見出し画像

(7)女子高生が同級生に将棋の駒の動かし方を教えたら、半年後に近畿3位になった話

(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) (21) (22) (23) (24) (25) (26) (27)

※記憶に基づいた実話だが、個人情報特定を避けてストーリーに影響がないところは改変するかもしれない。

※正確には8ヶ月後である。

3ヶ月後なう

1学期の中間試験が終わった頃だったと思うが、生徒会役員の生徒たちと、生徒会担当の先生による各部活の部長の面談があった。

部活における設備の不備や要望を短時間だが直接聞いてもらえるものだ。

将棋部における将棋が強くなる環境が必要だと思っていた私は、そこで要望する。

顧問を替えてほしい。

同席していた先生が苦笑していた。

私……というより女子……というより全国大会に出る人間が将棋部に入るまで、将棋部の顧問は年に3回程度の京都市内での大会への申し込み及び引率と、たまに現れる入部希望者への入部届や、生徒会関係の書類にハンコを押すだけの簡単なお仕事であった。

高校の先生は正規の教諭であればどこかの部の顧問をしなくてはならず、その中でほとんど仕事がない将棋部顧問は大変魅力的である。
現在の部活動顧問の負担についての報道を見れば、それは理解できる。

それが前年に私が高校選手権に出てからは、全国大会や近畿大会に泊まりがけで引率するという仕事が加わった。

だがそれだけだ。
普段の活動には顔を出さない。
将棋のルールを知っているのかもわからない。
そういう会話をする機会もない。

前年の高校選手権で私は、強豪校は顧問の先生が将棋が強く、自校の生徒に対して大変熱心に将棋のアドバイスをしていることを知った。
中には、私との対局の感想戦なのに、私を無視して自校の生徒へのアドバイスだけを行うような行きすぎた顧問もいたが。

~~おまけ話~~

そんな中、いつでも会うたびに話しかけてくれて、感想戦でも分け隔てなく接してくれた先生が2人いる。
既に文中に登場したM高の顧問H先生と、静岡県の藤枝明誠高校の加藤先生。
そういえばこの文章の(1)の頃、1999年の3月、私は藤枝明誠高校で行われた全国高校女子選抜大会の会場で、仲がよかった明誠の子から「この子、やすじ(←加藤先生)の娘さん! 桃子ちゃんっていうの!」と4歳の女の子を紹介されたのであった。
会うたびにって言っても加藤先生は全国大会でしか会わないから(大学生になってから1回偶然、東京の将棋会館で会った)通算で5~6回しか会っていないんだけど、お世話になりました。なんといっても明誠以外の子と当たったときまで感想戦後にアドバイスくれたし。
後年、上記の子にお墓参りに連れていってもらいました。

~~以上おまけ話~~

で、全国大会でうちの顧問(男性)は何をしていたか。

まず大会会場にはいない。朝から夕方までいない。
仕方がない。将棋知らないんだから。

そして他校の先生に言われた。
「スワさんの顧問の先生、いつもビール飲んでるね」

高校の全国大会は他校の選手と相部屋になるのが楽しみのひとつだが、顧問の先生方も相部屋らしい。

うちの顧問はいつもビールを飲んでいるらしい。

宴会場での食事でも、高校生が大勢いる中でビールを飲んでいた。

ちなみに、移動の新幹線でも発車と同時にビールの缶を開けた。

高2の高校選手権(鳥取県倉吉市)、高校新人戦(愛媛県松山市)、女子選抜(静岡県藤枝市)とそれが続き(近畿大会は大阪市で、顧問は来なかった)、高校3年生になる頃には「スワさんもあの顧問の先生じゃ大変だね」と他校の先生方に言われるようになった。

普段はいないので大変ではないのだが、単純に恥ずかしい。

それに、私だって将棋を教えてくれる顧問、せめて平手の練習相手になってくれる顧問がほしい。

3年間で一度も教科担当として習わなかったこともあり、私にとってはただ呑兵衛で仕事をしない先生に映った。

(いちおうフォローしておくとその教科の先生としては凄腕らしく、その教科が大好きな友人は選択科目でも受講してめちゃくちゃ尊敬していた)

私も人に強くしてもらうつもりだったから、なりふり構っていられなかった。

面談での要望はほぼそれだけで、どんな顧問がほしいか、どんなふるまいをやめてほしいか、他校の先生がどんな反応をしているかととつとつとお伝えした。

生徒会役員たちも困っていたが、同席していた担当の先生が「気持ちはわかるけど、ほかの先生もほかの部活の顧問をしているからねえ」と言い、却下になった。

というわけで、この物語には顧問は登場しない。
もう特に書かないが、どこかでビールを飲んでいると思っておいてほしい。
あ、ただ大会出場の手続きはやってくれたはず。
いや、わかっていたんですよ。顧問がそういう手続きしてくれるから大会に出場できることは。

私としては正義感と正当性を持って要望したつもりだが、いま振り返ると高校、大学の7年間は全く持って自分で自分の実力をあげようとしていなかった。

で、ここまで書いて思い出したが、(2)のBOX引っ越しはこのときに要望した気がするので、この面談自体もっと早くに行われていたかもしれない。
ストーリーに影響を与えないのでこのまま進めていく。

なお、私が卒業したあとの翌年度、顧問は別の先生に替わった。

(8に続こうとしている)

いただいたサポートは、教室・道場探訪の交通費として活用させていただきます。皆さんのサポートで、より多くの教室を紹介させてください!