演劇は「劇場」から始めなくたって良い!(前編)
こんにちは!
大阪府枚方市で、未経験の方にも気軽に演劇を体験してもらえる機会を作っている、演劇をデザインする人 アサカワミトです。
『スウィトリト-Sweet Little-』という屋号で、一般参加型の演劇体験ワークショップを3年ほどしています。
今日は、演劇を気軽にライトなところから始めても良いんじゃないか!
というお話をしたいと思うのですが、、、
これ、書いていて長くなりましたので、今回は前編後編に分けさせていただきます…。
今回の前編では演劇がどれだけハードルの高いものかをお伝えします。
演劇をするハードルの高さは「劇場」を借りること。
みなさん演劇、劇団っていうと、まずほとんどの人が「劇団四季」か「タカラヅカ」を思い浮かべると思います。
けれどこの2つは演劇界全体からすれば特殊で例外的な存在です。しかもこの2団体のジャンルは基本、「ミュージカル」です。
「ミュージカル」=演劇全般ではありません。
じゃあ演劇というのは、どんなものがあるのでしょうか。
実はいわゆる演劇は「小劇場」と呼ばれるものがほとんどです。
なぜ「小」が付くかと云うと、、、
それはそのまんまで、小さい劇場で演劇をしているからです。
小さいと云っても20~30名規模、50名規模、100名規模~500人規模と色々ありますし、ニュアンスも様々で、一概にこうだ! とは言いきれないんですが、とにかく、、、
小さい劇場を借りて、音響、照明、舞台装置、衣装etc…などの色んなことを自分たちですべて用意して作る演劇を「小劇場」といいます。
なので、ひとつの公演をするにも結構なお金が掛かる訳なんですが、その中でも割合が高いのが、劇場を借りる費用です。
そしてお金の面だけでなく、劇場を借りるということそのものが、演劇をする上でハードルの高いことなのです。
どれくらいハードルが高いかというと…
まず劇場を借りるということは、本番日(日時)を決めていなくてはいけません。
小劇場の数っていうのは結構限られていて、人気のある場所なら基本取り合いになるので、その場合半年~1年先以上をみておかなくてはいけません。
次に、この本番日から逆算して様々なことを進めていかなければいけません。
話すと長くなるのでざっといきますと、、、
・稽古場――劇場とはまた別に、稽古場を自分たちで押えなければいけません。そして稽古の回数分も早いうちに押えとかないと後々大変。
・音響――BGMや効果音を使うのが一般的なので、材料を集めて編集して、舞台に設置するスピーカーなどの機材も用意して、本番で操作するオペレーターも雇います(もしくは自分たちでやる)。作曲してもらうことも。
・照明――劇場というのは真っ暗な箱のような空間なので、光の演出は重要。それが出来る人を雇い、プランニングや劇場での機材の設置、そしてオペレーターを雇う必要があります(もしくは自分たちでやる)。
・舞台監督――本番に向けて、劇場に入って音響、照明、舞台装置と設営をしなきゃいけないんですが、その作業全般をまとめる現場監督が必要で…………
だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!
こんな感じで説明をし始めるとキリがないんですが、要は、、、
劇場を借りた以上は本番をしないといけないので、そのために必要なミッションが、借りた時点から連鎖的に発生する。ということです。そしてもちろん、その費用も掛かってゆく…。
ということで、劇場を借りることが演劇をするうえでどれだけハードルが高いか。
このセンテンスが長くなったことを見ていただければ、それだけでわかっていただけると思います(笑)
劇場でやる演劇は「ハイエンドな演劇」。
そんなこんなで数か月から、下手したら1年以上をかけて公演に漕ぎ付けるわけなんですが、、、
これだけ頑張っても客席はガラガラで赤字になるなんてことは珍しくありません。
これも原因はキリがないんですが、ここでひとつ言えるのは
みんな「劇場」を知らないからです。
皆さんは「小劇場」と呼ばれるものがどこにあるのか。わかりますか??
「下北沢になんかたくさんありそう…」
もう考えられるのは、これくらいなんじゃないでしょうか。
それくらい認知が低いので、演劇好きかファン。でなければ同業の関係者か、知人しか来ないのです。ふらっと来る人なんて滅多にいません。
だって「劇場」の場所を知らないから。
仮に興味があって、なんとか見つけて、思い切ってチケットを買って、飛び込んでみたとしても、、、
生で観るパワーは凄かったけど、内容がよくわからなかった。
なーんていう経験も、珍しくないのではないでしょうか。
つまり、劇場で上演する演劇というのは、プロだろうとアマチュアだろうと、もうそれだけで「ハイエンドな演劇」なのです。
ハイエンドというのは、、、たとえばiPhoneのpro仕様。
超高機能だけど、その高機能さは、ちゃんと理解していないと本当の価値がわからない。ほとんどの人が格安スマホの機種の機能性でも充分なはずです。
それと同じで、劇場で上演する演劇も、その効果――作家や俳優を知っていて、音響や照明の演出も感じて、五感を使う――を味わうことが出来て初めて、その価値が"少し"わかるものなのです。
この"少し"ってのが味噌で、、、
演劇は一回で全てを味わいきることはほぼ出来ません。
だから演劇にハマる人は、高いチケットでも何度でも払って観に行くのです。
理解、というよりやっぱり身体で味わう「体験」なんでしょうね、演劇は。
今回はここまで。。。
ということで、長くなりましたのでここで一旦終わりにしまして。
次回は「じゃあ…どんなスタイルの演劇なら気軽に出来るのか」をお伝えしたいと思います。
実際にやっているライトなスタイルから、アサカワが提案するスタイルまで、色々とご紹介出来たらと思うので、お楽しみに!!