概念を食べ物で表現する「思い出の角砂糖を、ちょっとずつ舐めながら生きていく」
前職の男の先輩がこう言っていた。
「浜辺美波が可愛い」
当時、彼女が更に世に出る作品となったであろう『君の膵臓を食べたい』がヒット作として台頭に出たころだった気がする。
私は、その作品を観たこともなければ、出演者に興味もなかったので、彼女のことを知るのはもっとずっと後になる。
ひょんなきっかけから、例の作品を観た。
先輩が言っていたことがわかった。
ただただ、浜辺美波は可愛かった。
ちょっと大人になってしまった私は、こういった涙腺を刺激するような青春映画をピュアに観て涙を静かに流すことはもうなく、淡々と冷静に観ていた。なんなら、突っ込みどころで「ん?」と思ってしまったりする。
脚本家さん、すみません。。。
ふと、作品を邪魔することのないこの主題歌は、誰の歌だろうかと調べたら、かのミスチルだった。
学生時代によく聞いていたミスチルの曲に気付けないなんて、情けない。
久しぶりにミスチル色の歌を聴いていて、珍しくミスチル色の薄い歌詞なんじゃないかと思ったりした。いや、ただただ私のミスチル感覚が劣っていただけかもしれない。
けれど、シンプルで静かな歌詞の中にぽつんと、これまた静かに綺麗な表現があった。
思い出の角砂糖を
涙が溶かしちゃわないように
僕の命と共に尽きるように
ちょっとずつ舐めながら生きていく
ミスチル色が薄い、なんて言ったけれど、吟味してみたらこの数行に凝縮されているような気もする。
表現している人物の、決意とちょっとした人間らしさが出ている そんな表現ですね。
こういう歌詞を好んでいた学生時代は人間だったな、と思うもので。
なんだか社会に揉まれて色々なことを経験した今、思い出をちょっとずつ舐めることもなく、とにかく日々迫りくる出来事を処理するのでいっぱいみたい。
そう思ったとき、私の心を見透かしたのか、一輪挿しにあったヒマワリが力をなくしてシュンとしょげ始めた。
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