【3期レポート#3 サイドバックス】子どもたちの瞳がきらきらするスタジアム型「Deportare X」:言葉では表せない、”スポーツが秘めている何かしらの価値”の可視化
Sports X Leaders Program(以下、SXLP)5期の募集を6月27日(月)より開始しました。
★募集要項はこちら!
各々がどんな問いを立て、システム思考を用いて議論やワークをし、最終的なアウトプットをしたのか、ぜひご覧ください。※本原稿はSXLP3期終了直後に執筆していただいた内容です。
スポーツをして得られる何とも言えない爽快感や達成感、辛さや悔しさ。さらには、本気でスポーツをしている人たちを見て得られる感動。熱い実況を通して伝わる臨場感や熱気。影の黒子として表舞台の人々を支える人の偉大さや誠実さ。言葉では表せない、「スポーツが秘めている何かしらの価値」が、時に多くの人々を動かし、感動を与えると私たちは感じていました。
記憶に新しいところでは、2019年のラグビーワールドカップが思い出されます。決して日本ではまだメジャースポーツとは言えないラグビーが、日本全土を動かしたあの出来事は、スポーツが秘めている可能性や価値の一片を垣間見ることができた事実なのではないでしょうか。
私たちはスポーツが大きな価値や可能性を秘めていることは確信しつつも、その大きな価値や可能性は具体的に何であるのかを明文化もしくは可視化することは、2020年8月までの私たちには不可能でした。でも、どうにかしてその価値や可能性の本質を展開し、社会課題解決に紐づけたい。そして、ある呼びかけのもとに5人の仲間が集いました。
「スポーツが秘める『ワクワク』で『あたりまえ』に不自由を抱く人々が夢を追いかけ、瞳をきらきら輝かせられるシステムのデザインをしてみないか。」
そんな非常に抽象的かつ素直な想いに共鳴する仲間が長い間モヤモヤを抱え続け、率直な意見をぶつけ合わせ、膨大な時間と試行錯誤を重ねてようやく生み出したのが、私たちのソリューション、「Deportare X」です。それは、リアルスポーツイベントの中で、様々なスポーツに関わる職業を体験するプログラムのことですが、なぜ、このプログラムを生み出すことになったのか。その経緯を説明します。
説明の前に、我々の5人の仲間を紹介させてください。(※所属はSXLP3期参加当時)
遠藤 洋希(株式会社ユーフォリア ユーザーサポート担当)
スポーツが秘める「ワクワク」の正体を可視化し、その価値を「あたりまえ」に不自由を抱く人々が夢追う自由を手にするために活かすシステムデザインに取り組みたく、共に同じ課題感を抱く仲間探しにSXLPを受講。
片山 祐実
菊池 やよい(某競技大会組織委委員会 観客向け広報・事業担当)
ロンドン2012大会にてJapan Consortium のローカルコーディネーターとしてオリンピックの現場に携わり、スポーツが単に競技やイベントではなく、人々や街、社会を変える力を持つことを知る。スポーツを通して、多くの人が感動し、記憶に残るような経験をつくりたい、その仲間を見つけたいという思いでSXLPを受講。
佐藤 哲史(株式会社Sports Multiply 代表 アスレティックトレーナー)
誰もがより安全、安心してスポーツを楽しみ続ける環境を作っていきたいという想いと、スポーツを医療という専門性は高いが狭い領域からでは見えない視点で見てみたいと思い、SXLPを受講。
古川 美帆(ケアプロ株式会社 看護師・保健師)
「医療の面からスポーツをささえる仕事がしたい」と思い、スポーツ看護師を目指す。スポーツ×●●に取り組む人たちとともに、スポーツ×看護の価値をじっくり考えたいという思いをきっかけにSXLPを受講。
取り組み内容
グループワークに着手するにあたり、まず私たちが行ったことは、「お互いが本当にやりたいことを知ること」です。グループワーク初回に、乾坤一擲のオフラインワークショップ(実際には対面、オンラインのミックス)を実施し、自分一人では気が付けない、「自分の本当にやりたいこと」を探り合いました。スポーツの枠にとらわれずに各メンバーが各々の人生を振り返り今日の自分と紐づけながらやりたいことをプレゼンする。それを他のメンバーが聞き本人の深層心理を突く質問を投げかけ本人が本当にやりたいことや課題と感じていることの輪郭を浮き上がらせる。そのようなプロセスを経て、自分たちが本当に取り組みたい課題を探りました。
そうして見えてきた私たちの共通の課題が、「劣等感をもつ子どもがありのままの自分を受容し、新たな自分と出会い、幸せを感じられるようになる」という仕組みでした。
次に、自分たちの問題定義を探るために、誰がいつどのようにして劣等感を抱くのかという分析に着手しました。200名弱の方々へのアンケート調査により、多くの方々は小中学生のころ、つまり学童期から思春期にかけて劣等感を抱き始めるということが明らかになりました。
また、その後のリサーチを通し、小学校中学年頃になると、劣等感を持ちやすくなり諸々の課題を抱き始める、いわゆる「9歳の壁」が存在することがわかってきました。
その結果、「劣等感を抱き始める前に、自己肯定感や自己効力感を涵養(かんよう)し、「9歳の壁」を乗り越えられる素養を身に着けるにはどうしたらよいか」ということが、私たちが取り組みたい問題であると定義しました。
その上で、自分たちの問題定義を解決するには、どのような要素が必要か、つまり、私たちは自分たちが関心を持っている小学生に対し、どのような価値を提供すべきかについて議論しました。リサーチを通してわかったことは、「9歳の壁」を乗り越える素養を身に着けるには、次の5つの要素が重要であるということでした。その5つとは、
自己肯定感の育成
自他の尊重の意識や他者への思いやり等の涵養
体験活動の実施等実社会への興味・関心を持つきっかけづくり
抽象的な思考への適応や他者の視点に対する理解
集団における役割の自覚や主体的な責任意識の育成
今回の私たちのソリューションでは、1、2、3の機能を提供し、特に「自己肯定感」、「自他の尊重の意識」、「他者への思いやり」を涵養することを提供価値とすることにしました。
上記のところから、日本の小学生がスポーツの力を通じて「自己肯定感」、「自他の尊重の意識」、「他者への思いやり」を涵養し、「9歳の壁」を乗り越える素養を身に着けられるソリューションを考えました。
その際に私たちに多くの気づきを与えてくれる参考となったのが、メキシコ発祥の子ども向けの職業体験型テーマパーク「キッザニア」でした。キッザニアでは、子供たちが楽しみながら様々な職業を体験でき、その体験を通してリアルな社会の仕組を学べます。さらには、自己肯定感の醸成も提供している点がキッザニアの特筆すべき点だと思いました。しかしながら、親にとっての待ち時間の負担がある、必ずしも子どもが憧れている職業を体験できるわけではないというキッザニアの課題も見えてきました。
調査によると、子供たちが憧れる存在、特に多くの小学生にとっての憧れの存在はスポーツ選手です。そんな憧れの存在の近くで活動し、ポジティブなフィードバックをもらえる機会があれば。また、普段触れることが少ないスポーツの「みる」、「ささえる」立場の職業を体験することで、新たな自分の一面を発見し、自己肯定感が少しでも高まれば。そんな想いから私たちが考えたのが、スタジアム型リアル職業体験、「Deportare X」です。
Deportare Xとは
子どもたちが、リアルスポーツイベントの中で、様々なスポーツに関わる職業を体験するプログラムです。
プログラムの中には、子どもたちの「自己肯定感」「自他の尊重の意識」「他者への思いやり」を育むしかけが、ちりばめられています。
また、イベント当日以外にも事前・事後のオンラインミーティングを実施することで、充実した体験プログラムを実現します。
Deportare Xの3つの特徴
1.スポーツを「ささえる」という関わり方を知る
普段はあまり知る機会の少ないスポーツを「ささえる」職業。
Deportare Xでは、1つのイベントで様々なスポーツをささえる職業を体験できます。
例えば、スポーツ栄養士というロールでは、アスリートの食事管理のサポートをします。栄養という側面から選手のパフォーマンスやコンディションを考えたり、選手から直接「ありがとう」ということばをもらうことで、他者への思いやりや自己肯定感が育まれます。
また、スポーツカメラマンでは、理想とするロールモデルをじっくり観察し、最高の瞬間を映像に収めます。それにより、観察力や瞬発力が育まれます。気分感情のポジティブな高揚に伴う身体的な変化が得られるかもしれません。
Deportare Xを通して、多様性を知り、自分の得意や好きを発見することで、子どもたちの瞳がきらきら輝きます。
2.リアルであることの面白さ
子どもたちの憧れ=ロールモデルとなるようなアスリートによってリアルな試合がおこなわれることがDeportare Xにとっては重要です。それにより子どもたちの誇りや責任感が生まれ、より瞳がきらきら輝きます。
また、スポーツの魅力のひとつに「予測不可能であること」があります。予測不可能であることによって、自然と子どもたちのチャレンジ精神が育まれます。
Deportare Xやスポーツの持つ「リアル」「スポーツ」という側面は、21世紀スキル*に含まれる4つのC(Creativity/創造性、Critical thinking/批判的思考力、Communication/コミュニケーション、Collaboration/コラボレーション)を育むのにも効果的であると私たちは考えています。
*これからの日本の教育のあり方 ─ポスト2030を見据えて─ 特定非営利活動法人 教育テスト研究センター(CRET)
3.様々なステークホルダー間で価値を交換する
Deportare Xのステークホルダーは、子ども、家族、アスリート、スポーツ関係者、地域、自治体、協賛企業、運営者など多岐に渡ります。
Deportare Xを通して、子どもたちは「自己肯定感」「自他の尊重の意識」「他者への思いやり」を涵養できます。家族は、家族間のコミュニケーションが増え、家族の思い出ができます。他にも、協賛企業にとっては企業価値や社会貢献活動を伝える場となり、選手やチームにとってはファン獲得の機会になります。
一方向ではない価値交換が行われることで、Deportare Xは成り立ちます。
Deportare Xの目指す理想像
Deportare Xでは、以下の2つの実現を目指します。
①子どもたちがDeportare Xを体験し、劣等感をポジティブに捉えられる素養を身に着けられる。
②子どもたちのおかげでスポーツ産業が発展し、スポーツの多面的な価値が人々の生活を豊かにする。
仲間を募集しています
Deportare Xのプログラム内容に興味を持ってくださった方
Deportare Xのステークホルダー当事者として関わりたいという方
「スポーツが秘める『ワクワク』で『あたりまえ』に不自由を抱く人々が夢を追いかけ、瞳をきらきら輝かせられるシステムのデザインをしよう。」ということばを聞いてジョインしたいと思ってくださった方
私たちは継続して活動を続けています。皆さんからのご連絡をお待ちしております。
SXLP受講を検討している方へ
システムデザイン思考を学び、様々な講師から学び、仲間たちとグループワークを行う。簡単にまとめると、それがSXLPですが、以上のようなワクワクをスポーツを共通項として集まった仲間たちと共有出来る時間は、きっとこれからもスポーツに関わっていく方には貴重な経験になると思います。
同期生やアルムナイと一緒に、スポーツが秘めるワクワクをSXLPで体験してみてはいかがでしょうか?
Sports X Leaders Program 5期 参加者募集中!
■概要
▼Phase1(基礎知識の学習)
オリエンテーション:7/31(日)
講義日:8/6(土)、8/20(土)、8/27(土)、9/3(土)、9/10(土)、9/24(土)、10/1(土)
特別講義(プレインイングリッシュ)
日程は受講開始後に調整(任意参加)
▼Phase 2 <日本、海外スポーツ業界で働くゲストスピーカー講義>
10/15(土)、10/22(土)、10/29(土)、11/5(土)、11/12(土)、11/19(土)
▼Phase 3<海外実地研修>
9月末~11月に1週間程度で調整中
▼Phase 4 <グループワーク>
11/20(日) ~ 2/24(金)
最終発表会
2/25(土)
■会場
原則zoomによるオンライン講義、対面講義は都内で開催予定
■参加費
50,000円(税別)(海外研修等を実施する場合は別途参加者負担になります。)
■対象者
既にスポーツ業界で活躍中、もしくは活躍できる潜在能力がある方
■応募期間
2022年6月27日(土)~7月10日(日)
■応募方法
下記HPより、詳細をご確認の上ご応募ください
https://sportsxinitiative.org/recruitment2022.html
Sports X Initiative
Sports X Initiativeは、スポーツと社会の関係性をリデザインします。https://sportsxinitiative.org/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?