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Review : "Blood,Sweat&Tearsに何が起こったのか?"

 1st 2ndアルバムは好きだったり好きな曲があったりしたが、音楽史的にはスルーだった、ブラスロックバンド #BloodSweatAndTears にまつわる映画が上映中、それも彼らのただのドキュメンタリーではなく、
「ロックバンドとして、冷戦中に初めて東欧ツアーをしたバンドBlood,Sweat & Tearsが、東欧ツアーは成功したのに帰国後どんな状況に追い込まれたのか?」というドキュメンタリーだと言う。しかも50年以上封印されていた、69年のツアーの動画も出てくると言うので見に行って来ました。

バンドのスキルは半端ないし、いい曲沢山なのに、「この出来事」が元で政治的にバッシングされてキャリアが急に収束していくという切り口は、目から鱗ではあった。

 ただ、この同時代の、オリジナルもあるが同じくカバーセンスで売れていたバンド #ThreeDogNight もあれだけヒットがあるのに、少なくとも日本ではポップ史やチャート史には出てきてもロック史では扱われていない、それと同じものをBS&Tにも個人的には感じていて、映画を観た後も変わらなかった。黒人コーラスグループ #The5thDimension も同様ですね、チャート史には出て来てもブラックミュージック史には出てこない、みたいな。

 Blood,Sweat & Tearsも改めて調べてみると、ツアー後のアルバム"3"も1位を獲得していてそこそこのシングルヒットはあるし、その後も小ヒットは続いている。普通にソフトランディングしていった印象。DJ的に今なら使えるかも?と言うジャジーな曲やファンキーな曲、ディスコ曲もある。

 この印象の原因は日本で過去絶大な影響力を持っていた音楽ジャーナリストなのかもしれないなと。ジャーナリストはどちらかと言えばポップを回避する傾向にある、ニッチなところ面白い試みをしているところを推す傾向にある。後に商業ロックを酷評したように。ただ、アメリカは広い国だし、国民性的には実はベタベタにポップが好きな傾向にある。BS&Tはジャーナリストの印象とは別に、実際は国民には一定の支持を受け続けたように見えた。

 とはいえ、キャリアが下降していったのは確かで、同時代のブラスロックバンドChicagoがキャリアを伸ばしていったのと比べると、新機軸を作っていけなかった、バンド内で急成長したソングライターがいなかった、むしろそっちの方が原因じゃなかろうか? #Chicago はデビュー当時は #RobertLamm が牽引し、中期からは #PeterCetera が牽引してAORに向かったことで生き延びた(好き嫌いは置いておいて)。

 音楽に政治を持ち込むべきか否かは、過去も現在も議論のポイントだけど、意識を持っていても持っていなくても結果的に政治の影響を受けてキャリアが変わっていってしまうことがある、と言う興味深い切り口の映画ではありました。何せ彼らは
「音楽を通して、冷戦で分断された国民同士を繋げたらいいね」
と思ってツアーをしただけなのだから。むしろ今なら美談になるはずなのに、、、

◼︎"You've Made Me So Very Happy"
この大ヒット曲は、カバーだったことを最近知りました。それも黒人のモータウンアーティスト #BrendaHolloway の1967年のスマッシュヒットシングルでした。これも今聴くといい感じだね。ヒット性を感じる仕上がりはやはりBS&Tだけどw


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