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#45trio 1st album "SOUL REViEW"全曲レビュー

 SWING-O率いる #45trio (フォーティーファイブトリオ) は結成は2008年あたり、2010年にはFuji Rockやサマソニにも出たりと、それなりな活動はして来たんですが、その頃はあくまでSWING-Oのソロプロジェクト45名義でのリリースが軸で、ライブの時だけ45trioを名乗るというスタイルでした。2010年に現在のメンバー(SWING-O:key / SUNAPANNG:bass / Masahiko Kubo:drums)の布陣が完成。2014年に初めて45trio名義の7inchはリリースしましたが、それは事実上まだSWING-O自己完結作品。月日は流れて2020年から45trioでレコーディングしてリリースする活動が始まりました。2枚の7inchレコードをリリースした後、現在のレーベルと出会い、2022年から積極的にリリースして2024年現在に至ります。

 と前置きが長くなりましたが、そんな45trioが結成16年にして初めてのアルバムを配信(10.30.2024)、そしてLP(11.27.2024)をリリースしました。ありがたいことにすでに各所で売り切れが始まってます。我々は何を意識してこの作品を作ったのか?を含めて、カバー元なども紹介しつつの全曲レビューをしてみようと思います。配信でもレコードでも聴きながら読むのにちょうどいい長文になると思いますので、まずはご準備をw


"SOUL REViEW"とは?

 意味はズバリ「SOUL MUSIC再評価」ということですね。iを小文字にしたのは、その方が可愛いかな?と思っただけで深い意味はありません(笑)。自分はもちろんオリジナルも沢山作ってきたし、今もこれからも作るんですが、現在の45trioはレコードをリリースし続けるプロジェクトとして動いてるので、オリジナルをそんなに重要視してません。今のレーベル #BloomMusic に移ってからはオリジナルは一曲しかリリースしてません。でもこの"Miles To Cross"はお気に入りなのと、オープニングに向いてるので、最近のライブの定番にはしています。

 が、やはりDJ現場〜DJ的な耳を持つリスナーを相手にすることが増えて来た中、センスあるカバーを作るという方がレコードのセールスにも評判にも繋がるので、都度ミーティングをしながら、どの曲をどのように仕上げるといいか?を考えて作って来ました。タイトルにも込めた、俺の思いはこういうことです。

「DJがかけたくなる、深みのあるカバー曲にしたい」
→「そこで会話が生まれる作品にしたい」
ということです
例えば「DJ**さん、これって元は誰でしたっけ?」「DJ**さん、この曲のタイトルなんでしたっけ?」などなど。結果、俺の口や文言からでなく、その場のDJとお客さんで、なんならDJとDJで会話が生まれるような作品にしたいと。そうすることでこのジャンル、ざっくり"SOUL"といっちゃってますが、SOULの普及に繋がればいいなと。そんな思いで作ったアルバム"SOUL REViEW"、はい、やっと個別の紹介に入りますね。

A-1 "Saudade Vem Correndo" #LuizBonfa カバー

 まずはこれですね。Hip Hopグループの #Pharcyde のヒット曲"Runnin'"の元ネタを、元ネタの部分だけではなく、その原曲そのものをカバーしてみよう!というレーベルのボス #高宮永徹 さんのアイデアに乗っかってみました。これはシングルで2023年春にリリースして即完売。裏面に #DJKocoakaShimokita のeditを入れていたからというのもあるでしょう。彼はまさに我々のバージョンをサンプリングソースとして、Pharcyde的に仕上げたeditを作ってくれました。あ、それはレコードでしか聴けないやつですけどね。順番としてはまずPharcydeを聴いてみましょう。

 この、 #JayDilla がプロデュースしたトラックの元はこちらの #StanGetz & #LuizBonfa バージョンの、2:04あたりからですね。

 ただ、Stan Getzはセッション素材ぐらいの感覚でしかメロディを奏でていないので、Luiz Bonfaのオリジナルのメロディをちゃんとコピーしました。

 どうですこの距離感?1963年の作品をサンプリングした1995年の楽曲へのオマージュを2023年にリリースという時間軸。これがまた想像以上にウケまして、最近の我々のスタンダードになってますね。仕上げに我々バージョンを聴いてください。ちゃんとどちらへのリスペクトもこもってると思いますし、どちらも知らない人も普通に気持ちいい仕上がりになってると思います。

A-2 "A Little Spice" #LooseEnds のカバー

 そしてこれがまた更に想像を絶する評判を産んだ曲となったものです。これが説明すると長くなりますので覚悟してください。

 これは80年代に活躍したUKソウルグループLoose Endsのカバー、を装いながら数多のネタを織り交ぜたマニアックでしかない作品なんですが、そのマニアックさが受けたようで、それはもう俺としては大喜びでしかない。この曲に込めた暗号をあなたはいくつ分かりました?的な作品です。

 が、まずは1984年発表の原曲を聴きましょう。まさに80s UKな作品です。この、ある種捉えどころのない曲を何故アルバムタイトルにしたんでしょうねぇ?

 この曲を選んできたのはレーベル代表であり渋谷のClub BallのボスSuguru氏でした。そして彼はこのLoose Endsまんまではなく、むしろ #GangStarr remixのこちらを参考にしてほしいと言ってきました。

 お、そう来るなら、いっそこのネタを混ぜても、いやこれで始まっちゃってもいいんじゃないですか?と俺から提案したのがこちらでした。

 つまりはここも通過することになります

 であれば、これも合うんじゃないか?と今度は高宮永徹氏

結論から言うと、この"Hot Music" by #Soho を混ぜたことが大きな評判を産むことになりました。2024年5月にリリースしたシングルの裏面にも関わらず、こちらの方が評判になるとは!!!はい、答え合わせを兼ねて仕上げに聴いてみましょう。

A-3 Gee Dee #GaryDavis のカバー

 と全曲で上記のペースでは行きませんのでご安心を。こちらはもう、俺個人のチョイスで選び、セッション的に演奏したらいい感じになったので採用という流れです。

 Gary Davisの素性もよく分かりませんが、何せ2000年代に再発されてレコ屋に並んでいてかつ店で流れていた(と記憶)のが痛く気に入って購入。どれぐらいDJが知ってるのか?は全く分かりませんが、曲自体に魅力満載なのでこれはカバーがどうということじゃなくてもウケるんじゃないか?少なくとも俺がDJするときはかけたい!と思って45trio風に仕上げました。

 原曲は配信では見当たらないのでYouTubeで。

 このスペーシーなレアグルーヴな感じもいいですよね。それを我々はテンポを少し落としてMellow Hip Hopネタ風に仕上げました。どうぞ。

A-4 "Soulful Strut" piano ver. #YoungHoltUnlimited のカバー

これについてはすでに壮大なストーリーを解説済ですね。ただ、既発のシングルには未収録のピアノバージョンをアルバムには入れました。ここ一年で3バージョンもリリースしちゃったということになりますね。解説は下記をご覧ください。これだけで壮大なストーリーです。


A-5 "Inside My Love" #MinnieRiperton カバー

 SOUL~Hip Hop好きはみんな大好きミニーリパートンの"Inside My Love"、なんですが、このカバーはこのアルバムで初出なんですが、A-2"A Little Spice"並にネタてんこ盛りになってます。これ、いずれ7inchで出したいなと勝手に思ってます、が、ひとまず解説ね。まずは原曲。

 あ〜このジャケを見ると脱線したくなるので、脱線させてください。この、ミニーが撫でているライオン、これ、生きている本物なんです。しかもミニーはライオンに襲われかけたという逸話を後日(乳がんで亡くなる直前?)にこやかに話してる動画をどうぞ。

 リリースされた1975年はもちろんCGもないですからねぇ。にしてもAdventure(冒険)しすぎでしょ?

 あ、で、この45trioバージョンは原曲へのリスペクトも込めてますが、何よりもHipHopへのリスペクトが濃いバージョンです。なので、原曲の3:03あたりを聴いてくださいね。原曲の間奏の部分がHipHopシーンではサンプリングされまくっているので、原曲のイントロではなく、そこから始めているのです。これまたJay Dillaプロデュースですが、これが大好きなので、これのオマージュをイントロでしました。

 で、これはremixなので元バージョンもあるわけです。それは #BarneyKessel というギタリストの曲サンプリングなんですが、それをRhodesで弾く形で変化球オマージュに向かいます。

ついでにこの元ネタはこちらの1:36あたりからです

 というところまで決まってたときに来ました高宮さん。「俺はどうしてもこのイメージがあるんで、この流れも入れないか?」と言われたのがこちらです。 #ATribeCalledQuest  

 というHipHopオマージュを織り込みながらも、 #LeonWare 作曲の歌メロへのオマージュもきっちり入れて仕上げたのが我々のバージョンになります。どうです?これまた壮大でしょ?

B-1 "All Because Of You" #LeroyHutson カバー

 書いていて疲れました(笑)。我ながらネタをぶっ込みすぎですね。いやそのスタイルは辞めませんけど。そんな訳でストレートなインストカバーがB面の一曲目です。

 これまでどの曲も基本7inchシングル用に作ってきたので、おおよそ4分半以内に収まるようにアレンジしてきたんですが、せっかくLPを作るのだから、7inchに収まらないようなカバーもしたいなということで作ったのがこのカバーになります。こちらもいろんな形でサンプリングされてきたし、 #Freesoul のコンピなどでも知られる1975年の人気曲です。

 この曲も語りたい逸話が色々ありまして、すでにこちらのblogの方に記してます。シングル盤はLPと比べてテンポが遅い=チューニングが低いのです。

 で、結果このカバーはシングルバージョンのキーDbでやりました。アルバムバージョンを参考にするとE寄りになっちゃいますからね。

 この、大好きなメロウ歌ものをどのようにインストバージョンにすればいいか?を考えに考えて作り上げました。ストリングスの印象的なフレーズをシンセリードでやることで、また違う1970s感を出せたと思います。我ながらいいシンセソロだと思ってますしね。結果アルバムの中でも個人的にお気に入りな曲に仕上がりました。

B-2 "Mysterious Vibes" #TheBlackbyrds カバー

 こちらはBloom Musicからリリースした4枚目のシングルのA面の曲。これはHipHopに限らずいろんなクラブシーンでサンプリングからカバーからされてきた曲。1977年に発表された原曲はこちら。

 こちらを少しだけテンポを上げて、構成を少しシンプルにして、かつ #talkbox を駆使する形でカバーしました。 この曲の #Sunapanng のベース、 #MasahikoKubo のドラムはほんと最高だと思います。原曲の、ギターもいる5人編成だからできているアレンジを、なんとか45trioの3人で気持ちいいアレンジに仕上げられたと思います。ミックスエンジニアもやってくれているボスの高宮さんのミックスも最高。「これは行けるっしょ!」てことで表面に決定したんですが、それ以上に裏面の"A Little Spice"が評判になるとはよもや思わずでした。でも今聴き直しても最高なバージョンだと思いますが、どうでしょ?

B-3 "Remind Me" #PatriceRushen カバー

 さあやっとあと二曲!これはBloom Musicレーベルからの3枚目のシングルになったんですが、ここらあたりから、ネタを色々織り交ぜるマッシュアップ作戦が始まったように思います。まずは1982年発表の原曲。

 いやぁ何度聴いても原曲が素晴らしいですよね。なので、インストでカバーするのにまんまだとつまらない。てことで自分が提案したのは、この曲とのマッシュアップでした。 #Lowrell "Mellow Mellow Right On" 1979

 というのも、このマッシュアップは過去すでにされていて、それが好きだったんです。それがこちら。 #Common feat. #ChantaySavage "Reminding Me"

 このマッシュアップ作品へのリスペクトを込めつつ、個人的に大好きなPatrice RushenのRhodes演奏スタイルを意識しつつ仕上げたのが我々のバージョンになります。あ、vocoderも加えてます。

B-4 "I Love You" #WeldonIrvine カバー

 ついにアルバムラストの曲になりました。曲はもう #Freesoul であれなんであれこの界隈では超有名曲ですね。まずは1976年発表の原曲をどうぞ。

 この大人気曲を、敢えてインストでカバーしたいなと。そのためにもメロディをちゃんとリスペクトしたインストにしたい、ってことで作ったのがこちら。2022年の #レコードの日 11月3日に、新興レーベルBloom Musicの記念すべき1枚目としてリリースしました。

 この7inchはまたビックリするほど売れましたね。オリコンのデイリーチャートで40位以内に入ってましたから。自分がフロントのプロジェクトでは初の快挙でした。もちろん7inchはもう売り切れですけどね。

 少し脱線しますが、この曲の人気は2022年の日本のレコード界では特に盛り上がってたことを示すのが、日本語カバーがリリースされたってことですね。彼、 #イハラカンタロウ のこのバージョンの7inchも瞬く間に売り切れで、俺は買い逃してしまいました。後に出たremixは持ってますけどね。

 これもアレンジ含めてリスペクト満載ですね。

 そして我々がLPを出すにあたり、事前に仕込んでいたものがありました。それが"I Love You"の別バージョンです。友人に「スローバージョンなんてのがあってもいいんじゃない?」と言われたのがきっかけで思いついた、「もし #RoyAyers がカバーしてたらどんな感じだろう?」というアレンジを施したものです。このアレンジも個人的に痛く気に入っていたので、7inchを買い逃した方には申し訳なかったですが、"Pt2"と銘打ってLPにはバージョン違いを入れさせていただきました。

いいでしょ?ドラムもベースもいい感じにグルーヴしてます。

勝手に総括

 このアルバム〜LPは俺のピアニストとしての真骨頂になったと思います。アドリブもそこそこできますが、上には上がいる。「上手い」と言われるよりも「気持ちいい」と言われる方が嬉しい自分として、その「俺が気持ちいいと思うピアノ・キーボードはこれや!」ってことを形にできたように思ってます。ベースのSunapanng、ドラムのMasahiko Kuboも同様に思います。Sunapanngの器用さと飛び跳ねる感じが充分に出てると思うし、Masahiko Kuboの不器用だけど唯一無二のグルーヴポケットを持っている感じもそこかしこに刻まれてると思います。

 と総括しましたが、年末には我々が演奏したDJ Koco名義作品の7inchも出ますし、来年もどんどん出していく予定でプランニングしています。60~70年代SOULオマージュはこのLPで一段落でもいいのかな、だとしたら次はどこへ??という段階が2025年だと思ってます。2025年も引き続きワールドワイドニッチに45trioをよろしくお願いしますねw

 最後まで読んでくれた方、お疲れ様です。でも面白かったでしょ?是非友人知人にウンチクを語ってください。それでこそSOUL REViEWですからw


Bloom Music作品が全部揃うとこんな感じになります


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