静かに相手を褒める「妙齢な女性は誰かと思った」
目の前の人を褒めてみよう。
目の前の人でなくても良い。隣の人でも良い。
親しい人よりも、少し距離がある間柄の人の方が良い。
その人のことを褒めてみよう。
その言葉、本当に相手を褒めていますか?
褒めるというのは、難しい。
少し距離がある人なので、褒めちぎるというのは少し違う。褒めちぎるというのは、時に相手を卑下しているように捉えられてしまうこともある。少し距離がある人には、丁寧に静かに褒めなければならない。
最近、そんなことにようやく気付いて、褒めるということがどれだけ難しいことなのかを思い知った。
私の中でも、まだ明確な解はない。
「妙齢な女性は誰かと思った」
よく顔を出す飲み屋の常連さんが言ってくれた。
そんな褒め言葉をいただいたことがなかったので、「レイは、どんな漢字ですか?」なんて稚拙な返答をしてしまった。
褒め言葉であることは、常連さんの性格からわかっていたものの、漢字変換した後にも疑問は残った。微妙な年齢だと…?
妙齢とは、若い女性のことを指す。まさに、漢字のおかげで褒め言葉と認識されないこともあるようだ。
ただ、こんな表現ができるところに、年の功を感じたし、センスも感じた。
手元のビールを口に流しながら、まだ私のことを妙齢と言ってくれる人がいるなんて、有り難いことだなんて思っていた。いや、そういうお店に行っているからでもある。言葉はたいていの場合、相対的に使われるのだ。
私は、この飲み屋の居心地が良くて頻繁に顔を出す。もちろん、顔を出すときは一人で行く。生きていて起きる問題や、ぶち当たった壁、どうしようもできない口論…それらを静かに話すのには、うってつけの場所だった。なにより、70歳オーバーの店主の返答は深く私を安心させてくれるものがある。
居心地の良い空間とは、その場の人たちと自分の相対的なポジショニングによって決まるのだろう。そんな風に思いながら、赤ちょうちんのお店を後にした。
私を褒めてくれたおばさんと、大きくなったワンちゃんを連れるおばさんと、店主たちに見送られて。
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