立ち自体が、歴史的に見ても技術力・競技力中心の組織形態からスタートし現在に至っているということだ。
これらのことから、外部、内部それぞれからがんじがらめにされ、競技者中心の勝利至上主義という根深い問題が出来上がっていると考えた。
補助金を必要としない自立組織になる為には
ではこの問題を解決し、NFが成長していくためには今後どうしていけばよいのだろうか。我々はNFの成長シナリオを「社会の変化に対応できる組織となり、2030年、補助金を必要としない自立したNFになること」とした。
その理由は、社会の変化に対応できる組織になることで、技術力・競技力中心の組織形態になっている内的要因を解消し、そしてその結果、補助金を必要しない自立したNFになることで、競技力が高ければお金を多くもらえるという外的要因を解消できると考えたからだ。
社会の変化に対応できる組織とは、例えば国内大会が中心であった1900年代前半から1964年の東京オリンピックを契機に国際大会が国内でも多数開催されるようになったことから、OTTやオウンドメディアの活用、またグローバル人材の採用など時代の変化に適応できていることを指す。東京オリンピック・パラリンピックが行われる2021年以降、このような時代の変化に適応できるNFか、そうではないかによって大きく成長の度合いが変わってくる過渡期に我々は立っている。
では、時代の変化に適応できるNFになるにはどうすれば良いのか。これまでの説明でも、3つの役割を好循環させることがNFの発展につながると述べてきたが、それに加え、時代はものすごいスピードで進んでおり、NFに求められる役割は更に高度化し複雑化していると考えている。
競技力強化や普及、マーケティング、ガバナンスに加え、AIなどのテクノロジーや情報データ、メディア広報、社会貢献などがNFの成長に欠かせないものになりつつある。今後求められるNFの役割としては、この高度化・複雑化する機能を有機的に連動させることで、より多くの人にスポーツの価値を伝えることができるようになる必要がある。
自立した組織になる為の2つの提言
競技者中心の組織形態の中、どのように他の専門性を持つ人材と競技の専門家を有機的に連動させるか、その打ち手として2つ施策を提案する。
1つ目は、スポーツをコミュニケーションとして活用する方法だ。これはスポーツの持つコミュニケーションとしての価値をツールとしてNFの事務局機能の真ん中に置き、普段の業務とは異なる環境で実際にスポーツをプレイする場を作るということで、競技者には指導者としての役割を与え、その他のメンバーはプレーヤーとしてスポーツを楽しむことができる。幸いにもNFにはスポーツを行うために必要な要素が揃っている。競技者中心である課題をここでは逆に強みとして活かすことができると考える。業務を行う上での関係性では意識できていなかったことがスポーツを通じたコミュニケーションによって理解が進むのではないかと考えた。
2つ目の施策は、NFの役割において、必要とされる専門性に合った人材をどのように最適配置するかということだが、すでに競技経験者で満たされている競技力強化、普及を除いた役割に専門性が必要とされていると考える。この点については現状の理事会・評議員会の役割を変えていくことも合わせて必要である。
ただ、この理事会・評議員会の役割を見直すということ自体に非常に大きな課題がある。そこで必要になってくるのが組織を引っ張るリーダーの存在が挙げられる。
我々は5つのNFを抽出し、各団体の専務理事職に付いている人物の競技歴、戦績、指導歴、前役職、IF役職、前職を調査した。NFにおいて業務執行の最高意思決定者であり、常勤役員として日々の業務にも触れている専務理事の役割はNF内において非常に大きいものがある。調査の結果、3つのNFの専務理事いわゆる強化の専門家が専務理事職に付いていた。
しかしながら、他の2つの団体は上記3つの団体と異なり、競技歴もなく、指導歴もない人物であった。あるのは、前職でのマーケティングやメディアでの経験であった。
我々はNFに必要とされる専門性に合った人材の最適配置を推進するにあたり、多様な人材が専務理事となり組織を引っ張ることが推進力を生む要因になると考えた。
まとめると、我々の考えるNFの課題は、
今の社会情勢の中でNFに求められる多様な役割において、競技力強化の部分しか満たさせておらず、その他に必要とされる専門性が不足しているということ
それを解決する手段が、
コミュニケーションツールの活用
人材の適切配置
以上の通り、これからのNFに求められる要件と可能性についての議論をまとめた。
SXLPの受講を検討している方々へ
最後に、我々のグループでは、「Sports X Leaders ProgramからNFのリーダーとなる人材が生まれること」を1つのNFが目指す形として、今後も検討を続けていきます。
これから受講を検討されている方で、スポーツ組織やスポーツ経営人材に課題を感じている方、そしてそれを何とかして解決したいと、もがいている方がいましたら、是非同じ志を持つ仲間として、思い切って飛び込んできてほしいなと思います。お待ちしています!
Sports X Leaders Program 5期 参加者募集中!
■概要
▼Phase1(基礎知識の学習)
オリエンテーション:7/31(日)
講義日:8/6(土)、8/20(土)、8/27(土)、9/3(土)、9/10(土)、9/24(土)、10/1(土)
特別講義(プレインイングリッシュ)
日程は受講開始後に調整(任意参加)
▼Phase 2 <日本、海外スポーツ業界で働くゲストスピーカー講義>
10/15(土)、10/22(土)、10/29(土)、11/5(土)、11/12(土)、11/19(土)
▼Phase 3<海外実地研修>
9月末~11月に1週間程度で調整中
▼Phase 4 <グループワーク>
11/20(日) ~ 2/24(金)
最終発表会
2/25(土)
■会場
原則zoomによるオンライン講義、対面講義は都内で開催予定
■参加費
50,000円(税別)(海外研修等を実施する場合は別途参加者負担になります。)
■対象者
既にスポーツ業界で活躍中、もしくは活躍できる潜在能力がある方
■応募期間
2022年6月27日(土)~7月10日(日)
■応募方法
下記HPより、詳細をご確認の上ご応募ください
https://sportsxinitiative.org/recruitment2022.html
Sports X Initiative
Sports X Initiativeは、スポーツと社会の関係性をリデザインします。
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