課題(1)「私が好きなお店」
ライター養成講座の課題
(ここは毎回同じ文章載せます)
こちらは2008年に半年間受講していたライター養成講座の提出課題です。
講座で提出したまま15年近く眠ったままなので掲載します。
現在とは社会情勢、私自身の価値観などだいぶ異なることを前提にお読みください。
内容的に許可が必要なもの、私自身が読まれたら恥ずかしいもの以外は掲載予定です。
本文
【ワタシのこと】
ある分野に特化した駆け出しフリーライター.誰もが認めるマイペース人間.めったに仕事のない私が,仕事に行くたびに昼食に立ち寄るお店を紹介する.
【タイトル】
お味噌汁と洋食レストラン
【本文】
私は食にこだわりを持っていない.取材で宿泊した立派なホテルの,いつもとお値段が1桁違うであろうお食事をいただいたものの,解散直後に「舌を戻したい!」とマクドナルドに駆け込んだほどである.
「いつもの味がいい」
これが唯一のこだわりだろうか.だから,同じ場所に行くときは同じお店で食事をとることが多い.開拓者精神のカケラもない.
「Restaurant YOKOO」に初めて行ったのは今から2年前,ある取材の合間に先輩に連れられたときだった.横文字の店名,所狭しとワインが並べられたカウンター,昼なのに暗く,重厚な内装.私は思わず身構えた.コテコテの洋食レストランはよそよそしくて苦手なのだ.しかし同行者は先輩.付いていくしかない.私は音が鳴る床を踏みしめ,私の体には大きすぎる椅子にちょこんと腰掛けた.
先輩にメニューを差し出しながら,さかさまになっているメニューを目で追う.「0」「5」「7」「¥」…750円? 仰々しく感じていたこのお店,「本日のお料理・2品」の日替わりランチは750円だった.見た目より安い.数字だけを見て注文した.
数分後,目の前に意外なものが置かれた.それは「お味噌汁」.間違いなくお味噌汁である.
ここは洋食レストランでは?
もう一度メニューを見ると「ごはんと食べて美味しい洋食を心がけています」の一文.ごはんとくればお味噌汁.YOKOOのランチには,ごはんとお味噌汁が付いているのだ.ちなみに,おかわり自由.
当然ながらお味噌汁は温かい.暑い夏だったが,どこもかしこもクーラーが効きすぎていた.次にごはん.やはり温かい.凍りきっていた体が溶けていく感覚がする.肝心のメイン.残念ながらどんな料理だったかさえ覚えていない.食にこだわりがない私たる所以だ.
しかし記憶に残っていることがある.ごはんが温かかったこと.お味噌汁も温かかったこと.好きになれないタイプの先輩との会話が弾んだこと.
数ヶ月後,相も変わらず通っていたマクドやほか弁に飽きてきた.仕事が月に数度なので健康に影響は少ないだろうが,ジャンクフードを慌しく食べるのではリラックスできない.私は意を決しYOKOOに向かう.またもふっくらとしたごはん,具だくさんのお味噌汁が出迎えてくれた.メイン店内が暗めだと落ち着くよね.大きな椅子も,実はふかふかして居心地ええやん.
こうしてYOKOOは「いつもの味」になった.
今では大きな椅子にどっかりと腰かけ,コーヒーを片手に手帳を広げる私がいる.
(2008年6月14日)
2024年のひとこと
YOKOOは現・関西将棋会館(大阪市福島区)近くの洋食店。後に新大阪駅の新幹線駅構内で販売されているカツサンドで有名になる。そして現在は我らがパナスタ内に出店している。私は玉子サンドのほうが好き。
いまは改装して、メニューも大改造されていてここでいう750円のランチはなくなってしまった。
講座内では全員の課題を印刷して配布されて、数作講評される。この課題は「いまどき味噌汁が出る洋食屋なんていくらでもある。もっとたくさんお店に行きなさい」だった。
いまはマクドよりもホテルのディナーのほうが好きです。
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