ゆく年まとめ
年末・年始は12/29-1/7まで投稿をお休みしようと思います。
ということで今年のまとめです。
今年は展示機会もなく試行錯誤の一年でした。
メインの制作である油彩スケッチシリーズ「A UN」はけっきょく、昨年のENIKKIシリーズと大差ない”日々の日記”のまま自然体でよいシリーズとして、型にはまらずその日その日のノリで描いていくことに落ち着いた一年ではありました。
石の上にも三年といいますけれど、もう一年、二年と続けていけたらと思います。
でもやはり一年に一度は展示しないと作品数が多いので展示せずじまいになってしまう絵が増えてしまいます。
展示といえば夢見ているのは、母が通い私もアルバイトをしている老人福祉施設での展示です。
展示場所があるわけでもなく、許可がいただけるかも分かりませんが、やはり「A UN」シリーズは母の世代の視点を元に描いているので、同世代同地域の人にいちばん見てほしい。
そしてそこから何か新しい感覚を紡ぎ取れるようなプランを。
そのためにはまず私が施設の現場に慣れ親しむ必要があるように思い、少し時間がかかっていますが。
さて現在の私の制作の主要テーマは一昨年以降「母の終末ケア」となっています。
これは母が亡くなるまで続く予定ですのでだいぶロングランな企画になります。
「終末ケア」は全ての人に関わる課題です。
私の母は田舎の農村に生まれ、近郷に嫁ぎました。戦後の昭和を生き抜いた世代です。そして同郷の同世代の多くが老人福祉施設で介護ケアを受け、いずれ病院で亡くなります。
地方公務員の妻である母は十分な支給を受けて、比較的十全なケアを受けられる立場にあり、そしてそれは比較的平均的な立場であるようです。
世代間のギャップが甚だ激しい現代では一概にその姿が普遍的だとは言えませんが、それでも多くの人、ほとんどの人が人生の最後の数年は誰かのケアを必要とし、今ではほぼ全ての人が病院か施設で亡くなります。
そういった現実的な環境も含めて”現代の人の死”というものを見つめる。
その現場を経験し、観察することから得られる何かを、自分にできる方法で還元できたらと思います。
還元先は現場かもしれないし、自分自身に対してかもしれない。
現代美術の範疇に収めることはテーマを明快にするうえでも必要かもしれませんが、あえて範疇を飛び出すこともできるでしょう。
今年一年は母の回復にかまけて、ケアに関しては放任的になっていました。
けれどそれが常態化して観察のない放任=放置になってしまいました。
いつの間にか”母は健康”というポジティブ思考が過信に変化していたような気がします。
母は健康であるはずだから放置しても大丈夫。健康だから自力でできないはずはないという過信によって、私の思うように動いてくれない母に無意味な苛立ちを感じるまでになりました。
健康ではあっても、日々のケアが欠かせないことは施設のアルバイトや親族のアドバイスでようやく気づきました。
とはいえ必要以上にきちんとはしていなくて良い。
むしろ反対にきちんとしていない方が良いようでもあります。
けっきょく適度なケアのバランスはケア当事者にとってもイージーなゆるい感じが良さそうです。
”イージーでゆるい感じ”、これが観察者の私自身のペースにもなってきます。そうでないとあちこちで齟齬が起こるのですから流れに身をまかす他ありません。
けれど見つめる視点のほうは、なにかどこかがその環境の外部にないといけないもの。その外部的視点が制作の軸になるのでしょう。
制作は油彩スケッチだけではありません。日々の暮らし、村での活動、里山観察など幅広い引き出しを持とうとしています。
年ペースで発表を重ねつつ変化し、何かがかたちになっていったらなあと思います。
一年の後半は、もう一つ別の制作を始めました。これは「母の終末ケア」とは関係ない、以前から制作している鉛筆画シリーズ「HSL」に向けての準備スケッチです。
この「HSL」シリーズもできるなら母のケアの合間に制作したいというのは少し欲張りかもしれません。ちょっと暮らしのペースが忙しくなってしまいました。
ケアと家事と制作のバランスを無理なくゆとりを持って習慣づけられたらなと考えています。
何事につけ焦らず気楽に手を抜かず、制作を重ねるように日々を重ねていきたいと思います。
ではまた来年もよろしくお願いいたします。
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