夢と憧れと強いチーム
日本シリーズの試合について、いろんな記事でセ・リーグの実力不足という論調のものがあちこちに出ている。
詳しい野球論は詳しい人たちで繰り広げればいい。
時代の流れとともに在り方も変わっていったっていい。
昨日はチームの一体感という面がすごく気になったのでそれだけFacebookに書いておいたけど、一晩経って思い返してもう一つ書いておきたいと思ったのでnoteに書くことにした。
7回に入る前と、試合終了直後にコメントを求められた川崎宗則さんの言葉がすごく良かった。
劣勢のまま、7回岩嵜、8回モイネロ、9回森というホークスの磐石な投手リレーが始まるのを前に、ジャイアンツ打線はどう立ち向かえばいいですか?とアナウンサーに聞かれ、こう答えていた。
「ホークスが用意した至上最高のアトラクションですからね!こんなの滅多に味わえないんですから、目一杯楽しんで堪能してほしいですね!」
そして試合が終わった後(だったはず)には、ホークスの選手たちは、先輩たちの練習を引き継いで、技術をしっかり継承しているという話しもしていた。
それはすなわち、自分一人ができればいいのではなく、しっかり受け継いで伝えていって「チームとして強くなっていくべき」という土壌が出来上がっているということであり、それが本当の意味で「層が厚い」と言えるのだと思う。
もちろんそれは、他の球団も同じくやっていることなのだろうけど、おそらく「伝えていこう」という意識と「受け継いでいこう」という姿勢の度合いの問題なのだと思った。
彼はいつもポジティブなことを言う、というイメージだが、やっぱりそれは誰に向けて伝えたいかが明確だからだと思う。
楽しんでいこうよ!野球ってこんなに楽しいよね!
それはかつての僕らがそうだったように、今目を輝かせてプロの試合をテレビで観ている子供たちに向けてのものだ。
憧れを抱いて進んできた道。
真剣勝負の世界で自分のことで手一杯になることも当然ある。
それでも、自分が抱いてきた思いを、ちゃんと次の世代にワクワクのまま受け継いでいくという姿勢を持っていなければ、プロとは言えない。
年収や待遇、社会的認知度も全く違うから、本来比べようはないのだけれど、僕はおっさんだからよく自分たちのパティシエという仕事の世界をプロ野球の世界に例えたりしてスタッフと話すことがある。
自分のパフォーマンスでお客様からお金を貰ってそれで生活している以上、1年目だろうが何年目だろうが、俺たちはプロだからね。
子供たちにとってはプロ野球選手を見る目もパティシエを見る目もそこまで大きな違いはないと思う。
すごいことができる憧れの人、のはずなのだ。
お金をたくさんもらっているからちゃんとやらなきゃいけないんじゃない。
有名だから間違ったことすると叩かれて大変だから、悪いことしちゃいけないんじゃない。
子供たちが見ているから大人はちゃんと生きなきゃいけない。
そして、本気でプレーする、諦めない姿を見せる。
自分の姿勢やパフォーマンスが、誰かの夢や憧れのきっかけになるかもしれない。
プロ野球選手やパティシエなんていう仕事じゃなくても、大人の生き方を子供はみんな見てる。
高い技術や成果を求められる仕事は、うまくいかないことも多い。
それでも一生懸命にやる姿(第3戦の長谷川選手の1塁へのヘッドスライディングと、アウトになって悔しがって地面を叩いていたシーンのような)や、チームとして全体を鼓舞しようとする姿(常に周りに声をかけて声を出している松田選手のような)は、真剣に見ている人たちにはいつまでも残る。
常に結果が求められる厳しい世界ではあるけれど、全力で楽しんで駆け抜けた人だけが、いつか「悔いはないです」と言えるのだと思う。
そんな高いレベルでの自分との戦いができるように、またまだ精進しないといけない。