残念な音楽バー
先日の音楽旅行のある日の夜のこと、打ち上げが終わり、一人ぶらぶらしていた時のことだ。なんとなくGoogleマップで検索をして、川沿いの良さげな音楽バーに入ってみることにした。エレベータのない4階建てのビルの4階、まあ看板は悪くない感じだったから勇気を持って入ってみた。
そこはビリージョエルのライブアルバムをもじった名前の音楽バーで、入ってみると壁にそのアルバムを大きく飾ってあった。俺はハーパーソーダを頼む。横には終電を逃したという叔父さんがいて、適当に音楽話を降ってみたが、尾崎紀世彦「また逢う日まで」の話ぐらいしか話は合わない。ついでにその曲にまつわる裏話を教えてあげた。
「また逢う日まで」はオリジナルがあって、ズーニーヴーというグループが「ひとりの悲しみ」という曲として発表するも売れず、歌詞を阿久悠に書き直させて、野太い声の尾崎紀世彦に歌い直させて大ヒットしたみたいですよ
音楽通のような佇まいのマスターに「知ってますよね?」と言ったら全く知らないと言う。ついでにマスターはどんな曲が好きなのか?フェイバリットは?などをつつくと「なんでも好き」「幅広く好き」と曖昧な返事。今かかってるのはサブスクではなく、マスターのCDから作ったと思しきディスコ的な(それもチャラい系)プレイリストをかけていた。
「2000曲ぐらいは入れてますからね」とマスターは自慢げだ
うーん、、、俺のPCには9万曲ぐらいは入ってるんだが、、、てことは言わなかったし、サブスクにはしないのかも言わなかった。
で、ふと後ろをみると電子ピアノがある。
「ここでライブはやるんですか?」と聞くと
「時々シンガーの人がやってくれるんですよ」
などと言う、名前を聞いてももちろん俺は知らない、ま、それは地方だから仕方ない話で良し悪しではない。
そうこうしてるうちに「あ、あの店に顔を出したい」と思い出した俺は、一曲だけピアノを弾かせてもらってその店を去ることにした。せっかくなので店の名前にもしてるし、店に飾ってあるアルバムの中から一曲を弾いてみた。
"Summer Highland Falls~夏、ハイランドフォールズにて"
と言う曲を気持ちを込めて、美しく弾いてみた。既に軽く酔ってはいたが、まあまあいい感じには弾けた。音楽リテラシーは低そうだけど、流石に思い入れのあるアルバムの中の曲だから分かるだろうし、なんなら感動してくれるだろう。俺なりの精一杯の音楽バーへのリスペクトを込めて弾いた。
弾き終わるとそこにいたお客さんから拍手喝采をいただき、俺はマスターに聞いた。
「弾いた曲、分かりますよね?」
「え?分からないな」
、、、、
、、、、
絶句
俺よりは年上と思しきマスターが、店の名前にするぐらい愛するアルバムの中の曲なのに、ちゃんと分かるように弾いたはずなのに、分からないなんて。。。
音楽バーを装わないで欲しかった。そんなに音楽好きじゃないのかもしれない。ビリージョエルを飾っておけばいいだろぐらいだったのかもしれない。すごく残念な時間となってしまった。
当然のようにハーパーソーダ一杯でその店を後にして、行きたかった店に急いだ。夜はまだこれからだ。