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"原音"のススメ
このノートは、Eテレ2019/3/22放映『ドキュランドへようこそ!』「原音のサバンナ」のコラムである。
"原音"の魅力
私たちは、"原音"とはほど遠い生活をしている。あたかも、周りの音が疎ましいかのように生活をしている。イヤホンや耳栓を使って直接音を遮断してしまうこともある。ただの雑音と受け取って、苛立ちを募らせている場合もある。しかし、一度周りの音に心を開けば、それにはたくさんのメッセージが込められていることを知る。私たちが周りの音に心を開いたとき、"原音"が聞こえてくるのである。
私が住む地域(東京)で最も大きい"原音"は自動車の音である。その走行音・エンジン音・クラクション・サイレンなどが、まず最初に気付く"原音"である。さらに耳をすませば、人々の音が聞こえる。会話、歩行音、杖の音。これらの音はたくさんのメッセージを伝えている。さらに注意をすると、隠れていた"原音"が聞こえる。鳥のさえずり、木々の葉がこすれる音。
地域が変われば、"原音"の構成は大きく変わる。私が以前訪れた熊野古道の山道では、車の音は全くない。人の音も全くない。そのことによって、木々の葉音が怖いくらいに大きく聞こえるのである。
また、東京では分からなかった音が、分かるようになる。木々のピキピキというラップ音。多くの動物たちの足音がする。そこで初めて、動物や木々がこんなにもメッセージを送っていたことを知るのである。このメッセージを受け取ったとき、自分は生物に包囲された存在であると知った。
それと同時に、私は、私自身が広大な自然の中の一つの点であると知った。
以下の動画は、拙いものではあるが、熊野古道で撮影した動画である。実際には、木々の葉音はもっと大きく感じられたし、動物の気配も怖いほどであった。しかし、動画ではそれらは再現できていない。それが私の動画の限界であるがご容赦願いたい(実際の凄さは、現地へ足を運ばれることをお勧めする)。
動画1. 熊野古道の"原音"
「原音のサバンナ」の魅力
私たち自身で体験できることは、世界で起こっていることのほんのわずかである。私たちの知らない"原音"を体験する方法は、動画である。しかし、ほとんどの動画では、アテレコ等の編集により、"原音"は損なわれてしまう(ほとんどのTV番組、Youtube動画はそのような状態であろう)。
一方、「原音のサバンナ」は、"原音"を損なうような編集は一切ない。さらに、高度な音響器具を使って、人間の聴覚を超えた音をも拾ってくれる。その最たる例は、葉を食べるバッタの"原音"である。
図1. 葉を食べるバッタの様子
『ドキュランドへようこそ!』「原音のサバンナ」より引用
こんな、小さな"原音"に耳を傾ける番組は、どれくらいあるだろうか?サバンナという私たちに全くなじみのない世界の、"原音"をこれでもかというくらい聞かせて、見せてくれるのが、「原音のサバンナ」の魅力である。
"原音"のススメ
皆さんも、周りの音に心を開いて、"原音"を聞いてみてはいかがだろうか?その場所で発せられる、隠れたメッセージを受け取ることができるはずである。知り尽くしたと思い込んでいる馴染みの場所でも、思わぬ"原音"、メッセージが隠れていて、はっとさせられるのも楽しい。
旅行先、住み慣れた街、動画などどこでもいい。
"原音"を楽しんでみてはいかがだろうか?
画像出典
ヘッダー画像 ドキュランドへ ようこそ!・選「原音のサバンナ」
http://www4.nhk.or.jp/docland/x/2019-03-22/31/25588/1418015/
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