道長ループの回し方 (赤黄メロウスペクター型) ― イジンデン デッキ紹介
はじめに
先日の川越イジン会に参加し、優勝されたヨシタカさんの決起コンボデッキ(ご本人は「苦行インスパイア」とおっしゃっていた)がスゴすぎて衝撃を受けた。決勝戦で対戦相手(会の主催者でもあるちょくはちさん)の徴募デッキに完全にフタをされたかと思ったら、返しのターンで鮮やかな逆転を決めてみせたのだ。その模様は川越イジン会の YouTube にアップされているので、ぜひご覧いただきたい。
ヨシタカさんの決起コンボデッキは、アーキタイプとしては「道長ループ」に該当し、細かな型はキーカードの色とマホウに基づいて「赤黄メロウスペクター型」と呼べそうだ。
道長ループについては既にゆたかびとさんが note にステキな紹介記事を書かれているが、ヨシタカさんの型については詳説がなさそうに見えたので、感激した&大会参加でゲットしたプロモカードで《天草四郎》が4枚揃った私も同じデッキを組んでみて、言語化を試みることにした。この記事を読み進める前に、ゆたかびとさんの記事を一読されることをオススメしたい。
赤黄メロウスペクター型の概要
デッキリスト
デッキの勝ち筋
勝利に向かうおおまかな流れは次のとおり。
《天草四郎》の決起を発動させ、手札のマホウを魔力コスト0にする
「ロイヤリティループ」(後述。以下同様。)により、デッキすべてを引き切る。
「メロウループ」により、相手の戦場のレベル7以下のカードすべてをガーディアンにする
「スペクターループ」により、相手の戦場のガーディアンすべてを山札の下に戻す
必要であれば「クイックループ」により、自分の戦場の十分な数のイジンに即応を与える
戦場がほぼ更地になった相手にダイレクトアタックして勝利する
デッキの長所
速度 ― 理論値では、自力なら最速3ターン、ガーディアンからのマリョク復元があれば最速2ターンで勝負が決まる。
確度 ― コンボが最終段階まで決まれば、黄魔導付きの《スペクター》で相手のガーディアンをデッキ下に除去できる(詳細は後述)。そのため遺業能力、特に冥府発動をケアする必要がなく、運要素はほぼ無しで勝利に向かうことができる。
色の安定性 ― マリョク以外のカードは赤と黄の2色にまとまっている。マリョクはコンボに必要なため4色ぶん入っているものの、どれも赤か黄を含んでいる。これにより色事故が起きにくなっている。
ハンデスへの耐久力 ― コンボパーツとなるマホウが墓地に置かれている状態でコンボを開始するため、《メアリー1世》や《洪秀全》などでマホウをハンデスされても勝ち筋を失わない。特に、1枚挿しの《スペクター》をハンデスされてもコンボの開始には何ら支障がない点は大きな魅力に思える。
《メロウ》による対応力 ― コンボパーツでありながら、ゲームの途中で普段どおりに使ってもコンボの開始には支障がなく、レベル7以下であればイジンにもハイケイにも幅広く対応できる。相手のガーディアンが増えても最終的には黄魔導付きの《スペクター》で安全に除去できるので、大きな問題にはならない。
潔さ ― 現環境のトップメタの一角である青黄徴募に対し、ゲームが硬直状態に陥って長引くようなことはなく、勝つにせよ負けるにせよ最後はスパっと終わる。
デッキの弱点
急所は《藤原道長》 ― ループを開始するための必須カードだが、墓地から回収はできない。したがって、これをハンデスや破壊除去で墓地に落とされると勝ち筋が細くなっていく。
要注意カードは《エカチェリーナ2世》 ― 4枚目から魔力ゾーンにオモテ向きでマリョク配置できなくなってしまうので、決起の発動が難しくなる。一番の対策は、こちらも《張角》を出してオモテ向きのマリョクが3枚でも決起が発動するようにすること。それが難しければ、ガーディアンからマリョク復元できることを祈る。復元では決起は発動しないが、オモテ向きのマリョクが4つある状態さえ整えば、以降のマリョク配置ではウラ向きの配置でも決起が発動する。
決起を封じてくるデッキに注意 ― 《エカチェリーナ2世》以外で最たるものは、魔力ゾーンを更地にしてくる清少納言ロックだろう。ヨシタカさんのリストでは、サイドデッキから《巨大古墳》と《グリーンオーブ》を投入することで、更地からでも決起を発動できる体制を整えることを狙っているようだ。
レベル8以上のイジンやハイケイに対処困難 ― 《メロウ》&《スペクター》で除去できないため。特に相手の戦場にイジンが残ってしまうと、こちらも最後のアタック時にアタッカーの数が必要になってしまう。できれば、そのようなイジンを出される前に勝負を決めてしまいたい。
回すのに慣れが必要 ― 後述する各種ループやつなぎを回すための前提条件の把握や手順の遂行はもちろんのこと、その状況にいち早くかつ確実にたどり着くために、ゲーム中盤まではイジン召喚権、マリョク配置権、および魔力コストをシビアに管理しなければならない。私もその辺はまだ詳しく言語化できていない。
ロイヤリティループ ― デッキ引き切り
ロイヤリティループの前提条件
《天草四郎》の決起が発動済み(魔力コスト0)
魔力ゾーンのレベル条件がレベル5以上、かつ色条件が赤黄を含む3色以上
イジン召喚権が1以上
墓地に《メロウ》《ロイヤリティ》《サモン》がそれぞれ1枚以上置かれている
手札に《藤原道長》が1枚以上ある
前提条件のマホウカードが墓地ではなく手札にある場合、それを使用して墓地に置かれている状態にすること。これは他のループでも同様である。
ロイヤリティループのステップ
墓地に《メロウ》《ロイヤリティ》《サモン》が1枚ずつ置かれており、手札に《藤原道長》が1枚あり、イジン召喚権が1残っている状態である。
イジン召喚権を1消費し、手札から《藤原道長》をイジン召喚する。
《藤原道長》の発動型能力(戦場に置かれたとき~)で、墓地から《メロウ》《ロイヤリティ》《サモン》を1枚ずつ、合計3枚を手札に戻す。
手札から《メロウ》を使用し、ステップ2でイジン召喚した《藤原道長》をガーディアンにする。《メロウ》は墓地に置かれる。
手札から《ロイヤリティ》を使用し、ステップ4でガーディアンにした《藤原道長》を山札の上に戻して3ドローする。《藤原道長》は手札に戻り、《ロイヤリティ》は墓地に置かれる。
手札から《サモン》を使用してイジン召喚権+1し、ステップ2で消費したイジン召喚権を回復する。《サモン》は墓地に置かれる。
手札が2枚増えてデッキが2枚減ったこと以外はステップ1と同じ状態であり、ループが成立している。
ロイヤリティループを繰り返せば、デッキすべてをドローできる。
メロウループ ― ガーディアン化
メロウループの前提条件
ロイヤリティループとの差分など、重要なポイントを太字で示す(以下同様)。
《天草四郎》の決起が発動済み(魔力コスト0)
魔力ゾーンのレベル条件がレベル5以上、かつ色条件が赤黄を含む4色以上
イジン召喚権が1以上
墓地に《メロウ》が2枚以上と《ロイヤリティ》《サモン》がそれぞれ1枚以上置かれている
手札に《藤原道長》が1枚以上ある
メロウループのステップ
墓地に《メロウ》が2枚と《ロイヤリティ》《サモン》が1枚ずつ置かれており、手札に《藤原道長》が1枚あり、イジン召喚権が1残っている状態である。
イジン召喚権を1消費し、手札から《藤原道長》をイジン召喚する。
《藤原道長》の発動型能力(戦場に置かれたとき~)で、墓地から《メロウ》を2枚と《ロイヤリティ》《サモン》を1枚ずつ、合計4枚を手札に戻す。
手札から1枚目の《メロウ》を使用し、相手の戦場にあるオモテ向きでレベル7以下のカード1枚をガーディアンにする。1枚目の《メロウ》は墓地に置かれる。
手札から2枚目の《メロウ》を使用し、ステップ2でイジン召喚した《藤原道長》をガーディアンにする。2枚目の《メロウ》は墓地に置かれる。
手札から《ロイヤリティ》を使用し、ステップ5でガーディアンにした《藤原道長》を山札の上に戻してそれをドローする。《藤原道長》は手札に戻り、《ロイヤリティ》は墓地に置かれる。
手札から《サモン》を使用してイジン召喚権+1し、ステップ2で消費したイジン召喚権を回復する。《サモン》は墓地に置かれる。
相手の戦場のカード1枚がガーディアンになったこと以外はステップ1と同じ状態であり、ループが成立している。
上の説明ではロイヤリティループによって既にデッキを引き切った状態を想定しているが、そうでなくても前提条件さえ満たしていればこのループは回せることに注意いただきたい。単に、最後のステップで手札とデッキの枚数の増減があるだけである。これは他のループでも同様である。
メロウループを繰り返せば、相手の戦場にいるレベル7以下のイジンとハイケイすべてをガーディアンにできる。
スペクターループ ― ガーディアン除去
スペクターループの前提条件
《天草四郎》の決起が発動済み(魔力コスト0)
魔力ゾーンのレベル条件がレベル7以上、かつ色条件が赤黄を含む4色以上
イジン召喚権が1以上
墓地に《スペクター》《メロウ》《ロイヤリティ》《サモン》がそれぞれ1枚以上置かれている
手札に《藤原道長》が1枚以上ある
スペクターループのステップ
墓地に《スペクター》《メロウ》《ロイヤリティ》《サモン》が1枚ずつ置かれており、手札に《藤原道長》が1枚あり、イジン召喚権が1残っている状態である。
イジン召喚権を1消費し、手札から《藤原道長》をイジン召喚する。
《藤原道長》の発動型能力(戦場に置かれたとき~)で、墓地から《スペクター》《メロウ》《ロイヤリティ》《サモン》を1枚ずつ、合計4枚を手札に戻す。
手札から《スペクター》を使用し、相手の戦場にあるガーディアンを破壊して、黄魔導によりそれを山札の下に戻す。《スペクター》は墓地に置かれる。
手札から《メロウ》を使用し、ステップ2でイジン召喚した《藤原道長》をガーディアンにする。《メロウ》は墓地に置かれる。
手札から《ロイヤリティ》を使用し、ステップ5でガーディアンにした《藤原道長》を山札の上に戻してそれをドローする。《藤原道長》は手札に戻り、《ロイヤリティ》は墓地に置かれる。
手札から《サモン》を使用してイジン召喚権+1し、ステップ2で消費したイジン召喚権を回復する。《サモン》は墓地に置かれる。
相手の戦場のガーディアン1枚が山札の下に戻ったこと以外はステップ1と同じ状態であり、ループが成立している。
スペクターループを繰り返せば、相手のガーディアンすべてを山札の下に戻すことができ、相手の戦場をほぼ更地にできる。
クイックループ ― 召喚酔いの解除
これまでのループの応用なので詳細は省略する。スペクターループの《スペクター》を、代わりに《クイック》にするだけである。
このデッキは最終的に、自分の戦場のイジンで相手にダイレクトアタックして勝利することになる。しかし、自分のイジンが召喚酔いしていたり、相手の戦場にレベル8以上のイジンが残っていたりすると、アタッカーの数が足りなくなることがある。そんなときにはこのクイックループで、自分の戦場にいる十分な数のイジンに即応を与えてからアタックする。あらかじめ《石田三成》の決起や余った《サモン》を使って十分な数のイジンを召喚しておくこと。
《石田三成》によるループ間のつなぎ
ロイヤリティループとメロウループの間、およびメロウループとスペクターループの間には、魔力ゾーンのレベル条件や色条件にギャップがある。マリョク配置権が0になってしまい、このギャップを次のターンに埋めようとして自分のターンを終えてしまうと、次の相手のターンでコンボの発動を妨害されたり勝負を決められたりしかねない。
これを克服するのが、《石田三成》によるループ間のつなぎ(以下、単に「つなぎ」という。)である。
つなぎの前提条件
マリョク配置権は0でも構わない
魔力ゾーンのレベル条件がレベル5以上かつ色条件が赤を含む
ループ1の前提条件を満たしていれば、この条件も満たせる
イジン召喚権が1以上
手札に《石田三成》とマリョクがある
マリョクはまだ魔力ゾーンにない色を持つレベル2のものが望ましい
つなぎのステップ
手札に《石田三成》とマリョクがあり、マリョク配置権は0であり、イジン召喚権は1残っている状態である。
イジン召喚権を1消費し、手札から《石田三成》をイジン召喚する。
《石田三成》の1つ目の発動型能力(戦場に置かれたとき~)でマリョク配置権+1する。
ステップ2で得たマリョク配置権を消費し、手札からマリョクをマリョク配置する。
《石田三成》の2つ目の発動型能力(決起)でイジン召喚権+1を選び、ステップ1で消費したイジン召喚権を回復する。
手札から戦場と魔力ゾーンに《石田三成》とマリョクが移動したこと以外は最初と同じ状態である
つなぎを終えると、ステップ4でマリョク配置したマリョクのぶんだけレベル条件や色条件が増強される。適切なマリョクを配置できれば次のループに進めるだろう。1枚目の《石田三成》とマリョクで足りなければ2枚目や3枚目を狙っていくことになる。
おわりに
道長ループ(赤黄メロウスペクター型)の言語化を試みた。改めてデッキリストの美しさに魅了されてしまった。各種ループの前提条件を確実に把握し、手順を正しく遂行できることが、このデッキを使うための第一歩だと感じた。一人回しで練習してデッキに慣れていこうと思う。
ライセンス表示
この記事の画像では Creative Commons でライセンスされた次のアイコンを使用しています。
graveyard by Daniil Churakov from Noun Project (CC BY 3.0)
Hand of Five Cards by Daniel Solis from Noun Project (CC BY 3.0)
Rotate by supeni from Noun Project (CC BY 3.0)