巡回群、対称群について
巡回群
巡回群について解説してください
巡回群(じゅんかいぐん、cyclic group)とは、代数学、特に群論において、ある一つの元からその元の繰り返しの操作によって全ての元が生成されるような群のことを指します。簡単に言えば、一つの元で表されるすべての群の構造です。巡回群は数学のさまざまな分野で基本的かつ重要な概念です。
### 巡回群の特徴
1. **生成元**: 巡回群は一つの元$${ g }$$によって生成されます。この元 $${g }$$を生成元と呼びます。
2. **群の構造**: 生成元 $${ g }$$の冪( $${g, g^2, g^3, \dots }$$ )を取ることで群の全ての元が得られます。無限巡回群の場合、これらの冪が全て異なる元を生み出しますが、有限巡回群の場合はある整数 $${n }$$で $${g^n = e }$$( $${e }$$は群の単位元)となる点が存在します。
3. **表現**: 巡回群は加法的に $${\mathbb{Z}/n\mathbb{Z} }$$( $${n }$$を法とする整数の加法群)や乗法的に$${ \{1, g, g^2, \dots, g^{n-1}\} }$$ と表現されることが多いです。
### 例
- **整数の加法群**: 整数全体の集合$${\mathbb{Z} }$$ は加法に関して巡回群です。ここでの生成元は $${ 1 }$$や $${ -1 }$$ です。
- **有限群**: $${ \mathbb{Z}/n\mathbb{Z} }$$ は $${n }$$個の元からなる有限巡回群で、加法において $${ [1] }$$を生成元とします。
### 巡回群の応用
巡回群は抽象代数学だけでなく、数論や暗号理論、そしてコンピュータ科学の多くの領域で基本的な構造として使用されます。特に、公開鍵暗号の一つであるRSA暗号や楕円曲線暗号などで重要な役割を果たします。
対称群
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対称群(たいしょうぐん、symmetric group)は、与えられた集合のすべての順列(並べ替え)からなる群です。これは群論の中でも非常に重要な概念であり、代数学全般にわたって広範な応用があります。
対称群の基本概念
定義: ある集合 𝑋のすべての順列(全単射)を要素とし、これらの順列の合成を群の演算とする群を対称群と呼びます。例えば、集合 𝑋 が {1,2,3}の場合、この集合のすべての順列を合成することで群が形成されます。
記号: 𝑛個の元からなる集合に対する対称群は通常 𝑆𝑛と表記されます。ここで 𝑛は集合の元の数です。
元の数: 対称群 𝑆𝑛の元の総数(すなわち 𝑛個の異なる要素の順列の数)は 𝑛!(𝑛 の階乗)です。
対称群の性質
非可換性: 𝑛≥3 の場合、対称群 𝑆𝑛 は非可換です。つまり、群の中のある順列の合成の順序を変えると、結果が変わることがあります。
生成元と関係式: 対称群は転置(二つの要素だけを入れ替える順列)によって生成されることができます。特に、隣接する要素の転置のみで全群が生成されることが知られています。
部分群: 対称群は多くの重要な部分群を持ちます。例えば、交代群 𝐴𝑛 は偶数の置換(偶置換)からなる正規部分群です。
例と応用
具体的な例: 𝑆3 は3つの要素からなる対称群で、要素は以下の6つの順列です。
𝑒 (恒等置換)
(1 2), (1 3), (2 3) (各転置)
(1 2 3), (1 3 2)(3要素の巡回置換)
数学以外の応用: 対称群は化学で分子の対称性を分析するためや、物理学では粒子の状態の交換に関する性質の研究に使用されます。また、計算機科学ではアルゴリズムの効率化や問題の対称性を利用する際に理論的な基礎として利用されます。
対称群はその構造の豊かさと多様な応用により、現代の数学および関連分野において基礎的かつ重要な役割を担っています。
※群論において単位元とは何ですか
群論における単位元(identity element)は、群の中で他のすべての元との演算において、その元を変化させない特別な元です。この単位元の存在は群の定義の一部として必須です。
単位元の特性
定義: 群 𝐺 における演算を "・" とするとき、単位元 𝑒 は次の性質を持つ元です:
𝑒⋅𝑔=𝑔⋅𝑒=𝑔 for all 𝑔∈𝐺
一意性: 群における単位元は一意的です。つまり、二つの異なる単位元が存在することはありません。
例
整数の加法群 (𝑍, +): この群における単位元は 0 です。どの整数と 0 を加算しても、その整数の値が変わらないためです。
実数の乗法群 (𝑅∗, ⋅): ここでの単位元は 1です。任意の実数 𝑟 に対して 1⋅𝑟=𝑟⋅1=𝑟となるからです。
役割と重要性
単位元は群の基本的な構造を定義する上で中心的な役割を果たします。演算がどのように行われるかを理解するためには、単位元を特定することが重要です。また、群における他の概念、例えば逆元の存在(任意の元 𝑔 に対して、ある元 ℎ が存在して 𝑔⋅ℎ=ℎ⋅𝑔=𝑒 となるような元)も単位元の概念に基づいています。これにより、群が閉じた代数的構造となり、その演算が一貫性を持ち、予測可能になります。