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イジンデン第3弾環境の優勝デッキでトップシェアは何だ?


概要

  • さっそく答えを言ってしまうと、イジンデン第3弾環境のこれまでの全期間(2024年6月29日-10月6日)における通常構築大会の優勝デッキで、トップシェアは青黄徴募であり、シェア率は19.9%である。

  • しかし、赤紫離宮の登場以降(2024年9月8日-10月6日)に絞るとシェア率が逆転し、トップは赤紫離宮で23.1%、青黄徴募は第2位で19.2%となる。

  • 青黄徴募は依然として注目すべきデッキだが、トレンドは赤紫離宮と合わせた二大デッキ環境になっていると言えるだろう。

はじめに

 イジンデンの第3弾環境におけるトップメタのデッキ(アーキタイプ)は何だろう? ――この記事を書くきっかけとなった素朴な疑問がこれだ。そして答えは青黄徴募ではないか、という肌感覚はあった。どの大会に行っても、少なくとも一回は当たる印象があったし、対徴募を意識したデッキでもいつも勝てるとは限らなかったし、徴募が優勝しているところもちょくちょく見かけていたからだ。

 しかし、私は客観的なデータを持っていなかった。それどころか、誰もデータを持っておらず、私を含めた皆が感覚だけで会話しているように思えた。他の大きな TCG におけるメタゲームブレイクダウンのようなものをイジンデンで見たことはないし、大創出版やワンドローといった公式の組織が環境を分析したような記事も見たことがなかった。公認サポーターであれば大会参加者にデッキリストを提出させればその大会内でのシェアは分かるだろうが、そういった分析も見かけたこともなかった。

 イジンデンの環境を定量的に見てみたい。これがこの記事を書いた動機だ。Duck Cup という大型大会も終わったことだし、調べるにはいい機会だと考えた。

 あらかじめ断っておくと、この記事はいわゆる「こたつ記事」だ。私は公認サポーターでもカードショップ店員でもないので、得られるデータも現場最前線のウォッチにも限界があった。せいぜい、X を検索して優勝デッキ眺めるくらいしか、定量的と言える何かは得られなかった。それでも、こういった議論をする上で何らかのベースラインは必要だろう。この記事がそうなり、よりよいメタゲーム分析へとつながることを願っている。

調査方法

 X の検索機能でクエリを「イジンデン (大会 OR 優勝)」として検索し、大会の優勝デッキを掲載しているポストを手作業で集め、そのデッキのアーキタイプを手作業で設定、分類し、Google スプレッドシートで集計、グラフ化した。

 第3弾の環境として、次の期間と対象で、176のサンプルを得た。

  • 期間 ― 2024年6月29日~10月6日

    • ただし10月6日の大会は『第1回 Duck Cup』のみである。

    • 7月27日の大会には公式のイジンデンフェスを含む。

  • 対象 ― 封印カードのない通常構築

    • 明らかな封印構築やブースタードラフト、スターター限定構築などの大会は除外した。

    • 大会の形式(BO1だのBO3だの、スイスドローだのシングルエリミネーションだの)は問わない。

 なお、今回の調査手法には次のような限界があることに注意されたい。

  • X で優勝デッキをポストしていない大会については調査できていない。また、ポストしていても検索にヒットしなかった大会についても調査できていない。

  • 2位以下のデッキについては調査できていない。

  • 大会の規模(参加人数など)や形式(BO1だのBO3だの、以下同様)の差は考慮していない。

  • 大会ごとの封印カード事情を完璧には把握できていない。封印構築を明にうたっていないように見えた大会は全て集計対象とした。

  • アーキタイプの設定と分類は筆者の独断と偏見による。

    • 例えば徴募系のデッキは、コントロール寄りなのかビートダウン寄りなのかを問わず、またタッチ色を問わず、ピョートル大帝と曹操を採用していれば全て「青黄徴募」とした。

    • また、例えば「緑黄ハイケイ」は、清少納言ロックも、舎利殿スカーレットも、オースティン入りのものも含んでいる。

    • 他にも、例えば赤紫で岡田以蔵を採用したビートダウン系デッキは、さらに森閑たる離宮の有無で「赤紫離宮」「赤紫以蔵」と細分化している。

 集めたサンプルやアーキタイプの分類など、使用したデータは記事末尾の「エビデンス」に掲載した。追試されたい方などはこちらもあわせて参照いただきたい。

調査結果および考察

全期間(2024年6月29日~10月6日)

優勝デッキシェア率 (2024年6月29日-10月6日, n=176)

 まずは調査した全期間で見てみよう。シェアトップはイジンデンフェスDuck Cup でも優勝した青黄徴募であり、シェア率は19.9%だった。ただし、その他徴募系(1.7%)は曹操の採用が不明なものを含んでいるため、実際のシェア率はもう少し大きくて20%を超える可能性がある。

 シェア率20%がどれくらいのものなのかという肌感覚については、他の TCG の話題になって恐縮だが、デュエルマスターズでは「大注目デッキ」と呼べる旨の言説がある

 第2位は緑黄色ハイケイで、シェア率は11.4%だった。また、第3位以下では赤を含んだアグロ系が目立つ。

赤紫離宮 初優勝以降(9月8日以降)

優勝デッキシェア率 (2024年9月8日-10月6日, n=52)

 次に、Duck Cup で準優勝した赤紫離宮が、大会で初優勝した以降のシェアを見てみよう。筆者が把握した限り、このアーキタイプの原型が初優勝したのは9月8日のカードショップアジトの大会のようであり、これ以降の大会のサンプル数は52となった。

 上のグラフを見てのとおり、シェアトップは逆転して赤紫離宮となり、そのシェア率は23.1%であった。活躍の中心は秋葉原だが、川越イジン会青嵐杯ぽよんまるなどでも戦績を残している。

 ただし、それでも青黄徴募はシェア第2位であり、シェア率は19.2%と依然として高い。現在のトレンドは赤紫離宮と青黄徴募の二大デッキ環境になっていると言っていいだろう。

おわりに

 青黄徴募のシェアが継続的に高いこと、および最近は赤紫離宮が台頭していることを、客観的なデータとともに示した。Duck Cup の優勝、準優勝デッキがこれら2つであったことも不思議ではないと思える調査結果となった。

 最後に意見として、こういった分析は大創出版やワンドローといった公式の組織が行っていただきたいと思っている。公認サポーターは大会開催レポートを提出する必要があると聞いているので、その際に優勝デッキもあわせて報告させるようにして(実は既にやってたりするのだろうか?)、その結果を分析いただくのはどうだろうか。環境を理解することは次弾以降のカード制作(特に対策カード系)にもきっと役立つはずだ。ぜひ検討いただきたい。

エビデンス