春を告げる花言葉
春近い冬の日。凍りつくような青空が、ウサギとカメが歩く遊歩道に広がっていた。マフラーと手袋を装備した二人は、身をすくめながら図書館へ向かっていた。二人は館内に入ると、分類番号627の書架に向かった。
ウサギとカメが歩いてきた、まだ緑のない遊歩道には、小さな白い花を冷たい風に揺らすゆきやなぎがあり、その姿に目を留めた二人は、図書館で調べることにしたのだった。
書架から目当ての本を見つけると、二人は窓際の閲覧席に並んで座った。ウサギはすぐに「ゆきやなぎ」のページを見つけた。「名前から冬の花に思われがちだけど、春の花なのね。花言葉に『静かな思い』というのがあるわ。これはカメくんにぴったりね」
カメはゆっくりと頷きながら、「花言葉に『気まま』というのもある。これはウサギさんにぴったりだね。細い枝が風に揺られて、花もゆらゆらと揺れるから、風の吹くまま、気ままに見えるのかもね」
二人は窓の外を眺めながら、これから咲く花を思い浮かべた。「春にはたくさんの花が咲くけれど、花言葉はそれぞれね。この本によると桜の花言葉は『優美な女性』だわ」とウサギはいたずらっぽく笑った。
カメは彼女に優しく微笑むと、少し考えながら言葉を続けた。「自然は本当に不思議だね。いろんな花があって、それぞれに異なる言葉が込められているのだから」
「私は、自分が自然とつながっているって感じるの。お花も大切にしたいな」とウサギがカメに視線をおくると、カメも彼女の瞳を捕まえて、「ゆきやなぎが満開になる頃には、すっかり春だね」と優しく微笑んだ。