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所沢市議会 2024年6月定例会 傍聴録+α (6月7日)

 6月7日(金)の日程は四常任委員会審査と予算常任委員会審査。私は日々の諸々を早めに切り上げて市役所へ傍聴に向かった。

 この日の目当ては予算常任委員会での「ふるさと応援寄付推進事業」の審査。到着は15時50分ごろで、まだ当該事業の審査は行われておらず、無駄足にならずに済んだ。

 とはいえ、当該事業に対する質疑では、それほどクリティカルなものはなかったように思う。当該事業については賛成意見も反対意見もなく、採決では予算案は挙手多数で可決すべきものとなった。散会は16時55分ごろ。

 以下、傍聴録ではなく私の意見になるが、せめてもの抵抗として書き残しておこうと思う。

ふるさと応援寄付推進事業

議案第59号の議案資料より(掲載ページ

 「ふるさと応援寄付推進事業」は、本定例会に上程されている議案第59号(一般会計補正予算)のイチ事業であり、いわゆるふるさと納税の返礼品を用意するものである。

 この記事を書いている時点で、所沢市はふるさと納税は受け付けているものの、返礼品は用意されていない。市サイトに用意されている案内ページにはその旨が記載されている。また、市サイトにはふるさと納税に関する状況を公表しているページもあり、寄付件数や寄付額の推移などが掲載されている。

所沢市のふるさと納税返礼品

 市は以前はふるさと納税の返礼品を用意していたが、平成29(2017)年度に終了している。これについては、当時の藤本市長の判断があったように伺える。年度当初予算の説明があった3月定例会の会議録、藤本市長の議案説明から、ふるさと納税に関する箇所を次のとおり引く。

 なお、ふるさと納税につきましては、歳出の部分で昨年は返礼品に係る経費を計上しておりましたが、新年度はこれを改めることといたしました。自分を育ててくれた故郷を支えたい、地方の財政を強くしたい、そういう願いが込められてふるさと納税の制度はできました。しかし、人は、ふるさとではなく、より好みの返礼品を求めて、そして自治体同士も寄附金の獲得競争にエスカレートするばかりで、他を配慮するゆとりすらありません。返礼品が並べられた専門サイトまででき市場化するに至っていますが、このありさまを、子どもたちに私たち大人は胸を張って示せるのでありましょうか。
 もちろん、いわゆる田舎、地方の自治体が、この制度を工夫して活性化することを否定するものではありません。しかし、所沢市は、ふるさと納税に込められた所期の願いに立ち戻り、終わりなきこの競争からひとまずおりて、返礼品ではなく、所沢の自然を文化をスポーツを、そして、事業を応援したい、という人々の思いに期待して、ふるさと納税に臨むことといたしたところでございます。

所沢市議会会議録 平成29年3月定例会(第1回)02月21日-01号より

 2017年の時点で既に、返礼品競争の過熱は既に論じられていた。平成29(2017)年4月1日の「ふるさと納税に係る返礼品の送付等についての総務大臣通知」でも、「ふるさと納税の返礼品に関する有識者の意見の概要」の中で、いくつもの意見で指摘されている。

・ 制度創設時に期待されていた、納税者とある特定の地域との結びつきが形成されるとの目論見の達成度は限定的であるが、災害時に被災地にふるさと納税が集まるなど、寄附文化を芽生えさせるきっかけとなったことは評価できる。現在は返礼品が過度に重視されるという点で、良くない方向に向かっている。
・ ふるさとへの貢献という精神をもったものではあるが、寄附税制としての性格を持っている。その意味で、災害時における被災地へのふるさと納税など、寄附を定着させたことは一定の評価ができる。一方で、返礼品の送付は明らかに過熱しすぎであり、批判の高まりも分水嶺を超えた感がある。制度を定着させ、持続可能なものとするためには、返礼品について自主規制等を検討するなど、何らかの対策が急務。
・ 大学や就職で都会に出た方が、育ててもらった地域をふるさととして再認識し、恩返しすることができる制度として、また、都会に住む方が、全国津々浦々の地域を知るきっかけ(アテンション)となる制度として、評価している。東京一極集中の是正や地方創生に関する政策の中で、一般の人が関わることができる制度である。一方で、各種のポータルサイトにおいてインターネット通販化しているような状況は、行き過ぎであり問題である。

ふるさと納税の返礼品に関する有識者の意見の概要(掲載ページ)(強調は引用者による)

返礼品事業に対する私の意見

 私は返礼品事業の復活に反対である。ふるさと納税=ふるさと応援寄付自体は構わないが、寄付に見返りのモノが付いてくるのが良くない。それは結局、名目こそ「寄付」だが、金銭とモノを交換する、ド直球の経済活動だ。あえてこう言うが、そんなものは市場経済に任せておけばいい。そんなものは地方自治体こそが果たすべき役割ではない。そんなものにかまけていては、公共こそがやるべきことに金も人も割けなくなってしまう。それは、公共が公共であることの放棄だ。

 返礼品を用意するにしても、通常の市場で得られるモノやサービスではなく、公共だからこそできる何かであるべきではないか。これは思いつきにすぎないが、市が寄付金を活用する「特定事業および7つの分野」について、寄付者だからこその見学会や体験会などに招待する、といったことはどうか。寄付者を過剰に特別扱いするのもそれはそれで問題だろうから塩梅が難しいところだが、いずれにせよ何かいいアイデアを考えてほしいものである。行政・公共サービスを返礼するというアイデアは、会議録を調べたところ、中村議員荻野議員が一般質問の中で取り上げている。