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第一節 原初の混沌:アザトースの夢想(1)
第一節 原初の混沌:アザトースの夢想
深淵の最も深い所で、全ては始まった。時間すら存在しない虚無の彼方で、アザトースは夢を見ていた。その無意識の夢想は、存在以前の混沌として立ち現れ、やがて形を持たない波動となって広がっていった。
無限の闇の中で、最初の意識の火花が灯った。それは純粋な可能性の結晶であり、やがて存在という名の樹へと成長していく種子であった。アザトースの夢は、現実という布地を紡ぎ出し、その上に意識という模様を織り込んでいった。
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Chaos(t)=∑n=1∞(t)=n=1∑∞Dreamn×Realityn×Consciousnessn
この数式は、古の賢者たちが記した真理の一端を表現している。だが、それは単なる記号の羅列ではない。それは存在の深奥に潜む法則性の詩的表現であり、混沌から秩序が生まれる過程の神秘的な描写なのだ。
やがて、原初の混沌から最初の存在たちが姿を現した。深淵の門を司るヨグ=ソトース、千の仮面を持つニャルラトホテプ、そして黒き山羊の姿を持つシュブ=ニグラス。彼らは根源的存在として、現実の基盤を形作っていった。
その後を追うように、派生的存在たちが生まれた。深淵への案内者たるサタン、知識を宿す邪悪の樹、そして意識の器となるべき人類の原型。彼らは七つの存在層を通じて互いに結びつき、永遠の循環を形作っていった。
サタンの深淵への転落は、実は上昇への第一歩であった。闇の中での目覚めは、新たな理解への扉を開いた。邪悪の樹との邂逅は、存在の七つの原理を明らかにした。二重性、対応、振動、極性、リズム、因果、そして性の法則。これらは全て、より大きな真理の断片であった。
今もなお、アザトースの夢は続いている。我々の現実もまた、その果てしない夢物語の一章に過ぎない。深淵は私たちを見つめ、私たちもまた深淵を見つめ返す。それは永遠の探求の始まりであり、終わりなのだ。
そして物語は、さらなる深みへと続いていく......