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自虐していてもどこかすっきりする「みんな一回出家してるの?」

言葉を扱う人で「この人すごいな」と思う人が何人かいる。
言わずもがな、モノカキの人たちがそうであることに揺らぐことはない。モノカキの方たちを除いた業種でいうと、芸人とアナウンサーだ。

芸人の中でも、動きで勝負をしていない人は言葉に強い。
その一人が、南海キャンディーズの山ちゃんだと思っている。
もちろん、彼の類稀なる努力という姿勢が成した技であることは彼のエッセイやコメントからも読み取れる。

大きな山を何度も上り下り、そうして築いた彼らの歴史について話した「しくじり先生」は神回と言われている。
私もお正月の再放送を見て、お尻に火がついたのではなく、お尻に接着剤がついているかのように、じっと観ていた。

もう各所で動画は削除されているので、苦労して探さないと視聴することはできないが、「しくじり先生」の"授業"の中でみられる生徒へのツッコミ、もちろん話し方、どれをとっても最高である。
シャバの流行り言葉を使うと「最&高」である。

番組の中では、山ちゃんの独自の毒が飛び交う。
普通の人ならある嫉妬心について、山ちゃんは惜しげもなく言う。隣の芝生は青いのだという理論を、生徒にも同意を求めるが、そこはTVの世界。キャラクターを商品としている生徒たちは簡単に「Yes」と言えない。
そんな様子を見て、山ちゃんは言う。

みんな一回出家してるの?

山ちゃんのツッコミの素晴らしいところは、自虐ネタをベースとして話すのにも関わらず、聞いている側の後味はどこか爽やかなのである。
あなたの周りにもいるじゃないですか。特に大学生の時代なんかには多い。自虐ネタを話すことで注目を浴びる人たち。これは男女問わない。だけど、実はその自虐ネタで、相手をしらけさせるパターンはとても多い。
それなのに、山ちゃんの自虐ネタは何故かスカッとするのだ。

なぜだろう。
相手のことを敬っているツッコミが多いから?
いやいや、そんなシンプルな話ではないのでは、と思う。
もちろん、山ちゃんのキャラクターということもあるが、何より山ちゃんが山ちゃん自身を受け入れていることが大きいような気もする。

山ちゃんのエッセイにも書いてあったが、ヒトは楽したくなる。
長い人生、楽したくなることはある。
なんなら、何もしなくても、なんとなくでも毎日は過ごせる。
だからこそ、山ちゃんは自分にムチ入れている。他人が遊んでいても、他人が楽しんでいるときも、山ちゃんは言葉と向き合っていたのだと。

生来の天才ではなく、努力の天才である人が、光が当たっているのを見て、日本も素敵な国だなと思わせてもらえる。

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