スイス在住ママ達の起業リアルトーク!レポート2
去る10月23日(日)に、スイスラボ主催のミニシンポジウム、題して「スイス在住ママ達の起業リアルトーク!」がオンライン開催されました。
前回から、その時の模様のレポートをお届けしています。
レポート1はこちら↓
このレポート2では、ミニシンポジウムの後半の模様を、質疑応答も交えつつ、お伝えします。
家庭と仕事の両立
亜:では引き続き3つ目のお題に移りたいと思います。
私たち、日本とスイス、どちらとも家庭における女性の負担が大きい文化に居ると思います。そうした中で、いかに家族と連携しながら仕事を続けるかというのは重要だと思います。家族や夫の強力を得るために、心がけていることとか実践していることがあったら聞かせてください。
千寿:夫とよく話すことですよね。(オンラインの)カレンダーで予定を共有して「私の予定を見ておくように」という圧力をかけたり。私が仕事のときはホームオフィスにしてもらったり。
スイスでは子供たち(と夫!)がお昼ご飯に帰ってくるじゃないですか。それで仕事を中断しないといけなくて、よく主人と喧嘩になりました。そこで喧嘩をして、「私はこういうふうにしていきたから、協力してください」と具体的に言葉にして伝えるのは大事だなと思いました。
亜:気持ちを言語化してコミュニケーションをとるっていうのは大事ですよね。旦那が「異星人」のように異質であることを逆手に取って、意識的にコミュニケーションを取らないと分かり合えないことが自覚できるのは、国際結婚の強みかもしれません。
では、彩さん、お願いします。
彩:Doulaという職業は妊娠・出産に立会い、関わる職業ですから、何もかも予測不可能であることは始めから分かっていました。ですので、トレーニングを始めた時点で夫に説明をしました。「私にとって、子育ては人生の大事なプロジェクトで大きな軸だけれど、子供が育って行った後も楽しく生きていきたい。そう考えたとき、こんなビジョンでDoulaとして成長していきたい」といったようなことを伝えました。どうしても仕事と子供の世話が重なるときは、潔く彼に一任するようにしています。口は挟まない。
ただ、正直なところ、お金を稼ぎ始めると認識が変わってきます。ボランティアじゃなくて給与が発生すると、夫のほうも認識が変わってきます。
あるとき、子供を日本語学校に送ろうとした矢先にクライアントから「破水しました」という連絡がきて、急遽仕事中の夫に子供の送り迎えを頼まないといけないという一幕がありました。夫は仕事先で「自分の妻じゃないけど、出産があるので帰ります」といって退勤したらしいです。これがずっと続くわけじゃなくて、(現役時代の)今だけなので、その間は逐一コミュニケーションを取りながらお互い乗りきろうというコンセンサスを作りました。
亜:稼ぎ出して初めて分かるお互いの大変さや、考え方の変化ってありますよね。それについてもコミュニケーションを逐一取っていくの、大事ですよね。志津さん、どうですか?
志:うちも大変です。週末どっちか仕事をしていたり、夜帰ってくるのが遅かったり。そして、私仕事が好きでやりたいこともたくさんあるので、色々と詰め込んでしまうのです。詰め込んで必死にやってオーバーワークでどうしようもないときや、自分との葛藤が大きいときなど、大変さを特に感じます。自分との葛藤というのは、やりたいことがたくさんあるけど、状況を考えてセーブしないといけない時のことです。最近では、セーブすることへの葛藤も落ち着いて来ました。今ある仕事・これからやりたいことを書き出して、今できること・今のところセーブすべきことを整理するのが大きな助けになりました。
亜:やりたいことがたくさんあるのに時間は限られている中で、人生のステージによって、やりたいことの優先順序を臨機応変に変えられるようになれば、自分も辛くないし、周りも辛くないのかな、と思いました。今はできなくても、状況が変わって一年後はできるようになっているかもしれませんから。自分の状況を客観視するために紙に色々書き出す、というのも大事だなと皆さんのお話を聞いてて思いました。
行き詰まった時の対処法
亜:なかなか物事がうまく運ばないときなど、行き詰まりを感じることってあると思います。そういうときの対処法、みなさんありますか?まず、千寿子さんからお願いします。
千寿:行き詰まりに慣れてきたというか・・・(笑)。
こないだ夫に面白いことを聞かれまして。「どうしてそんなに自分に厳しいの?」と聞かれたんです。それでハッとして、これからは自分を褒めようかなと思いました。あるいは(睡眠をとても大事にしているので)寝てしまうかするようにしています。
彩:夫の言葉って、最初はイラッとするけど(笑)、よく自分のことを見てくれている人の言葉だからハッとする気づきがあるものですよね。良い風穴を開けてくれるかも。
亜:次は彩さん、いかがですか?
彩:私の場合、起業は、実は一人で事前準備するなど、孤独な作業がほとんどです。だから行き詰まったときは、無理に明るくしようとはせずに、一人で暗くしています。そのときの落ち込んだ自分を受け入れるようにしています。予定を減らして、自分の落ちているエネルギーに向き合います。
参加者さま(コメント):彩さんの正直な話に共感します。
亜:起業というと輝かしいイメージがありますけど、実は表面下では辛いことがたくさんありますよね。
彩:ええ。実はその裏に色々な葛藤や家族との対立とか、さまざまな問題がありますよね。それを飛ばしては次のステップに行けないので、気持ちに余裕を持ちながら一つ一つを経験していくというか。
20代、30代の若い方に会う機会がたくさんあるのですが、みなさんとても焦っていて。今の葛藤が後々活きると思うので、その最中にいる自分も受け入れてほしいなと思います。
亜:人と比べるとやっぱり焦っちゃうので、人とは比べずに、自分のできなさも笑えるくらいに余裕があったらいいなと思います。
それから、とにかくネットワークを広げることでしょうか。自分とは直接関わりが無いような人とも縁をつなげることによって学ぶことがあったりします。
参加者さま:彩さん、気持ちが落ちているときは、お仕事も減らしてらっしゃるんですか?収入が減ることに不安がよぎったりしませんか?
彩:収入が減ることで、自分が何を失うかを考えたとき、あまり不安になることはありません。というのも、うちでは自分が大黒柱なわけでは無いので、私の収入が減ることで明日の食事に困るわけではなし、子供たちに必要なものが買えなくなるわけではないです。ただ、ご家庭によっては、自分自身が大黒柱として働いていたりすれば、また違う状況だと思います。
千寿:私も彩さんと同じ感じです。収入が減ることで、家計の不安をするというよりも、自分の目標、なりたい自分になれないんじゃないかという不安で落ち込むことはあります。
なるべく早く落ち込みから回復しないと、とは思います。
家計の収入は夫に頼っているので。そういう人多いのかな?
亜:志津さん、今脱線してしまっているのですが元に戻って、行き詰まりの対処法、お願いします。
志:行き詰まる時って、たいてい色々仕事や家事などのタスクが重なってオーバーワークになってるときだと思うんですけど。そういう時は、ちょっとでも、30分でも時間があったら、外にでて走るなり、散歩するなり、体を動かします。そうすると、色々発散されて、考え方もクリエイティブになると思います。
それから、行き詰まっている時はいろんなことが雑になりがちなので、例えば歯磨きを長く丁寧にしたり(笑)、ご飯も少しゆっくり食べるなどして、気分転換します。衣食住を整えるように心がけたりなど、小さなことを整えるようにします。
参加者さま:千寿子さん、一般的にご自身の職業(欄)は一言で何と話されていますか? 私も実は状況が似ているのですが、スイスで一言で職業を聞かれると答えにくいです。teacher, self employedとかでしょうか?
千寿:私は、一つ一つ全部説明しながら言います。ウザいかな、と思いつつも(笑)。一言でいえたらいいんですけど。
亜:敢えて一言ではない形を取るってことですね(笑)。
人生のステージによって、仕事との折り合いの付け方も変わります
参加者さま:スイスで育児と仕事の両立ってたいへんですよね。みなさんのお子さんの年齢はどのくらいですか?
千寿:私は、息子が11歳で、娘が8歳です。小学校5年生と、2年生ですね。
亜:仕事を始めた時には、何歳くらいでしたか?
千寿:スイスに引っ越した後に仕事を始めて、一年くらい経ったところです。ということは、息子が10歳、娘が7歳でしたね。自分の母親が、仕事を120%くらいしている人で、きっと(私自身が)寂しかったのかもしれません。自分は子供が家に帰ってきたときには在宅しているようにしたいと思っています。だから、今の働き方が合ってると思います。
彩:今7歳と9歳です。働き始めたときは、4歳と5歳でした。なので、始めたときが一番しんどかったです。それで、うちの実家も千寿子さんところと同じで、母親が仕事で家にいなかったので、きっとやっぱり寂しかったんですよね。今の働き方の選択に影響していると思います。
志:うちは、上の男の子がもうすぐ7歳、下の女の子が5歳です。
亜:子供の年齢と、自分の仕事のペースって、やっぱり関係しますか?
志:私の場合、自分が体を動かして移動して、ガイドするという仕事と、ものを書くとか、手配をするという違う仕事を掛け持ちしています。なので、子供が小さすぎてガイド業ができないときは、書き物や手配の仕事をしていました。でも思い返すと、子供が小さいうちの書き物の仕事ってどうせ夜中にやっていたので、それはそれでしんどかったです。バランスが難しいかもしれません。それでも、何か活動しているほうが、自分のやりがいやモチベーションにつながって意義があると思いました。
ウチも夫が大黒柱なので、自分の仕事で収入をある程度確保しないといけないプレッシャーはありません。それよりも、やりがいのある活動をしていることに意味があると今は思っています。
以前は「収入が減る」ことにストレスを感じたりもしましたが、今は「仕事で収入を上げないと」という思い込みを手放しました。そうすると家族との時間や余裕が手に入った、という印象です。
亜:夫婦のうち、どっちが稼ぐのかも、人生のステージによってフレキシブルに変えてもいいのかなと思います。そういうとき、「チーム家族」で稼ぎ方のあり方について都度しっかり話し合えるといいですよね。
参加者さま:うち(の子供)は一歳になったばっかりですが、2人目(の出産)とか考えたら起業とかはためらいます・・・。
亜:なるほど。でも、けっこうこっちの人って「なるようになる」と気楽に構えている印象がありますよね。起業後わりとすぐに妊娠・産休に入る方のお話を聞いて、勇気があるなあと思ってしまった記憶があります。
それから、「今起業しないと」と焦る必要もないのかも。子育てに集中する時はそっちに集中して、それをマイナスに捉えなくても良いのかもしれません。
志:どんなことをやりたいのかにもよりそうですよね。
参加者さま:具体的には日本自然療法士という、いわゆるフィジカルセラピストみたいなのをはじめようと思って動きはじめています。
亜・千寿:すごい、もう動き始めてるんですね!
亜:乳飲み子を抱えて動き始めるって、ほんとうに大変なことだと思います。どうか無理をしないでください。子育てって本当にたいへんで、片手間にできるような作業ではないと思うので、むしろ子育て中は、その合間に自分ができる範囲で何かスキルアップする(例えば語学を磨くなど)期間と捉えるのもアリだと思います。
彩:子供を育てるって、人生最大のプロジェクトだと思ってるんですけれど。子育てと向き合うことで学ぶことはとても大きい。仕事や起業にも、すごく役立ってくると思います。だから、子供との時間を楽しむ期間があってもいいと思います。
参加者さま:私もまだ子供が2ヶ月なので、バタバタな毎日ですがみなさんのお話が心に染みています。それぞれやりたい事が具体的にイメージできるようになってから、実際に形にするまでどれくらい時間がかかりましたか?
千寿:私の場合、仕事を始めようと思ったとき、すでに子供が学校や幼稚園に通っていましたので、それなりに時間をとることができました。なので、だいたい半年位で実際に形にすることができました。きっと、やりたいことによって、必要な準備期間は違うんじゃないかな。ただ、今思い返しても、子育てに集中している期間、社会とのつながりが希薄になって不安を感じていたように思います。
志:出産直後当時、日本人があまり住んでいない地域に住んでいたこともあって、私も社会とのつながりがないと感じて不安になりました。ベルンに引っ越してきて人との交流も増えて、気持ちも落ち着きました。
不安を抱えたまま、一人で考え込んでも、ドツボにはまるだけ。そういうときは、気心の知れたお友達に話したりして、ストレス解消しましょう!
最後に・・・
亜:時間も押してきましたので、最後に皆さんの今後の抱負を伺いたいと思います。
千寿:「継続」でしょうか。今後も少しずつでも続けていきたいと思います。
彩:私もまったく一緒です。「継続していくこと」これが今後の目標です。
志:私は、もちろん「継続」していきたいと思うんですけど、「自分の状態を整える」ということですかね。気持ちも、身体も。整えられていると、良い状態で仕事なり準備ができたりするので。
亜:みなさん、貴重な、面白いお話を聞けて、今日は本当にありがとうございました。
志:あ!亜由子さんの目標を聞いていなかった!亜由子さんの目標は?
亜:人様の助けを最大限お借りしながら、なんとかやっていこうと思っています。自分の失敗すら楽しみながらやっていけたらな、と思います。
一同:それでは、みなさん、今日はほんとうにありがとうございました。
(了)
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