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「MEN 同じ顔の男たち」を観た

トラウマ級のラストがある!と聞いてずっと観てみたかったけど怖くていつ見よう見ようと思っていたMEN。
U-NEXTにこのタイミングで見放題配信が始まったので鑑賞してみました。

直接的ではないからこそ

この作品は皆が言っているようにほとんどメタファー(隠喩)で構成されている。
トラウマ的な映像があると聞いていたので、直接的かつグロいホラーの刺激的な映像があるのかな〜と思っていたけど思っていたけどラスト以外はずっと、これは・・・・?(こういうことか、、、、?)と視聴者がずっと考えるスタイルだった。
直接的では無いからこその考える余白、自由さもあるのでそこはとても好きだったし監督自身もそれを狙っているようなので、ちゃんと監督の中での軸はブレてなさそう。

私も一視聴者として、どこの部分に何を感じたか覚えているところだけでも書いてみる



りんごをかじるハーパー

りんご丸かじり

ハーパーがカントリーハウスに着くやいなや、庭になっているりんごを勝手に取って丸かじりする
その部分でハーパーって常識人に見えて意外と失礼なこともするのか、、、と軽い気持ちで見ていたんだけど、この物語自体がハーパー主体なので夫が悪者に見えるけれども「君がなぜ被害者のような顔をしているんだ」みたいなことを夫から言われていたことなどを思い出すと、完全に夫が100%悪でハーパーが善なんてことは無くて、ハーパーは無意識に相手を思いやれない言動をしてしまっていたのでは、、、、?と邪推してしまった。

夫のモラハラ具合は味方できないけど、、、、
女性の視点で聞いた話だけで相手を悪く捉えるのはナンセンス(フワちゃんも言っていました)

りんごには罪、や不吉の前兆みたいな意味もあるようなので前振り的にはナイス🍎


「ピアノ」弾けるの?「いいえ」

冒頭でカントリーハウスの支配人ジェフリーがハーパーに家を案内する際
優しい光が差し込む素敵な部屋にピアノがある

ジェフリー「ピアノ弾けるの?」
ハーパー「いいえ」

この会話の少し後のシーンでハーパーは、上手にピアノを弾いている。
観ている側からすると嘘をついたかのように見えるけれども
日常で質問された時にとっさに「知りません」「できません」とか言っちゃうことあるよね、、、というあるあるでもありつつ(公式サイトでも監督が、これは日常でよくあることだ。と言っていました)

もしも、「ピアノ弾けるの?」→「はい」と言った時に
「えー!弾いてみてよ」となるのを瞬間的にダルいと思って、弾けないと言ったのではないかな〜〜と思うなどした。

私自身も、あまり会話を広げたくない男性と会話をしていて色々質問されて
その後わざと会話が広がらないように無難かつ、全く面白くない解答をする時があるのでそれを思い出した。

そういえば以前Twitterでも、興味の無い男性に趣味を聞かれたら趣味ないですって答える(その趣味繋がりで次の予定誘われたくないから)等の一連の流れがちょっとバズってましたね。


もう保釈されたよ

気分転換に行ったパブには同じ顔の嫌な感じの男性しかいなかった
森で見て、庭にも侵入してきた全裸男を捕まえてくれた男性警官が
「あの男は犯罪は起こしてなかったから保釈されたよ」(台詞はうろ覚え)

あの時の絶望たるや、、、、
絶対にやばい奴なのに何もしていないからって保釈か、、、、
結局こういった被害に対して法律とか警察って全然役に立たないよな、、、という怒りが湧いてくる

森と庭で2回見たのよ!と主張するハーパーに警察は「君が2回見ただけであって、男性は見ていないかもしれない」と言う

あ〜もう何言っても話通じないんだな、これ無駄だと思う瞬間だ。

ストーカー被害なども、実害が無いと動いてくれなかったり
自意識過剰なんじゃない?笑 と被害者を嘲笑するようなことよく聞くけど
害が出たら教えて!またなにかあったら教えて!
いや次何かあってからじゃ遅いから言うてんねん
と言うブチギレ案件です。

よくこの描写をこの狭い世界で描いてくれたなとあっぱれを送りたい気持ちです。


ラストシーンの出産


おおおお、そう来たか という皆んながトラウマ級と言っていたグロいシーン
性的なことって、快楽や妖艶な部分、好奇心をくすぐるところもたくさんあるのだが、生殖にも繋がっていて、生殖って綺麗なことだけじゃない
むしろ生々しく、とても怖く残酷的で逃れられないものなのだとビジュアルで突きつけられた。

・朗らかな顔でたんぽぽの綿毛をふゎ〜っと撒き散らすMEN
・ハーパーに君もこういうこと好きだろ?と言わんばかりの顔で性的な行為に及びそうになるMEN
・悩めるハーパーを助けるような姿勢をとりつつ太ももを触るMEN
・遊ぶのを断られたらクソ女!と罵倒するMEN
・マリリンモンローのような仮面をつけて残虐な遊びをしているMEN

楽しく、快楽を得られる上澄みだけを掬い取るような男性たち
昔お笑い芸人さんがテレビでお子さんが産まれたようで、おめでとうございます!という祝いコメントに「僕はちょっと気持ち良いことしただけですから」 というのを思い出してしまった。

しかしこの作品では、本来快楽だけを得て種をたくさん撒く男性が妊娠・出産をする。そして同じ男たちが数珠繋ぎで生まれてくる。

なんとも強いメッセージ性とビジュアル…

私からすると、前時代的な有害男性も老いていつか死ぬんだけど
有害な男性性 自体は男性たちや男性中心の社会の中で連鎖していきどの時代どの年代でも消えることは無いのだ。というメッセージのように見てとれました。

このメッセージと出産を繋げて表現したとしたらアレックスガーランド凄すぎ…


最後の顔

最後、自殺した夫ジェームズと対話するシーン
「私に何を求めてるの?」
「愛だよ」
「そっか」

愛だよとつぶらな瞳で言うDVモラハラ夫ジェームズ
愛だよと言われて、最初(愛、、、、、はぁ、、、)と失望したような顔をするハーパー、ノコギリをさすって、、、怒りがこもったような顔 END

というジェシー・バックリーの顔からくるやるせなさ、、、、!演技力高すぎるだろ、、、!!!

この映画のレビューで後半つまらなかった、とか気持ち悪いだけだった
みたいな意見が多くて心配だったのですが、いや後半こそ監督も役者陣も真骨頂!!メッセージ性強!!という感じで、後半があったからこそ価値の高い作品になったと感じた。

正直、あの夫婦2人がなにで揉めていたのか視聴者には分からないのですが
(シンプルに性格の不一致、愛情っぽいものの不均衡、夫のモラハラ、、?)

さまざまなトラブルが重なって、もう離婚しよう、、、と辟易した末
暴力を振るわれて、自殺されて、、、の後に話してみたら愛を求めていた、、、と ああ、もうそういう解像度の低さというか、愛ってなに?愛というわけの分からない概念だけを必死に追い求めて私を苦しめていたの、、、?
という やっぱりこの人と話し合うのは無理なんだな、、と絶望

こういうことって人生で稀にありますよね、、、、
あの時の、目がかっぴらいちゃう感じを再現していて監督とジェシー・バックリーの技術に脱帽です。

観てみて

もっと早く観ておけばよかった!
劇場で観ようとしたけど都合が合わずそのままサブスクで観たけど
色んな人に観てもらって、感想を聞きたくなる作品でした


ジェシー・バックリーはどこかで観たことあるなと思ったらジュディ〜虹の彼方に〜 のマネージャーさん役だった 作品によって全然雰囲気が違うけど表情で魅せる演技がとても魅力的な役者さんですね、、、今後にも注目


こういった分かりにくい映画を出してくれるA24に感謝感謝

これだから映画体験ってやめられない!


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